1.可哀想な少女
むかしむかし。あるところにエラといううつくしくやさしいむすめがりっぱなおやしきにすんでいました。ななさいのたんじょう日をひかえたある日のことでした。
「エラ、わたしのかわいいむすめ。いい子でみんなにやさしくするのよ。そうすればいいかみさまが、おまえをたすけてくれる。わたしは天国からおまえを見ていますよ。ずっとわたしはおまえのそばにいるから、だから……かなしまないで───」
そういうと女は目をとじ、しずかにいきをひきとりました。これがエラのははのさいごでした。
エラはまいにち、ははのおはかのまえでなきました。まいにちまいにち、なきました。
ある日エラは、ははのさいごのことばを思いだします。
───ずっとわたしはおまえのそばにいるから、だから……かなしまないで。
エラはハンカチでなみだをぬぐうと、じぶんにいいきかせるようにして言いました。
「いつまでもないていたってかあさまはよろこばないわ。まえをむいて、あたらしい人生を。そう、あたらしい人生をあゆむの」
手にもっていたハンカチはエラのけついで、ぎゅっとしわくちゃになっていました。そのときでした。
「うっ、あたらしい……人生……! わたしは、だれ……」
かわいそうなエラ。エラは、ははのおはかのまえでたおれてしまいました。
おしまい……?