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【処女作完結】Mobius Cross_メビウスクロス  作者: 阿暦史
【第一章】救世主と罪の魔神と蛇の館
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『Mobius Cross_メビウスクロス12:蛇術館』

救世主三人が活躍したらいいなぁ。あ!幼女キャラの登場だ!

☆登場人物

·ランス:主人公の救世主。銀髪のイケメンちょっとツン。

·ガリア:拳の救世主。巨漢でクールな力持ち。ちょいコワ男前。

·スクード:盾の救世主。長身軽口兄貴。女性に甘いハンサム。


·ゴルゴーン:蛇術館の主で全身甲冑の謎の彫刻家。美しい女の裸像は命が凍りついたかの如き出来栄え…

·ヒュオラ:蛇術館の侍女長。メガツインテールの幼女。館の召使い達は誰も彼女に逆らえない。

『Mobius Cross_メビウスクロス12:蛇術館』



一部の貴族しか入ることが許されない街で噂の美術館。

帝都から少し外れた所にある珍しい尖り屋根の豪邸で、芸術家気質の大層変わり者の伯爵が暮らしているとかいないとか。

美しい娘を見つけては、破格の褒賞で招き入れているらしい。

これだけならば、人身売買さえ珍しくないこの時世ままある話なのだが…

なんでもその屋敷に招かれた娘は、怪しげな魔術で石に変えられ、美術品として展示、裏で取引され二度と帰ってはこないと云う。


災厄の予感と噂の真偽を確かめる為、ランス、スクード、ガリアの三人は件の館に向かっていた。


道すがらスクード発信でルナとルナベレッタの話になった。

「にしても新しく入ったお二人さんピチピチでイイねぇ。特にベルちゃんの方は天使でも舞い降りたのかと思ったぜ。」


「俺が被堕天させてやったぜ。」

意地悪な顔でランスが言う。


「ルナも可愛いなぁあいつ。」


「そうかぁ?小便だろあんなの」


「そういえば少年、朝話したそうにしていたな。

しどろもどろとしていてよくわからなかったが、この任があるからと打ち切ったら残念そうな顔をしていた。」

とガリアも話に加わる。


「俺んとこにも来たよ。そーゆう純朴なとこがいいじゃない。いじめるなよ?ガリア」


「いじめはせん!」


「そうは言ってもなあ、あんたぁ口下手だから。」


「お前の口が賑やかすぎるんだ。」


「あんたみたいなのがだまーってたら、新人はこわがるぜ〜?」


「な…なんだと…」

若干色めくガリア。本当なのか?とランスに目で訊いている。

「良い良い。思いっきりビビらせてやれ。

畏れってのは重宝すべきなんだぜ。

俺なんかはすぐ浅さがバレるだろうからガリアが威厳を保ってくれたらありがたい。

お前は、その為にいると言ってもいい。」


「承知した。任せろ。」


「いじめたいだけだったりしちゃって」

訊いたのか呟いたのかスクードがポツリ。ランスは舌をんべっと出した。


そうこうしているうちに…


「ついたぜ。あのトンガリ屋根だ。」

ランスは到着を告げた。

「わかってんなお前ら…。」


「わかっている。俺が行こう。」

先陣をガリアが切った。


両開きの豪華な扉。装飾を兼ねたアイアンの取手を両手でグッと掴む。

後ろのスクードとランスに目配せして、二人は頷いて応えた。

ガリアが慎重に引くが…

開かない。鍵?外開きかと思ったが内開きなのか?

今度は奥に向かって押す…押す!…


バギンッ…

ドシィン!


