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最強幻想使いの異世界魔術学園  作者: 十織ミト
第2章
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第49話 〜再びの皇都と再会〜

ここのところ投稿済みの小説の改文、増文したりといろいろしていた事で新しい投稿が遅れてしまった私です。

という訳で、お久しぶりです。十識ミトです。

いや〜、一度自分で自分の小説を読んでみて所々で「これじゃない」感がする場所を改文したり、増やしてみたりと色々やってみました。

ですので、よろしかったらそちらもご覧下さい。

今回の内容は指名依頼を終えてアルベンから皇都に戻るお話です。

後半では、拓斗がまさかの人物と出会う事に!?

良かったら、評価お願いします。

 指名依頼を受けてから数日。

 俺達は各々で休みを堪能しながら、街で必要な雑貨品を買いながら皇国に行く準備を行っていた。

 しかし、その都度に街では俺達に話しかけてくる人達でちょっとした人だかりが出来てしまっていた。

 ソレも仕方の無い事だろう。スタンピードを実質一人で押さえ込んだ俺はこの街の救世主とされている。

 それにより話の内容は、ほとんどが俺の事を詳しく聞きたいというのと、俺の弟子にしてほしいと言う嘆願ばかりだった。希にエルシャに関する話もされてはいたが。少し鬱陶(うっとう)し過ぎて、危うく魔術をブッぱしそうになりかけたりもしたが、その都度エルシャに止められていた。

 そんな訳で、多少の辟易を感じながらも順調に準備を進めていき、その日はやって来た。



 街の門の前には多くの人達でごった返していた。

 俺達が皇都のコルーナ魔術学園に入学しに行く事をエレーナさんから街の住民に告知されていたので、その送り出しに来てくれているのだ。

 しかし、だからと言ってこれは集まりすぎだ、と呆れていると、代表としてエレーナさんが前に出てくる。

 確か、まだアレの代わりの領主が決まってなかったんだっけ。


「二人とも、元気でね」

「はい。エレーナさんや皆さんも」

「ワタシも昔通っていたけど、彼処には三年間通う事になる。だからその間は冒険者の仕事は休みにしてもらっても構わないし、気が向いたらやってくれても構わないよ」


 そこはあの世界と変わらないんだな。


「そんなこと言っちまうと、本当に気が向いたらしかやらないぞ?」

「ふふ、まぁ、ずっと学園に居続けなくてはいけないって決まりはないけど、一年の間に三回は長期休業が入るから、良かったらその時にでも帰ってきなさい。歓迎するから」

「ああ、そんときには学園での事を土産話に持ってくるよ」

「皆さん。行ってきます」


『『『『『行ってらっしゃい!!』』』』』


 元気な住民達の声を聞き、俺達は皇都に向かう馬車に乗り込み、後ろを振り返って、まだこっちに手を振っている皆に俺達も手を振り返す。


 街の皆が見えなくなったので俺達は座席に背を預ける。


「盛大に送り出されましたね」

「そうだな」


 あそこまでしてもらわなくても良かったのに、と言うのが本音なのだが、ここは彼らの心使いを受けとることにする。


「…………それにしても、学園ですか」

「どうした? やっぱり、嫌だったか」

「そういう訳ではなく、学園に通う事自体が初めてなので、ちょっと………いえ、かなり不安で」

「ははっ、不安ね」


 弱気なエルシャの姿に少しだけ笑ってしまった。俺からしたら、一年ぶり。エルシャは初めての学園生活。

 確かに不安がるのも仕方の無いことかもしれない。

 俺も少なからず緊張していたりする。そんな風には見せないけど。


「ちょっ、何笑ってるんですか!? こっちは真剣に考えているのに!」

「悪い悪い。だけどさ、学園に通ってる学生は貴族の息女だけじゃなくて、俺達みたいな平民だって居るらしいじゃないか」

「それはそうかもしれませんけど」


 まだ不安そうなので、俺はエルシャに笑ってやる。


「それにだ。俺とエルシャなら、何があったとしても何とかなるよ」

「何とかって、何でそんなことが言えるんですか?」


 エルシャは不思議そうに聞いてくる。


「そりゃあ、俺達にはいろんな人達からの後ろ楯と繋がりがあるからな。何かあればその人達に頼れば良いし、実力行使が可能なら俺に鍛えられたエルシャに勝てる奴なんて居ないよ」


