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閑話2:期待はずれの勇者達

例の会議室にて

ラメイシス神聖王国の王城にある会議室ではまたもや重苦しい空気が場を支配していた。

理由はいうまでもなく新たに現れた魔王を超える存在、その対策として異世界から呼び出した者たちにあった。


古代の文献を探り、異世界から勇者を呼び出すところまでは良かった。

呼び出された勇者も今は亡きこの国の象徴とも言えた勇者には劣るが、それでもそこそこ戦えるだけの力を初めから備えていた。

彼らはどうやら平和な国で過ごしてたため、戦う力などは持っていなかったみたいだが、世界を渡る際に神から『スキル』なる力を授かっており、誰でも強大な力を振るえるようであった。


これを見た国の重鎮たちは大喜びだ。


この者たちで再び魔王討伐部隊を組み、今度こそ魔族に勝利すると、誰もがその光景を夢見ていた。

それまで箝口令を敷いていたが、勇者がもういないことはいずれバレるため、その時点で国民に公表した。

そして、それと同時に新たな勇者に匹敵する者たちが30人も同時に誕生したことを発表することによって国民の不安を最小限に抑えることに成功した。


なにもかも、順調に進みすぎていた。

だが、事件は起こった。


ある程度スキルとやらの使い方を検証したあと、次は実戦で使えるのかどうかを試すために手頃な場所に魔物を狩りに行かせたときのことだった。


一部のものはなにも問題なく戦果を挙げた。

しかし、女子などの気の弱いものはこぞって恐怖で動けなくなっていた。

相手がドラゴンなどの伝説級の相手ならまだしも、彼らが倒しにいったのはただの低俗なゴブリン風情だったはずなのに、強大な力を持つはずの勇者の大半が戦意喪失して戻ってきた。

彼らは、平和な世界で生き続けてきた弊害で、強力な殺気に当てられるとたちまち動きが鈍ってしまうのだ。


結果、戦えたのは1人だけいる大人も含めてたったの10名だった。

これを、多いと見るか少ないと見るかは人それぞれだったが、残った20名が使い物にならないということだけは全員理解できた。


そして同時にそれを問題視した。


使えない人材をどうするかという問題だ。

殺すのは簡単だ。だが、そうして仕舞えば他の戦える奴が反感を抱いてこちらに牙を剥くのは目に見えていた。

今であっても数名、自分たちを不審がっている気配があって大きく動けないでいた。


もうこれしか手段がなく追い詰められて選択した異世界人の召喚だったが、それは少しずつ自分たちを蝕み始めていた。

まだ戦える異世界人、それに反感を買わないようになるべく邪魔にならない位置に、かつなるべく管理が楽な場所に置いておかなければならない。

その問題に直面したこの国がとった選択は



「仕方ないの、各地の学園に生徒として引き取ってもらえんか頼んでみるとするか……」


国の運営する学術機関への丸投げであった。

これも反発がないとは言えないが、当面で1番の脅威は魔王とそれを超える魔王の息子だった。

それを排除するのが先決で、そのために一番気をつけるのは唯一の武器である戦える異世界人の機嫌を取り続けることであった。


ただし、無能とされる人材をいつまでも城に置いておく理由も余裕もない。

結果、出された結論は丸投げ、学術機関へ投げたのはあわよくば使える人材へと鍛えてくれないかという思いからであった。


「しかし、他4つはともかくヒュグロは引き入れてくれますかな?」

「あそこは実力がないものには厳しいですからな。まぁ、だからといって実力があるものが揃っているわけではないのが悲しい話ですが……」

「ううむ…異世界人にはスキルなる異能が存在するから、入れること自体は問題なさそうではあるが……こればっかりはその学園の長に聞いてみんと受け入れてくれるかわからんな」

「王よ。貴方様の力でどうにかできないのですか?」

「残念ながら、対面や体裁を重んじる他はともかくヒュグロだけはな……あそこの学園長はエルフの国の王族である故、無理を通しづらいのじゃよ」

「ひとまず、頼んでみてダメだったら考えるということでどうでしょう?」

「そうじゃのう…受け入れてもらえるとは思えんが……」


それから程なくして重役会議は終わり、せめて王が頼むべきだという話になったので王自らが遠方と通信が出来る水晶型の魔道具を使ってヒュグロにいるミリータ学園長に用件を伝えた。

『アルバート国王、こんなお時間にどうかなさいましたの? こちらは今忙しいので用件は手短にお願いしますわ』

「うむ、ララントス学園長に折り入って頼みがあっての。そちらの学園で4名ほど引き取って欲しい人材がおるのじゃ」

『わかりましたわ。来週までに迎えを送りますわ。他に用件はありますか?』


国王は驚くほどあっさり了承してもらってララントス学園長が何か悪いものでも食べたのではないかと考えた。

だが、この状況は自分たちにとって好都合であったためなにも言わないことにした。


「うむ、了解した。それまでに出発の用意をさせておく故、迎えの方は頼んだぞ」


国王は学園長の気が変わらないうちにと魔道具に魔力を込めるのをやめて一方的に交信を終えた。

そして誰の声も聞こえなくなった部屋でただ1人、これで少しは肩の荷が下りてくれればいいのだがと大きなため息をついた。


ブックマーク、pt評価、感想待ってます。

やっと物語が進められる……

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