「あっ」

「あ。」

「あ」


扉が取れてしまった。二つ繋がったまま番の部分からバッキリと。


「…

狙ったんだこの結果を。」

「だとさ」

「じゃあしょうがねえ」


中には案内係と見られる娘が二人唖然としていた。

ガリアが、開けるのを失敗したんじゃない押入るつもりだったんだ、という毅然とした態度で言った。

「頼もう。御用改めだ。館の主を出せ。」


案内係はまだ全く状況が掴めない。


こういう時スクードが上手い。

「びっくりしたかい?お嬢さん達。こんなハンサムが三人も現れて。

気持ちはわかるが、まずはほら、深呼吸して。客が来たらいつもは何て言うんだい?」


「…あっ…よ、ようこそお越しくださいました。招待状を拝見させて頂きます。」

案内嬢がようやく言葉を思い出した。


「んー?あちゃー!ポッケに穴が空いてたみたいだぜ〜。

顔で通ると思うからさ、伯爵様にお目通り願いたいね?」


「しょしょ、少々お待ちくださいまし…!」

案内嬢二人はスクード達から逃げるように離れていった。

ちょうど目には見えるが声は聞こえないくらいの距離で、ヒソヒソと打ち合わせを始める。

「先輩やばいっすよ!あの人達、イケメンだけどゼッタイヤバイ人達!ドア壊してるし!」


「そ、そうね。でも、私達で追い返すのも無理そうよ。」


「あたしまだ死にたくないっす〜TT」


「だ、大丈夫っ!少なくともあの口の軽そうな人は女性に手を上げるタイプじゃなさそうよ!」


「でもそのかわり手、出すタイプっぽくないすか?!」


「…。とにかく、一人は応接間へ案内、一人は侍女長と主様たちに報告!

こんな時こそマニュアル通りよっ!」


「…やっぱり案内はあたしになりますかね?」


「いいえ、公平に“失楽園”で決めましょう!勝った方が報告。いいわね?」


説明しよう。

失楽園とは、自分では何も決められず悩み惑い争う哀れな迷える仔羊達が神の審判を仰ぐ際に用いられる神聖なる決定法である。

具体的には二人以上が、失・楽・園の掛け声とともに拳を出し、その時何指を立てていたかで判定が下される。

親指を立てていれば林檎。

人差し指ならイーヴ。

小指なら蛇。

林檎はイーヴに勝ち、イーヴは蛇に勝ち、蛇は林檎に勝つのだ。

神が決めたと思えばどんな運命でも受け入れられるというわけだ。


「では…」

「神の導きのままに」

「神の導きのままに」

「失」「楽」「園!」


先輩の手は林檎。

後輩の手は蛇。

「あ…先輩…」


先輩案内嬢は親指を立てたまま不敵に笑っている。


「まさか…分かってて…」


「あら?神の審判を疑うのかしら?神罰が下るわよ?

