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最強幻想使いの異世界魔術学園  作者: 十織ミト
第1章
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第6話 〜アーテラル〜

お久しぶりです。十織ミトです。

前回は、新たな登場人物として、主人公の拓斗の世界を管理している神様を二柱書いてみました。それによって、拓斗は自前の異能の他にさらなるチートを得てしまう感じですね。

これからも頑張りますので、応援をお願いします。

 休憩を挟んだ後、俺と三柱の神様達は屋敷の吹き抜けになっている玄関ホールで俺に対する全魔術属性の適性と、加護の付与を行った。

 俺は床に現れは魔方陣の上に立たされ、その俺を囲む様にアディー達が三方向から手を突き出し、その先に浮かび上がる床に刻まれた魔方陣とは違う模様の小さな魔方陣を向けてくる。

 三者三様が向けるその魔方陣は同じ物では無く、例えばアディーの物は俺が読み取れ無い文字と線、そして中心に『(にじゅうまる)』が描かれ、その中に天を突く鉾の絵が描かれた陣だった。

 ゾルドの魔方陣は俺が読み取れ無い文字と線で描かれている所までは同じだが、その中心に添えられた絵が違かった。ゾルドのソレは、黒い十字架な中心に『(ひしがた)』が付けられた模様だった。

 シェルヴェローナのは、樹木に蔦が絡み付く模様と、幹に刻まれた上下に三叉の刃を持つ鉾の絵が描かれた陣だった。

 陣から発せられていた光がおさまる事で、俺への付与が終了した。


「これで、付与は終了だ」

「ありがとうございます。貰った力は、大切に使わせてもらいます」


 俺は加護をくれたニ柱の神に頭を下げてお礼を言う。

 例え、これが俺へのお詫びするための贈り物だとしてもだ。


「拓斗さん、これから貴方がどうしていくのか、どのような道を選択するのかは貴方次第です。ですが、けして後悔の無い道を進む事を願います」

「勿論だ。今回のように後悔しない生き方をシェルヴェローナ様の世界でしていくさ」


 アルディニア改めアディーは、優しい笑顔で微笑んでくれた。


「それでは、拓斗様。そろそろ、私が管理する世界アーテラルへ向かうとしましょう」

「ああ。そうだな」


 俺はシェルヴェローナに促され、アディー達に手を振りながら彼女が管理する世界へと転移した。



      〜・・・〜      〜・・・〜



「………行ったな」

「………ええ」

「まさか、お前があそこまで気に掛けるとは思わなかったぞ」


 私はゾルドの言葉に当然だという思いで答える。


「本来であれば、あの子は今も家族や友人達と楽しく暮らしていく筈だった。でも、私達が管理世界に干渉出来なかったせいで、あの子から大切な日常を奪ってしまった」

「それは別段、俺達のせいではない。あいつだって、そう言っていたではないか」


 ゾルドが私を気遣うように言ってくれたが、私の心は一向に晴れる事はなかった。


「確かに、元をただせばシェルヴェローナの管理世界の人間があのような存在をこちらに送り込んできたのが原因です」

「なら、お前がそこまで気にやる事も無いだろ」

「ええ。本当ならね」


 別段、ゾルドが冷たく薄情な訳ではなく、彼はこれが普通なのだ。

 ゾルドは一つため息をつき、仕方ないなあという顔で言ってくる。


「全く、あいつには俺達の加護を付与しているんだ。心配なら、ちょくちょくあいつを見ていてやれば良いじゃないか」

「ええ。そのつもりよ。だから、もしあの子が復讐にかられてしまっても、私達とシェルヴェローナにはそれを止める資格がない。それは、あの子の正当な権利だから」


 アディーは、この先どんな事があっても最期まで見届ける事を決めていた。



      〜・・・〜      〜・・・〜



 光が消え、代わりに暖かい風が吹き抜けていくのを感じ、目を開ける。


「おぉぉーー」


 そこは、木々が生い茂る森の中だったが、けしてじめじめした感じや、重苦しいという思いも浮かばない。

 木々の間から射し込む太陽の光が神聖的な趣を演出している。


「ここは、私の管理世界に存在する八つの国の一つで『ハシュバル皇国』の『アルベン』という街から少し離れた場所に在る『ガラティナの森』の深奥です。巷では『緑深(りょくしん)の森』とも呼ばれています」

