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化け物認定を受けたフワ先生暗殺事件!?

いじめ問題が発生してから大体一週間ほどの時間が経った頃だ。

学園内には奇妙な噂が立ち始めておった。その噂とは、『素行の悪い生徒のところには化け物が現れる』というものだった。

化け物、というのは隠すまでもなく妾の体を使って問題解決に帆走するフワのことだ 。


こやつはこの一週間、非行に手を染める生徒を見つけては魔力で威圧して回っておった。

解決したい問題はクラスメイトに対してのいじめ問題が一番なのだろうが、こやつは見つけたものは片っ端からだ。


ここで疑問に思っておるものもおるだろう。

どうしてこやつがこの一週間で何件もの問題行動を取り締まれてきたのかというところに。

本来、悪いことをしようとする人間は人目につかない場所で行おうとするのがほとんどであるから、探したとて早々見つかるものでもない。


だがフワは問題が発生すればまっすぐそこに駆けつけて取り締まりをしておる。

それを可能にしておるのは妾が開発した術式である。

フワがどうにかしてそういうのを見つけられないかと聞いてきたので、ないと言ったら作ってくれと頼まれたから仕方なく作ってやった術式である。

完成した時はそれはもう感謝されたぞ。

妾は別に構わんが、もう少し自分で解決して欲しいとも思ったがの。

そして、肝心の術式の効果であるが、指定した場所に視覚を繋げる効果を持っておる。

平たくいえば眼を設置する術式だ。しかしこの術式、妾は問題ないのだがフワは使うと具合が悪くなると言っておった。

1つ2つならなんとかなると言っておったが、4つ以上視界が増えると混乱しておったな。


だから、ひっじょうに遺憾ではあったが妾が使い続けることにしたのだ。


『妾も文句の1つくらい言っても良いと思うのだよ』

「え? 急になんの話かな?」

『なんでもない。ただ、主も図太くなってきたかと思っただけだ』


妾がほとほと呆れておることはこやつも気づいておる。というか、術式を妾で使ってくれと言われた時に言ってやった。

それに対して申し訳ないという態度を見せておりながらも、自分で使うつもりはないようであったのだ。

もしかして妾、かなり都合のいいように使われておるのかの?


そう思うと少し腹立たしくなってきた。

目の周りだけ支配権取り戻してその眼球を複眼に作り変えてやろうか。

少しだけそんなことを思ったが、温厚かつ寛大で有名な妾は許してやることにした。


「アイディ、見つかった?」

『噂のせいかの? 今日はおらんようだ』

噂の成果というやつだな!


妾の言葉を聞くとフワは一息ついた。

今は昼休みである。フワ曰く、昼休みなどの休み時間が一番犯行が増えるのだと。

実際、講義間の休憩時間や昼休みに発見したケースが多い。

現在、妾の眼は学園内に55箇所配置しておる。それに引っかからんということは今日はもう見つからんだろうなと思うた。


ちなみに、この術式の維持に必要な魔力だけはフワが出しておる。まぁ、その魔力も妾の体から出ておるから全部妾がやっておるのには変わりないのだがな。


フワが今日の活動がないと知ると食堂に向かった。

腹が減ったらしいが、そもそも食う必要のない生き物が腹なんか減るはずがなかろう。適当言うのも大概にするのだ。

妾は生まれてから一度も腹が空いたことなぞないから、その体で腹が減らんことも知っておるのだぞ。

魂だけで訴えても、フワには届かんかった。

基本的に妾たちのやり取りは妾が魂にパスをつなぐことによって行われておるから、それをせん限りこちらの声は届かんのだ。

向こうは音として発しておるから妾には丸聞こえだがの。


「う〜ん、おいしぃ……病院のご飯とおんなじくらい」


恍惚の表情を浮かべて飯を頬張るフワ。

1つ聞くが、病院食とやらはうまいのかの? 妾はよく知らんが制限された食事というイメージがあるのだが。

そんなことを考えながら妾は分解作業だ。


今日のフワの昼食は鯖の味噌焼き定食とやらだった。

フワはいちいち魚の骨を取りながら食っておった。

そのまま食えば良いのにな。

どうせ等しく分解するのだし。


フワがそうして昼食を食っておるとその視線はどこかに引っ張られるようにして動いた。

その視線の先におったのは以前もこの食堂で見て、その後連れていかれた勇者志望であった。

名は確かフラヴィデオと言ったかの?