それに私、蛇に負けるなら本望よ。」


「先輩〜TT」


「さ、行きなさい!」


後輩案内嬢は涙を飲んで館の奥へかけていった。


先輩案内嬢が意を決して三救主のもとへ戻る。

「お客様大変お待たせ致しました。

主に確認を取っておりますので、応接間にてお待ちください。ご案内致します。」


三人は奥へと案内される。

歩きながらスクードはここぞとばかりに聞き取り調査を開始する。

「君、かわいいねぇ。ここで働いて長いの?」


「そ、そんな、わたくしなどはまだまだ、3年ほどでございます。」


「他にも結構使用人がいるんだ?」

「はい。沢山。」


「皆女の子?」

「はい。」


「っほ!羨ましい職場だ。俺も転職しようかな?」


「む、無理だと思いますが…」


「なんで?美少女しかだめだから?伯爵のご趣味?」


「はい…あっ。申し訳ございませんわたくしたち小間使いが主のことを口外するのは固く禁じられておりまして…」


「あぁ。俺と君と、趣味が良い伯爵様だけの秘密にしとくよ。

ところで、そんなにいっぱい使用人がいる中で君が案内人をしてるのには何か理由があるのかい?」


「…!な、何故そんなことをお訊きになるのですか?」


「いやなに、こわーいお客さんが来たら危ないな〜ってね。こんな可憐で可弱い女の子が…」

そう言ってスクードは、案内嬢の腰に手を回した。


「!ひゃんッ

お、おお御戯れを…!」


「ほら。もし俺が悪い男だったらどうするんだい?訳を聞いて安心したいもんだぜ」


「あああ、案内係の理由でございますか…?」


したり顔で片眉を動かし肯定するスクード。


ところが案内嬢は、苦虫を噛み潰したような顔でこう答えた。

「…も、申し訳ございません!それは、私の個人的な事情によりお答えできかねます!」


違和感ある返答だ。

自分の身を呈して何かを隠そうとしているかのような。


すると突然ガリアがスクードを叩いた。

「いつまでそうしてる!」


スクードはリアクション大きくつんのめるが、案内嬢は一歩も動かないまま解放された。

「いってぇ〜!悪いね!コイツ妬いちゃってさ!」


ゴツッ

今度はゲンコツだった。


「…ってて…。あーあと訊きたいんだけどさ…」


まだ懲りていないことに案内嬢は驚いた。


「俺達、この館の調査に来たんだ。入った者が石にされちまう美術館ってね。

君、それについて何か知らない?」


ド直球な質問。

明らかに動揺し何か言いたげな案内嬢。しかしその口は開かれない。


「その問いには私がお答えします」

応接間の前に少女が一人待っていた。


小さい。が、その身体には不釣り合いな、地面につきそうな程長く巨大な黄色の髪。

ツインテールにしているからほどけばつくんじゃなかろうか。

その対策か、髪の先をフリルのついた布袋で覆っている。


その少女を見て案内嬢が言った。

「侍女長!!」


侍女長?にしては異常に幼い…。


「ありがと。ここから先は私が案内する。主様の所へゆってきて。」


「は、はい!」

案内嬢はお辞儀をして後退る。


と、スクードが去る前に話しかけた。

「ありがとな先輩ちゃん♪楽しかったよ。

もしピンチになったら呼びな?駆けつけるさ。」


案内嬢はさらに一礼して下がって行った。



小さな侍女長が口を開く。

「はじめまして。ヒュオラとゆいます。

ようこそ蛇術館へ。」


「はじめましてかわいこちゃん。

俺はスクード。こっちのデカイのがガリア。こっちの銀髪の大将がランス。

こう見えて救世主さ。」


「こちらへ。」

ヒュオラは大きな髪を揺らしてペコッとお辞儀し、徐ろに歩きだした。


幼い見た目に反して、先程の案内嬢達と違い口数は少なく妙に落ち着いた態度だった。


「よろしくやろうぜ。俺はあんたみたいなかわいこちゃんが大好きなんだ♪」

スクードは足速にヒュオラの横につき、その小さな腰をポンと触った。


「キャッ!…こ、困りますッ!」

流石に焦っている。


「!!…お前…こんな小さな娘にも手を出すのか…」

ガリアの目の色が変わる。


「わかってないねえ。かわいい娘は小さくてもかわいいのさ。

で、伯爵の秘密、教えてくれるんだろ?」


不貞行為から話題を逸らされ若干不服そうに唇がとんがるヒュオラ。

「…秘密も何もありません。人を石に変えるなんて…噂の正体は多分これでしょう!」


バガッと一層豪華な扉を開くと、そこは展示回廊だった。


そこに並んでいた物こそ


「裸婦像か…!」

ランスが思わず口を開いた。


「ふ、ふつくスィーーーィッ!!!!」

スクードが奇声を上げる程に美しい裸体の女性像の数々。

美しいだけではない。

その尽くが精密無比、細い指先、髪の毛一本、まつ毛の先に至るまで顕現しているのだ。

さらに、大理石の濃密な質感でありながら、肉肌のハリやヨレ、重なり、潰れ、歪みまでも表現され、女性の柔らかさがまざまざと感じとれる。


「っひゃー!なんて良い趣味の美術館なんだ!俺、芸術に覚醒めちゃうかも♡」


「こりゃあ…!いいな…!!見ろよこの骨格の正確さ!それにこの弾力感をよっ…!」

スクードとランスは大興奮だ。

が、ガリアは違った。

「待て…!明らかに人間技じゃない…!

むしろ、生きた人間がそのまま石になったようにしか見えんぞ!」


「…はっ!確かに…!」

ランスは我に返った。

「取り調べのため何品か差し押さえさせてもらうっ!スクード!好っ…怪しいと思う作品を選べ!」

返ってなかった。


ヒュオラは汚物を見るような目でこう言った。

「ぇえ…ん、コホン!