「へぇー、深奥て言うわりに全く息苦しい感じがしないんだな」

「全てがこんな感じではないのですがね。まあ、それはさておき、家に入りましょう」

「そうだな…………ん、家?」


 突然シェルヴェローナが家に入ろうと言い出したが、こんな森の奥に家なんてあるのか、と振り返ると――――


「……………え?」


 気付かなかったが、そこには木で出来た立派な三階建ての家が建っていた。


「えっと、シェルヴェローナ様? これは?」

「ここが、これから拓斗様がこの世界を知っていく間、住む家です」

「家ですって、いやいやデカ過ぎだろ。それに、この世界を知っていく間って、どれくらいかかるか解らないのにここで自給自足しろってのか? それも一人で?」


 俺は、流石にそれは勘弁してもらいたかった。

 自炊はそれなりに出来はするが、自給自足はしたことが無い。

 が、シェルヴェローナから、否定の声が上がった。


「いいえ。ここに住むのは拓斗様だけでは無く、私も一緒に住み様々なサポートをしていきます」

「え! シェルヴェローナ様も」

「はい。ですので、まずは名前の呼び方を変えましょう」

「呼び方?」

「はい。私の事はこれからは、シロナと呼んで下さい」


 突然の同居(同棲?)宣言からの呼び方の変更に、俺の頭は混乱する。


「えっと、そんな風に呼んで良いのですか?」

「ええ。それと、敬語も無しで結構ですよ。私も拓斗様の事を、これからは拓斗さんと呼ばせていただきますから」

「俺は構わないが、そっちが良いなら」


 と、了承する。


 扉を開けて家の中に入ると、真っ先に感じたのは、やはり木の香りだった。だが、けして不快には感じない程度で逆にスッキリとしたものだった。

 今の日本ではほとんどがコンクリート建築になっているので、普通の一軒家でも使われている木材の量はそこまででも無く、今では大半が木製の建築は少なくなっている。建築様式は洋風ではあるが、凄く落ち着きがある。

 内装も全てでは無いが、ほとんどの家具は木製で出来ていて、統一感があった。


「なかなか良い感じの家だな」

「気に良っていただけたようで良かったです」


 そして、この時をもって俺とシェルヴェローナ改め、シロナとの同居生活が始まった。



      〜・・・〜      〜・・・〜



 シロナとの同居生活を始めてすでに一年が過ぎていた。

 この世界での暦は地球と同じで十二ヶ月。しかし、一月が丸々同じという訳でもなく、この世界では一月(ひとつき)は三十日で区切られている。合計で、三百六十日。さらに百年周期で閏年(こっちの世界では、幻魔の月と呼ばれる)があり、その年には一月が追加され、その年だけは三百九十日となる。

 最初に聞かされた時は、「え、マジで!?」と聞き返してしまった程だ。地球での閏年は、二月に一日増えるだけだが、こっちでは丸々一ヶ月が増える。


 同居生活が始まった当初は、まずやったのはこの世界に馴れる事。地球とこの世界では大気の成分が微妙に違い、身体に不調が現れないか確認しながらアーテラルについての知識を習得に励んだ。

 この世界に存在する八つの国家と地理、それぞれの国の特徴特色にはじまり、言語の読み書きや、歴史などの知識を教えてもらっていた。


「私が教えられるのは、今と昔にあった基本的な事だけです。時々、少しだけ突っ込んだ内容も教えるかも知れませんが」


 その合間に、シロナからもらった全魔術属性適性を使った魔術、俺に備わった魔力の扱いに慣れる為の訓練もしていた。


「魔力も属性も、完璧に使えなくては意味がありません」


 さらに、魔術だけで無く、俺は剣や槍、斧と言ったメジャーな武器からマイナーな物まであらゆる武器の扱いと体術の習熟に勤しんでもいた。

 しかし、不思議な事に俺の身体は一年前から、余り変化がなかった。

 その事に最初に気が付いたのは、半年位過ぎた辺りでその事を不思議に思った俺はシロナに訊ねた。


「それは、この家を中心に半径千キルの範囲に時間固定の力が働くようにしてあるので姿はそのままなのです」


 とのように返された。


 一キルはこの世界の単位で、地球での一キロに相当する。つまりは、千キロという広大な範囲で時間が止まっているのだ。

 比率や長さの数えはそこまで変わってはおらず、ただそれを示す単位が変わっているだけだった。


 一ミリなら一メル、一センチなら一ゼア、一メートルなら一メトス、一キロなら一キルといったように。

 世界が違えば、言葉も距離の単位も違うようだ。ラノベではご都合主義よろしく、地球と同じ単位で聞こえている様だが、この世界では単位はそのままこの世界の単位で聞こえてくる。

