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初講義その1


入学式の次の日、学園についての大まかな説明は昨日で終えたので今日は早速講義が開始される。

とっても、初めの講義だから大したことはせんらしいがの。


さて、ここでこの学園の講義の受け方について説明していこう。

この学園はフワが採用されておる理由にもなっておる通り実力主義を看板に掲げておる。

しかし、実力といってもそれぞれであろう?

ただ腕っ節が強い、それだけの人材を集めたところで大した価値にはならん。


いくら質が良く、数が多い戦士であろうともそれを受け入れる器がないと意味がない故な。

そういうわけで実力とは腕っ節のことではない。

もちろん、その方向に進むやつもおるがらしいがな。

この場合実力とういのは生きていく上で必要な能力の高さを指しておるらしい。

つまり、鍛治を生業とするようなものであっても、それがこの学園で育成するにふさわしい人材とあらば入学できるらしいの。


まぁ、まとめるとそれぞれに伸ばすべき能力があるから、全ての講義に全員が出なければならぬというわけではない。

言ってしまえば、この学園の講義は選択式というわけだ。


鍛治師志望が錬金術を学んでも仕方ないからの。


さて、それでフワが受け持っておるのは算術と魔法に対する座学と実習だったか?

妾が教えてやったのだ。フワは魔術に関してはそれなりの知識を持っておるぞ。

それこそ、人間が知らぬであろうこともいくつか知っておるだろう。


何?


妾が教えたわけではないであろうと?


確かに、智恵の魔本という妾の配下が主なことは教えたぞ?

しかしだ、妾もいろいろ手ほどきしてやったし、そもそもあやつは妾の配下だ。

配下の手柄は上司の功績であろう?ならば、フワの魔術的なものに対する理解の深さは妾の功績である。


ちなみに、魔法と術式に関することをまとめて魔術と呼んだりもするから覚えておいて損はないぞ。


ということで、今日は一発目の講義だ。

映えある第一発目は魔法理論であるみたいだぞ。


同じ講義を受け持つ教員は他にもおるのだが、同じ時間にやるわけではないらしく、時間の都合が着けやすいようにしてあるらしい。


フワが講義室に入ると、もう既に何人もの生徒が着席して待っておった。

講義開始まで後5分ほど時間がある。フワは始まりの時間までは生徒たちが話をしておるのを黙って見ておった。

妾が少し耳を澄ましてみると、やはりというべきか小さな見た目に不安がっておる声がそれなりに聞こえてきた。

だが、種族の関係で大きくなれんものもおる世界だ。

フワの見た目を気にしておらんものもおった。


そして、講義開始の時間になった。

フワはパンパンと手を二回叩き、こちらに注意を向けた後に話を始める。


「はい、私は魔法理論の講義を担当することになった西河 不破と申します。よろしくお願いします。さて、今回は魔法理論の一発目の講義ということで魔法に関しての初歩的な知識の確認からいってみましょうか。中には、今まで魔法は習ったことがないという方もいるでしょうからね」


フワの講義がスタートした。と言っても、こやつとて魔法に関して全て知っておるわけではない。その知識は妾や魔本が教えたものに限る。それに、フワの質問に妾や魔本が答えるという勉強方式をとっておったため教えておらんこともあるしな。


まず、フワは魔法とは何かという説明を簡単にこなした。


「魔法とは、これはみなさん知っての通り魔力を使って様々な現象を起こすことです。魔法には大きく分けて6種類の属性が存在します。逆にいえば、この6種類しか魔法には属性が存在しないわけですね。その6種類は炎属性、水属性、風属性、地属性、光属性、闇属性とそれぞれ呼ばれています。

このうち、光属性と闇属性は特殊なものであるため、基本的にこれらを除いた4つの属性によって魔法は成り立っているわけですね」


フワがそう説明するとどこかから手が上がった。


「質問は説明がひと段落したら受け付けますので、それまで少し待ってくれますか?」

「あ、はい」


フワがそう言うと手が下がる。人の話しておる途中にそれを遮るように質問しようなどと、無礼な奴よの。


「そして先ほど、魔法とは魔力によって引き起こす様々な現象と言いましたが、それに関してもう少し詳しく説明しましょう。


空気中には精霊と呼ばれる力を持った存在が漂っています。精霊には自我はなく、ただそこに存在するだけです。私たちはこの精霊に魔力を使い起こしてほしい現象を伝え、それに必要な魔力を精霊に与えることによって、様々な現象を引き起こしてもらいます。