そうゆうと思いました。なのでこちらをご覧下さい。」

ヒュオラが紹介した一つの作品。他と比べると小柄且つ細身で色々な所が成長途中な印象だ。

その横で、大赤面しながら立っている使用人が一人。


ヒュオラが何故か喝を入れる。

「目を開ける。できれば同じポーズ…

目を閉じない!」


「ひ、ひゃいっ!///」

真っ赤な顔で涙ぐんでるがその顔には見覚えがある。

スクードが気付いて言った。

「お!さっきの後輩ちゃん!?」


そしてランス

「石像と…同じ顔じゃねーか…!」


「…つまり、この作品達にはモデルがあり、生きて働いている…と?」

ガリアがまとめた。


「しっかし、出来が良いなんてもんじゃねーなこりゃ…」

三人は、像と後輩案内嬢をまじまじと見比べた。


「もっ、もうっいいっすかぁ?///ヒュオラ様ぁん!」

恥ずかしがる案内嬢をよそに、ガリアがあることに気付く。

「いや待て。目を凝らすと僅かだが…

…生身の方が太っ」

ドフッとスクードがガリアの横腹を殴り黙らせた。

しかし時既に遅し。後輩案内嬢は悲しみに打ちひしがれていた。

「ふえぇ〜…なんであたし裸(像)観られて太ったことまでバレてるんすかぁ…TT

てか太ってないもん!育っただけだもぉん…」


「ほぅら泣かした。ガリア君謝りたまえ。」


「おい待て。」

ランスが不意に謝罪を遮る。

「バカかお前。

太ることが悪いことなわけねーだろ。」


「…へ…?」



「太る痩せるは自身の環境を映す鏡だ。お前が少し太ったってんならそれは、お前が今幸せってことだろ?

あとこれは断言して良い…。


女はちょっとくらい太くても良い!


第一、お前は太ってない。もとが痩せ過ぎなんだ。」



「ふ、ふえぇ…イケメン…!好き…。」

後輩は救われた気がした。


が、ヒュオラがちくっと言う。

「太り過ぎると主様に捨てられます。」


後輩「がーん!」


「まー個人の趣味までは知らねーな。」


後輩「W がーん!!」


打ちのめされた後輩をスクードが慰める。

「蛇穴に入っては蛇子に従えってやつなのかねぇ…後輩ちゃんがクビになったら俺が面倒見ちゃうぜ。」


するとヒュオラが話を戻す。

「そんな諺知りません…。

ところで、私達の無実はわかってもらえたと思いますが、主様も直接お会いしたいそうです。

お食事も用意しましたので、食堂へご案内します。」


願ってもない…

しかし、正直まだ油断できない。

案内嬢や館のあちこちで掃除などをしている使用人は十中八九ただの人間だろう。

が、館の主の正体を突き止め、白か黒かを見定めるまでは調査完了とは言い難く、

ランス達はどのようにして主を燻り出すかと思案していた矢先だった。

好都合な反面、これでもし黒だった場合、向こうから会合を求めてきたこの状況は、

“迎え撃つ準備ができた”と解釈することができる。


三救主の緊張が高まる。


スクードが言った。

「いいねぇ。こんな素敵な趣味を持った伯爵とお友達になりたいと思ってたとこだ。」


ランスが言った。

「同感だな。ぜひ制作のコツなど語らいたいね。」


ガリアが言った。

「拳で語り合うことにならねばいいがな。」


ヒュオラに連れられ、食堂の扉の前までやってきた。

「この先に我が主、ゴルゴーン彫伯爵閣下がおられます。

注意点をひとつ。ご無礼は働かないことです。あなたがたのためにも。」


ゆっくりと扉を開くヒュオラ。


「さぁて、ヘビが出るか蛇が出るか…」

「それヘビしか出ねーよ。」

「…」


to be continued

ゴルゴンを引用したエピソードになります。

私なりの解釈をちょびっとでも楽しんでいただけたら嬉しいなぁ…

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