そ奴は一人で飯を食っておった。

フワは何を思ったのか食いかけの飯を持ち其奴の方に行き、そしてそのまま隣に座った。


「あ、先生」

「あれからどうですか? 誰かに何かされてないですか?」

「あれからはーーーーまぁ、特に何もないです。先生の方は大活躍みたいですね」

「大活躍?」

「えぇ、噂になっていますよ。悪いことをしたら白い髪の少女の化け物が現れるって……これって先生のことですよね?」

おーい、大活躍しておるのはフワではなく妾であるのぞー

「化け物……」

「あ、いや別に悪気があったわけでは、とにかく先生が頑張ってくれたおかげで暮らしやすくなったって人は結構いるみたいだから、それだけです」

「別に気にしてないですよ。化け物と言われるなら好都合ですね」


ちなみに、フワが化け物と呼ばれておる理由は犯行現場を見つけ次第魔力による威圧をして対象を気絶させるからだ。

頭ごなしに言っても聞かんから実力行使という奴だ。またやるようならぶつける魔力を増やす、という風に対応しておったぞ。

ただ、2回目以降は生徒たちが失神に収まらず失禁してしまう奴が割とおった。

それを経て3回目をやる奴はあまりおらん。だから大概2回現場を抑えれば1つの問題が解決するのだ。

そして現在は噂が立ち、生徒たちも警戒しておるということだ。

少なくとも、学園内では問題は起こっておらんぞ。



フワとフラヴィデオは少し話した後、お互い食べ終わり食器を片付けてから食堂を後にした。

今日は午後から算術の講義をせねばならんからフワはその準備を始める。算術の講義の方は魔術関係の2つとは違い順調そのものであった。


今日の講義も、なんの問題なく進み終わりの時間を迎える。


それでこの日は放課後になった。

最近フワはこの時間になると図書室で調べ物をしておる。というか、してくれておると言ったほうがよいかの。

調べる内容はここ1000年ほどで何が起こったのかだ。


現時点では、邪神とやらがおらんくなってその影響で戦闘技術が軒並み廃れたというところが一番重要そうな部分で、それ以外には特に物珍しいものはなかった。

今日も大した情報は得られずに職員寮に戻る。

戻っておる最中、ふとフワが妾に話しかけてきた。


「一応聞くけど、あの邪神ってアイディのことじゃないよね?」

『そのはずである。ラメイシスは妾とは一度も戦おうとはせんかったし、妾は倒されてではなく自分で眠りについたからの。そもそも、妾の退場と邪神の退場の時間が割とずれておる。どちらも約1000年前には変わりはないが、実際には10年はずれておるからの。あれを妾と言うには的外れであろう』

「そっかー」


そんな会話をしながら歩いておったら、ふと、つけられておることに気づいた。当然のようにフワは気づいておらん。

ちらりとそちらの方に意識を向けた。そこらにいるよりはやりそうではあったが、どう見ても雑魚であるな。

戦力としては5分の1ミリータくらいかの?5人いればフワの雇用主くらいは倒せるであろうが、逆に言えばその程度でしかなかった。

だから知らせる必要はないと思って放置することにした。実はフワも気づいておって泳がせておるだけかもしれんからの。


フワはまっすぐ職員寮の自分の部屋に戻った。

そして浴槽に魔法でお湯を入れていく。その片手間に服を脱ぎ始めた。

浴槽にある程度お湯が入ったのと、フワが服を脱ぎ終わったのと、先程の尾行者が勝手に部屋に入ってきたのはほぼ同時であった。これはもう尾行者ではなく侵入者に格上げだな。

侵入者は、音を最小限に抑えて入ってきた。

玄関から入って左側にあるドアの先にあるバスルームにフワがおるとわかっておるのだろう。まっすぐこちらに向かってきていた。例によって妾は放置だ。


して、侵入者よ。息が少し荒いぞ。身のこなしだけでなく精神も鍛えんか。


フワが手をつけて湯の温度を確認する。

うむ、大体42度だ。フワはその温度に満足したのか桶でその湯を救い出して体にかけようとしたーーーーーその時だった。

もうすぐそこまで迫っていた侵入者が突如として大きめのナイフを取り出してフワに襲いかかったのだ。

フワは背後にいる人の気配に今更ながら気づいた。

一瞬ビクつきながらも後ろを振り返った。だが、その時にはもう遅かった。

フワが犯人の顔を見た瞬間、その者が持っておったナイフは綺麗にフワの喉元に根元まで突き刺さった。

感覚的には大体貫通しておると言っても過言ではないくらいに綺麗に刺さっておるの。ま、この程度では妾をどうにかすることはできんが。

だが、妾はそうでもフワはそうではなかった。突然刺されたフワは足を滑らせて湯船に落ちてしもうた。

湯が真っ赤に染まるーーーーーーなんてことはなかった。

血は流れておらんからの。


侵入者はフワの首元にナイフを突き立てた次の瞬間にはもう逃げ出しておったから、もうこの部屋にはおらん。

フワはブクブクと言う音を立てながら浮上してくる。

湯の中から頭を出したフワは心底理解ができないと言った顔をしておった。その首にはまだナイフが刺さったままだ。


フワはその状態のまま、小さく一言呟いた。


「今のは……2組のアリナさんだよね? どうしてこんなことを……?」


そう、さきほどの侵入者……いや、襲撃者に格上げかの……襲撃者はアリナとか言う初講義の日に分不相応にも決闘を申し込んできた女であった。

フワはなぜあやつがこんな行動をとったのかが分からず、ただ呆然としておった。

ナイフに気づいて絶叫する30秒前の状況である。



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基本日刊と言っておきながら数日空いてしまったこと、申し訳ないです………

どこかで補填するので許して……

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