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最強幻想使いの異世界魔術学園  作者: 十織ミト
第2章
59/72

第55話 〜邪魔者は最後まで足掻くので、プッちんしました〜

お待たせしました。お待たせしすぎたのかもしれません。

という訳で、お久しぶりです。十識ミトです。

いきなりの村西監督風の入りですがどうですか?

まあ、それは置いといてまさかの一月ぶりです。

できたてホヤホヤですので、どうぞ。


 俺は主力と思しき者たちを含めた誘拐犯達を百合華達に任せ、一人子供達が収容されている場所を探し出し、その場所へと向かっていると、遠くの方から今まで感じた事の無い類の力の波動を感じ取り、足を止める。


「何だ、今の」


 このアーテラルにある力は魔力のみ。例外として、創造神のシロナとその眷族神達が『神力』と呼ばれる神に属する者のみが使えるものがある。

 しかし、今、この瞬間のこの地下空間には、アーテラルの魔力とも神の神力とも違う力を持つ者が二人居る。

 一人は勿論のこと俺、津我無拓斗。

 そして、もう一人が………


「もしかして、百合華、なのか?」


 それを感じたのは二人と一体がいる辺りからだった事から、その可能性が高いだろう。

 というか、今までは俺一人しか異能を使えるのが居なかったから、分からなかった。

 自分の中の力なら感じ取り、覚えてはいるが、他人の霊力を感じたことは無かった。


「大丈夫、だよな? …………いや、アイツらが任せろと言ったんだ。大丈夫に決まってる」


 ましてや、百合華が異能を使った可能性が有るのなら、間違いなく負けることは無い。


(って、そう言えば、俺ってまだ百合華の異能を聞いていなかったな)


 と思い出すが、もしもの時はアズと俺の間にある繋がり、『契約回路(パス)』を辿って教えてくれるだろうから大丈夫のはず。

 それより今は、自分のやるべき事をやり切るのみ。


「任せたぞ、百合華、エルシャ、アズ」



 〜・・・〜      〜・・・〜



 そこは、硬い石の壁に囲まれた檻の中。

 室内はそこそこ広く、その中には十数人の子供達が肩を寄せ合って隅の方で固まって座り込んでいた。


「お姉ちゃん」

「どうしたの?」


 その中のまだ十歳にも満たない男の子が傍らに座る自分より少し年上の女の子に話し掛ける。

 けして、この二人は血の繋がった姉弟ではないが、男の子はなんとなく近くに居た頼れそうな年上の女の子に声をかけたのだ。


「僕たち、お家に帰れるかな?」

「………そ、それは」


 女の子は、どう応えたものかと言い淀む。

 彼女も、これから自分たちがどうなるのか分からず、でもこのままであれば、確実に良くない事になるのは間違いないだろう。

 そうなれば、家に帰るなんて夢のまた夢。

 どうしたら良いのか分からないが、自分より下の子供の不安そうな表情を見て、勇気付けたくて強気な言葉を掛ける。


「だ、大丈夫だよ。きっと、誰かがここからワタシたちを助け出してくれるから」


 女の子は、これで少しでも気を紛らわせられたならと、考えたその時。


 ギイィィイイイ、ガチャン


「「「「「!?」」」」」


 この牢が有る空間と外を繋ぐ重そうな鉄の扉が外から開け放たれ、そこから何人もの大柄な男達が駆け込んで来る。


「おい! 急げ! コイツ等をさっさと掻っ攫ってトンズラするぞ!!」

「分かってる!! おい、ガキ共! さっとそこから出て来い!!」


 男達は乱暴に檻の鍵と扉を開け、檻の中の子供の腕を力強く掴んで引き摺り出す。

 その様は、何かに怯えているのか、慌てているかのようだった。


「い、いやだ!! お、オレは家に帰るんだ!!!」

「クソが、暴れるんじゃねえ!!」


 最初に連れ出されそうになった子供が暴れだすが、男は大柄な体格から出る力で押さえつけ、檻の外に連れ出し、そのまま何処かに連れて行こうとする。

 その後も、一人、また一人と連れて行かれていくと、ついに自分と自分の横に座り込む男の子にもその手が伸ばされようとする。

 恐怖から女の子の瞳から涙が溢れ、心のそこから叫びを上げた。

 けしてそれが、聞き届けられないと知りながら、だけど、叫ばずにはいられなかった。


 だから、


「誰か、助けてえええぇぇぇぇぇ!!!」


 そして、その助けを求める叫びは―――――――聞き届けられた。


 ズンッ、ドゴギャアアアアアアアアアアァァァァン!!!


「「「きゃあああああ!!」」」

「「「うわあああああ!?」」」

「「「「ぎゃあああああああ!!」」」」


 自分たちと他の牢に入れられていた子供達が悲鳴を上げ、牢とこの部屋の外に居た男達が扉のあった壁諸共冗談の様に吹き飛ばされていく。

 何が起きたのかとそちらを見る。

 すると、


「まったく、手間掛けさせんじゃねえよ」


 コツ、コツ、と靴が地面を叩く音を立て、立ち込める砂埃の中から黒い髪と黒いロングコートをはためかせる黒い狐面を被った人物が入って来た。

 声からして、そこまで歳を重ねているわけではなく、自分たちより少しだけ上といったところのように感じられる若さの声だった。

 そこで、さっきまで騒がしかった男達が静まりかえっている事に気が付いた女の子は、周りを伺い見ると、あの自分たちを恐怖させた男達が表情(かお)を引きつらせ、怯えきっていた。