この一連の流れを魔法というわけですね。さて、ここまでで何か質問はございますか?」


うむ、全部妾の受け売りではあるがちゃんと説明はできておるな。噛んだりすることもなく、出だしは上々だ。


フワが質問があるのかと聞くと、数名であったが手をあげるものがおった。

そして、その中で1人、嫌でも目につくほどギラついた様子でフワを睨みつけながら手を上げておるものがおった。

その尋常じゃない雰囲気にフワはそのものに質問を言うように指名してしまう。


見覚えのないものであったから、フワのクラスの人間ではないのだろうな。


「そこの方、どうぞ」


「はい! はっきりと言わせてもらいますわ!! あなたの言っていることには間違いがあります。デタラメばっかりですわ!!」


自信満々にそう告げる女にフワは戸惑いを隠せない。

ちらりと周りを見てみると、その女に同調するように首を小さくであるが縦に振っておるものがちらほら見られた。

自分が何を間違えたか、それがわからないフワはとりあえずどこがいけなかったのかと女に聞いた。



「どこが!? 魔法の発動原理に決まっておりますわ! 精霊に意思を伝えて魔力を渡すぅ? それをするのは精霊魔法であって魔法とは全くの別物ですわ!」


「えっと?」


「あなたの理論は間違いばっかり、はっきり言ってこんな講義、受けるに値しませんわ。みなさんもそう思いませんこと?」


女は周りに同意を求める。うむ、こうやって自分が意見を言う時に周りに肯定してもらおうとするのは弱者特有の性質であるな。

妾は自分の意見は言うだけ言ってそのままのタイプであるため、その気持ちは理解できん。


だが、この場ではそれが効果的ではあるみたいだ。

女の言葉に同意するような仕草をしておるものは結構おった。


「ほら、みなさんこう言っておりますわよ。あと、言ってませんでしたけど属性が6つしかないというのも間違いですわ。こうしてみると何一つ正しいことを言ってませんわね、あなた。あぁ、学園はどうしてこんな大嘘つきを採用したのでしょうか? 不思議でなりませんわ」


ここぞとばかりに攻め立てる女。仲間が多いと見てさらに畳み掛けてきた感じだな。

割と不愉快である。

フワはこの日のために妾に助けを請うてまで必死に勉強してきたのだ。それを見ておるからこそ、妾はその物言いを不快に感じておった。

しかし、これも無知ゆえの言葉だと思うと滑稽に見えてきて呆れの気持ちが大きくなった。


さて、フワはこれをどう乗り越えるのであろうな?


「何か言ったらどうですの?」


女は挑発的にそう言った。内心、お前には言い返せないだろうけどね、とでも思っていそうだ。

だが、実際にホラを吹いておるのは向こうである。フワは正しいことを言うだけでよかったのだ。


「そうですね。まず、なぜあなたは私の話が間違いだと? その根拠はどこでしょうか?」


フワは、なぜか少し怒っておるみたいであった。

はて? こやつ、魔法に対して何か思い入れでもあるのかの?


「そんなこと子供でも知ってますわ。魔法とは魔力をためて現象をイメージすることによって魔力を変換すること、決して、精霊に頼ることではありませんわ。大体、あなたの説明では無詠唱魔法というものの説明がつきませんもの」


無詠唱魔法などという魔法はない。そもそも詠唱とは精霊に明確に指示をするためのものにすぎぬ。

詠唱を取り除いて現象を起こすことができるなら、それは自分の力だけで完結させられる術式の領分だ。


「無詠唱魔法というものは存在しません」


「あなたが無知なだけではなくって?確かに、使えるものは少ないですが、存在しないわけではないですわよ。現に、この私が使えるのですから!!」


室内がどよめいた。

無詠唱魔法=術式だというのなら、使えること自体は何にも珍しいものではないはずだが?