 まぁ、数えが同じ時点でここもご都合主義みたいなものかもな。

 あ、それと言語に関してはアディー達が色々としてくれたので読み書きの理解に苦労することはない。

 本当に至れり尽くせりである。




 と、少し脱線してしまったが、それにあたって自然や関係の無い者には影響は無い。

 流石は神様だ。


 そして今日も、いつもと変わらない訓練内容を果たしていく。勿論、何の成果も無い訳ではなく、それどころか、メキメキと実力を伸ばしている。まるで、俺の身体が戦う事に適している、もしくは溜め込まれていた何かが堰を切ったように溢れかえったかのようだった。

 それが楽しくて夢中で技術を磨いていった。

 更なる朗報に、どうも俺の魔力保有量は召喚された勇者以上だそうだ。

 魔力保有量を測る事が出来る魔道具で測定した結果、俺はシロナ共々驚く事になった。


 その数値は――――三百万。


 アーテラルに生きる人々の魔力保有量の平均が約一〜六万の間で、特定の種族で十万を超えるかどうかとのこと。


 例として上げるなら―――


 人族:魔力一万〜六、七万。


 亜人族:魔力三〜十万(亜人種でも種族で平均が違う、らしい)。


 魔族:魔力六万以上(これは確実)。


 となる。


 勇者でもギリギリ二十万らしく、希に超えてくる者もいるが、それもごくごく少数。歴代でも数える位しか居ないらしい。

 それらを考えればどれだけ俺の魔力保有量が異常かが分かるものだろう。

 これはけしてシロナ達が手を加えた訳ではなく、俺が元々持っていた物らしい。

 しかも、これでもまだまだ成長の余地を残しているらしい。

 それだけではなく、異能を使うために魔力とは別の力、『霊力』と呼ばれる力が必要となるそうで、俺はそれの総量もバカ多いようだった。


「ハッ………ハッ………ハッ」


 俺は手に持った魔術で造り出した金属の剣を振り続けながら身体の中を魔力が巡り続ける。

 これは、けして魔力が体外に漏れ出ないようにする訓練であると同時に身体強化の訓練でもある。

 通常時と強化時の戦闘する時の違和感やズレが無いようにするための。


「今日も、精がでますね」


 集中して訓練をしていると、家の方からシロナが声を掛けてきた。

 俺は強化と素振りを止め、振り返る。


「ああ。おはようシロナ」

「おはようございます。拓斗さん、もう少しで朝食が出来ますから、シャワーを浴びてきて下さい」

「分かった。ありがとう」


 一年も経てばシロナとの言葉使いも違和感無く普通に喋りあえる様になっていた。

 俺は朝の訓練を止め、シャワーを浴び、さっぱりしてから席に着く。


「拓斗さんがここで訓練を始めて一年が経ちましたね」


 シロナが俺に向かってそう言ってきた。


「そうだな。もう、そのくらいは経つか。それで、それがどうした?」

「そろそろ、卒業試験でもしてみましょうかと思いまして」

「……………卒業、か」


 つまり、それは―――


「私からは、もう教える事はありません。拓斗さんはもうひとかどの、いえ世界最強の戦士です。なので、明日の早朝に試験をして、合否に関係無くここを発ってもらいます」


 確かに、そもそも俺には目的がある。

 シロナによって勇者を召喚しようとした国が何処の国なのかは判明しているので、俺の世界に魔物を送り込んだその国に居るクソ野郎と、それに協力した者達と国に一発ぶつけることだ。

 その為に今まで、力を溜め込んでいたのだ。


「なら、今日はどうする」

「今日はオフにして、英気を養って下さい。その間に、試験内容を用意しておきます」

「分かった」






 



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