 俺は今までに繋がりがを得た顔ぶれを思い出す。


 アルベンの街の気さくで明るい大人達。

 アルベンのギルドマスターのエレーナさん。

 サブマスターのサリマンさん。

 皇都グリンザリアのグランドマスターのレウルさん。

 この国ハシュバル皇国の皇王陛下。

 俺の居た世界の管理神のアディーとゾルド、そしてアーテラルの管理神のシロナ。



 あまりの人達の多さに苦笑してしまうが、これが俺がやってきた行いの結果なのだとしたら凄く嬉しい限りだ。


「…………ふふっ、確かに、凄い顔ぶれですね」


 エルシャも今までに関わりを持った人達の事を思い出したのか、笑みをこぼした。

 流石にその中にはシロナ達は含まれては居ないだろうが。


「ここまで私の人生観が変わってしまうなんて思いませんでした。でも、一番は、やっぱりタクトさんですかね」


 エルシャは笑みを浮かべながら俺をチラリと見る。


「ははっ、確かにな」


 エルシャは俺と出会わなかったら、今も冒険者ギルドで依頼を受けていて、『E』ランクか『D』ランクの所に居た事だろう。

 いや、最悪俺と出会えなかったらあの時に遭遇した緑森熊(フォレスト・ベアー)に襲われて死んでいたことだろう。だからアレは単に運が良かっただけの事。


「でも、これから『コルーナ魔術学園』に通う事に為れば、さらに多くの事に触れる事になる。魔術学園と言う限られた領域の空間で過ごす事になれば、それだからこそ余計な厄介事がやって来る場合がある」

「例えば、貴族、ですか?」

「ああ。アイツらは自尊心の塊のような思考の凝り固まった奴らだからな。それでも、陛下や一部の人達はそうでもない様だけどな」


 呆れながらも、これから起こるであろう予想をを幾つもの建てながら、それに対することが出来る策も考える。

 一番の問題は、ラノベ小説で結構書かれている貴族の子息息女からのやっかみ、爵位に執着する貴族の講師教師からの強いアタリ。そういうことを考え、憂鬱になりながらも俺の中ではこれからの学生生活に高揚感を感じつにはいられなかった。



 しかし、この先にある皇都で、俺は予想外の再会を果たすことになる。

 それはあの時の占い師の女性に最後に告げられた事でもあった。



      〜・・・〜      〜・・・〜



 片道五日の馬車での道程を経て、遠目に皇都の壁と門が見えてくる。


「お、もうすぐ着くみたいだぞ」

「そうみたいですね」


 俺達はそれを見て、笑みを浮かべる。

 そこでふと、俺はこれからこの国の魔術学園に通うことををシロナ達に伝えていたかった事を思い出す。が、シロナは時間がある時には俺の動向を確認すると言っていたから、この事は知っている可能性はあるな。