あぁ、そういえばそもそもこやつらは魔法、そしてその先の術式について学ぶためにここにきておるのだな。となれば、まだ知らぬのも当然か。


「それは魔法ではありません。ここら辺はもう少し先になったら話しましょうか」


「ふん、意地でも認めないというのならこの私が直々に見せてあげますわ。この、クーデレランス家に代々伝わる、最高の魔法を!!」


女はそんなことを言うとフワの方向に手を向けた。

フワは何をするつもりなのかがわかっておらず立ち尽くしておった。

周りの生徒たちは今から魔法が放たれる、と身構えておった。

妾は術式を見てその微妙な出来にほっこりしておった。


数秒の後、女の手から炎の槍が放たれる。

それはかなりの速度でフワに突っ込んできて、突然のことで対応できなかったフワはそれをもろに顔面で受けてしもうた。


まっ、魔法に対しては教えたが魔法を防ぐすべに対してはまだ教えておらんからの。

というか、教える必要はないからの。なにせ、妾の体は絶対に死なぬのだから。


炎の槍はフワの頭に突き刺さると爆発を巻き起こした。

室内にもその影響は出て、前の方に座っておった生徒は爆風に耐えるために身をかがめておった。


「きゃああああああああ!!」

「ちょっ、あれ、大丈夫なのか!!?」


室内が騒ぎに包まれる。

フワは対処できなかったため後ろ向きにぶっ倒れおったから、生徒たちの位置では状態が確認できない。

それゆえ、死んでしまったのではないかと言う声さえ出てきた。


「あの程度も防げないなんて、やっぱりこの学園で教鞭をとる価値のない無能でしかなかったみたいですわね」


ちなみに、その現象を引き起こした張本人は得意げな顔をしておった。

うむ、お主は運が良い。

フワが気絶しておったら妾がぶん殴りに行っておったところだった。


フワは突然のことでびっくりしたが、どうやら自分が攻撃を受けたのだと気づき起き上がった



「おい、起きたぞ!」

「無事、そうね」

「というか、無傷……?」

「ってかなんか髪色変わってないか?」


起き上がったフワを見た生徒たちはそれを見た感想を口々に言っておった。

ちなみに、髪色が変わったというのは妾の性質の一つだな。

妾の髪は魔力に対して高い感受性を持っておるので、強めの属性魔力を近づけるとその魔力の色に変化するのだ。妾が属性魔力を使わない理由の一つでもあるな。

なにせ、この性質のせいで魔法や術式を使う前にどんなものを使うのかバレるのだ。


だから妾の場合出来るだけ魔力は無色のまま使うことにしておる。

その方が使い勝手が良いしの。


「ふん、生きてたようね。まあいいわ。これで無詠唱魔法があるってことが証明されたでしょ?」


「今のは魔法ではなく術式と呼ばれるまた別の技術体系です。本来魔法が精霊を介して行われるのに対して、術式は自分だけで現象を起こすことを言います。だから意思を伝えるための言葉が必要ではなくなり、結果的に無詠唱になるというわけですね」


「ふん、それっぽいこと言って誤魔化そうったってそうはいかないわ!!」


「ちなみに私も術式自体は使えますよ。ほら、」


フワがそう言うとフワの指先にバチバチと雷のようなものが弾けた。

妾が教えておいた術式の一つだ。いろいろ便利ゆえ、皆も覚えておくと良いぞ。


「えっ、嘘!? 無詠唱魔法をーーー」


「ですから、これは魔法に分類されません。そこらへんの詳しい知識を、これからみなさん学んでいきましょうね。それと、昨日も言われた通り講義中に許可が下りた場合と、訓練場以外での魔術の使用は校則で禁止されているので、今回は不問にしますが気をつけてくださいよ?」


「わ、私はーーーーー」


「はい、もういいですね? 他に質問はありますか?」

反抗的な女であったが、フワは睨みつけて黙らせた。

そしてそれ以降相手にせんかった。

そんな態度のフワを見て、妾は一つ問いかけてみた。


『お主、なぜそんなに怒っておるのだ?』


フワは妾の問いに、生徒たちに聞こえないように小さく答えた。


「だって、あの子、アイディの事を嘘つき呼ばわりしたから、つい」


ふむ、これは、妾のために怒ってくれたと思って良いのかの?

妾はあの無知な小娘の言ったことなんぞ、全く気にしておらんがの。


そもそも、確かにその知識は妾が教えたものであるが、今嘘つき呼ばわりされたのはお主である。

もっと自分のために怒るがよい。


妾も、その方が気分がスッキリするのでな

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