 その様子から彼らが何故、あそこまで慌てていたのか、その理由に行き着いた。

 彼らは、あの黒い狐面を被った人物から逃げてきた事を。その事から、あの狐面の人物が誘拐犯達の仲間ではない事が分かった。


「お前たちが、何をもってこんな事に手を染めたのかは知らない。だが、そこに行ってしまったらお終いだぞ。最後の最後で立ち止まらないと、一線を超えたら後戻りが大変だ」

「テメエに、何が……………」


 狐面が言葉を紡ぎ、一人の男が反論しようとした瞬間。


「確かに、」

「っ!?」

「俺はお前たちの事を何も知らない。だが、言える事はある」


 狐面がいつの間にか、自分たちと、男たちの間に立ちはだかる様に現れた。


「犯した罪の数だけ、その身を戒め。罪の数だけ、罰を受け。そして、贖罪を背負う」


 女の子たちに背を向け、立つその姿勢は自分たちを守ろうとしているかの様だった。


「さあ、始めようか。ここからは、断罪と救済の時間だ」



 〜・・・〜      〜・・・〜



 危なかった。

 間一髪の所で助けに入る事が出来、俺は安堵の息を吐く。




 子供達が閉じ込められている部屋に突撃をかます、少し前。

 俺は魔術で見つけ出した子供達が閉じ込められている部屋に突撃をかます前に、異能で身元がバレないように偽装してから片っ端から助け出しては()()()()()()()()()()に移動してもらっていた。

 それを邪魔する奴は速攻で気絶させて戦線離脱させては拘束していく。

 粗方潰し終え、おそらく、この先に有るのが最後の場所のはずのそこへ向かっていると、進行方向から子供達を担いで走ってくる男達がやって来た。

 向こうも、進行方向から歩いてくる俺の姿を見つけたのか、速度を落として俺から距離を開けて止まる。


「誰だ、お前!?」

「何、別に答える程の奴でも無いが、言ってしまえば」


 俺はもったいぶる様に少し間を開けてから答える。

 それも、男達の後方で。


「お前達を潰しに来た、正義の偽善者さ」

「「「「っ!!?」」」」


 誘拐犯達が振り向こうとしたが、それは叶わず意識を失う。


「ふん。こんな事に手を染めたり貸さなかったら、こんな事にはならなかったのにな。っと、そうだった」


 俺は捕まっていた子供達を助け起こす。


「おい、大丈夫か?」

「う、うん」

「大丈夫だよ」

「ありがとう、お兄ちゃん」


 助け出された子供達は俺にお礼を言ってくる。


「お前達に聞きたいんだが、お前達以外にまだ捕まっている奴らは居るか?」

「うん、この先にまだ何人も捕まってる」


 まだ6歳くらいの男の子が連れて来られた道の指差して教えてくれた。


「そうか」

「お兄ちゃん、助けてくれるの?」


 男の子と同じくらいの歳の女の子が聞いてくる。


「当たり前だ。その為にここに来たんだからな」

「本当!?」

「ああ、だが、その前に。お前達には安全な場所に居てもらう」

「あ、安全な場所?」

「そうだ」


 子供達は顔を見合わせるが、その表情は芳しく無かった。


「どうした?」


 不思議に思った俺は、尋ねてみる。


「僕達の事は後で良いです」

「ナニ?」

「そんな事より、まだ捕まってる子達が心配なんです!」

「お願いです。僕たちも連れて行ってください!」


 突然の子供達の申し出にどうしたものかと思案するが、特段考えるまでも無かったと思い直す。

 おそらくだが、この子達は自分達を地上かこれから見つける安全な場所に匿ってから助けに行こうとしていると考えているのだろう。

 だがそれは、当たらずとも遠からず。


「別に、お前達を匿うのにそんな時間は掛からない」

「どういう事ですか?」

「何、見てれば分かる」


 俺は手を横に出して魔術を行使する。


「『境界空間(アストラル・ルーム)』」


 横の空間に突然の白い渦が現れ、それを見た子供達が驚く。


「な、何ですか、これ?」

「大丈夫、危険は無い。これは、お前達を安全な場所に連れて行ってくれる入り口だ」

「これが…………」


 不思議そうに見てくるので、女の子の一人と手を繋いで渦に入ると、そこには大きな二階建ての家、もしくは屋敷と言える建物が建っていた。


「こ、ここは?」

「ここが、俺が言っていた安全な場所だ」


 女の子は仕切りに周りを見回して、状況の理解に努めている。


「あの建物には、君達以外の捕まっていた子供達が居るから、行ってくると良い。屋敷の者には既に言ってあるから」

「わ、分かりました」

「それじゃあ、俺は他の子達も連れてくる」


 そう言って、俺は続々と子供達を『境界空間』に受け入れていく。

 最後の一人を送り出し、俺は先を急ぐ。


 少しして、視線の先に重厚な鉄の扉が現れた。


「アソコか」


 扉を開けようとしたその瞬間。


「誰か、助けてえええぇぇぇぇぇ!!!」


 扉の先にある空間から助けを求める悲鳴が聞こえてきたので、俺の中にある理性の糸が一瞬にしてプッちん来たので、一応の手加減はするけど、本気の力で壁をぶち破る。


「『黒炎贖陣(バハル・ゲーテ)』!」


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