 でも、アディーとゾルドは知らないだろうから、今からでも伝えておくかと思い、あの二柱(ふたり)から貰った加護に意識を集中させる。

 アディー達から貰った加護は、俺が持つ魔力や異能とは違う力を発しているのですぐに感じとることが出来る。


『あー、あー、…………アディー、ゾルド聞こえるか?』

『はい。聞こえていますよ、拓斗さん』

『ああ、こっちも聞こえている』


 普通に会話をするのではなく、頭の中で自分と他人の思考が繋がっているかのように話す。

 俗に言う、テレパシーや念話と呼ばれる物だ。

 それで聞く、一年以上ぶりな二柱(ふたり)の声はあの頃から変わっていなかった。

 まぁ、神様な彼等がそう簡単に死ぬことはないだろうけど、何故か凄く懐かしく思う。


『お久しぶりですね、拓斗さん』

『それで、どうしたんだ。拓斗』

『ちょっと、久しぶりに二人の声を聞きたくなったのと、近況報告だな』

『それは楽しみですね』

『そうだな。お前がどんな経験をしてきたのか、俺達に聞かせてくれ』


 俺はこれまでの事を事細かにとはいかなくても、出来るだけ明確に伝えていく。


『…………そんな訳で、俺は近々魔術学園に通う事になるんだ』

『なるほどな』

『拓斗さんはなかなかに、そちらの世界で波乱万丈な生活をしているようですね』

『俺だって、好きでこんな事になっているわけではないんだけどな』

『ふふふ、ですが、けして嫌ではないのでしょう?』


 アディーに内心を見透かされた様に言われるが、実際そうだから言い返せない。


『そうかも…………いや、そうだな。俺は今の生活を満喫しているし、充実している。だが、やっぱり気掛かりはある』

『妹さんやバスに乗っていた方々の事ですか?』

『ああ、あのあとどうなったか聞いても良いか?』


 そう、俺がこの世界アーテラルに来てからあちらの世界に関してこの二柱に話しかける事はしていなかったから、今回が初めての加護を通しての対話だったりする。

 ではとうして、俺はこんな事が出来るのかというと、それはこちらの世界に来る時に貰ったアディー達の加護のお蔭であったりする。

 俺の中にある魔力や霊力とは全くの別物な力の塊があるのは知っていたのでそこに意識を向ければこんな感じにテレパシーの様に話す事が出来る。


『ええ。貴方をそちらに送り出して直ぐに世界に対して記憶と記録を改竄する力を行使しました。これによりこちらの世界から拓斗さんの事を覚えている者は居なくなります』

『但し、既にアーテラルに勇者として呼び出されている者達には意味がないがな』

『それは仕方ないか』


 つまりだ、俺の事を知っているのは地球には一人もおらず、アーテラルに召喚された同級生達のみ。


『それで、百合華の方はどうなんだ?』

『あ~、えっと………』

『それなんだが…………』

『?』


 何故か突然言い淀み、(ども)りだす二人。

 どうしたのだろうと思い、聞こうとしていると、


「タクトさん、停留所に着きましたよ」


 意識の外から二人とは別の声が掛けられる。

 勿論それはエルシャだ。


「ああ、分かった」


 俺は馬車から降りる前にもう一度ゾルド達に言い淀んだ意味を問う。


『それで、二人は何で言い淀んだんだ?』

『それはだな、』

『ゾルド、この際です。もう、二人を実際に()()()()()()()()()()

『………………そうだな』

『どういう事だ?』

『外に出れば分かる』


 俺は何が何だか分からず、言われるがまま馬車が停まり、先に降りたエルシャの後を追って降りた瞬間、



「お兄ちゃん!!!」



 そんな叫び声を聞いた。

 だが、俺は直ぐには理解できなかった。

 俺の頭も、受け入れることが出来ずに真っ白になっていた。


 何故なら、その声を一度たりとも忘れたことが無く、二度と聞く事も姿を見ることも、触れる事さえ出来なくなることを覚悟していた相手の――――――大切はたった一人の家族である妹の声だったのだから。


 俺はあり得ないと言う思いで、声が聞こえた方に視線を向ければ、そちらから俺に向かって走ってくる長い黒髪の、そして一度足りとも忘れる事の無かった姿をした妹の百合華が居た。



「ゆ、百合、華?」



 妹の名前を口ずさむと、それが分かったのか向こうも涙を浮かべながら笑顔で俺に衝突するかのように抱きついてきた。

 俺は常に微弱な魔力で強化しているのでその程度ではふらつく事は無かったが、今はそれ以上の衝撃を受けていた。

 少し視線を下げればそこには俺にとっては馴染みのある黒髪。ゆっくりとそれに触れれば、それはけして夢や幻ではなく、現実なのだと俺に教えてくる。


「お前、本当に、百合華なのか?」

「うん! そうだよ、お兄ちゃん。会いたかったよ!!」


 その声と俺の手と身体に触れる感触。これはもう、間違いない。

 だからか、俺は知らず知らずの内に涙を流す。


「ああ、本当に、百合華なんだな。俺も、会いたかったよ」

「うん、うん!」


 俺達は互いに涙を流して抱き締めあう。

 だがそこで、俺は疑問に思う。

 何故、地球に居るはずの百合華がアーテラルに居るのか。

 それを知っているだろうあの二人。


(もしかして、さっきの言い淀んでいたのは、これの事だったのか?)


 だったら、後で詳しく聞こうじゃないか。だが、今はこの感動の再会に浸っていたいが、ここは往来なので、近くで休める店に入ることにする。

 エルシャの事も紹介したいしな。


「百合華、悪いんだけど何処かの店に入ろうか。紹介したい相手が居るからな」

「うん。分かった」


 俺達は近場にあったカフェに入る。



      〜・・・〜      〜・・・〜



 一通り泣いた事で落ち着きを取り戻した俺達は、お互いの自己紹介をする事になった。


「じゃあ、まずは自己紹介からしようか」

「お願いします。私も、先程から気になっているので」

「それは私もだよ」

「分かってるって。それで、まずは彼女からだ。彼女は俺とパーティーを組んでいる冒険者で、エルシャ・シグナートと言う」

「始めはして、タクトさんと冒険者パーティーを組んでいるエルシャと言います」


 まず俺はエルシャを百合華に紹介する。


「そんでこっちが、俺の実の妹でユリカ・ツガナシ」

「始めはして、紹介されました。百合華です」


 エルシャは驚いた顔をして俺を見てくる。


「い、妹さんが居たんですか!?」

「まあな。今までは離れていたんだが…………いや、にしても驚いたな。まさかお前までこっちに来てるなんて」

「仕方ないじゃん、寂しかったんだから」


 拗ねる百合華のその表情も懐かしいが、それ以上に俺を覚えていてくれた事に感触と喜びが溢れていた。


「そうか、それは悪かったな」

「ううん。大丈夫だよ、だって、これからは一緒なんだから!」


 百合華は満開の花の如く笑顔をふりまき、喜びを露わにする。

 それに釣られる様に、そして懐かしく感じ、笑顔を浮かべる。

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