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最強幻想使いの異世界魔術学園  作者: 十織ミト
第2章
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第47話 〜指名依頼 拓斗part1〜

ハロハロ、お久しぶりでしょうか?

十識ミトです。

いきなりのハイテンションな風の入りで不思議でしょうが、自分でも不思議でなりません。

何故でしょう?

と、まあそれはそれとして、今回は前回の指名依頼を受けたエルシャと別れて別行動をしている拓斗の話となっております。

では、楽しんで読んでください。

 鬱蒼と生い茂る木々、脛の辺りまで伸びた草。太陽の光を遮る木の枝葉により作り出されたどんよりとした少しじめついた空気。

 そんな薄暗く、陰気な空気と空間を醸し出す森を俺は歩いていた。


「ここにも、付けておくか」


 ガリッ、ガリッ


 既に幾つもの木に付けたのと同じ印を目に付いた大木に付け、俺は歩き回りながら気配感知を全開にして森の探索をしていた。それも数時間。

 当て度無く歩き回っていたが、今回の依頼では、この方が俺としても、そして依頼してきた側としても都合が良く、迷わないように勿論目印になるものは付けて来ている。


「次はあっちに行ってみるか」


 進路を左に変え、周囲を警戒し突き進む。


 すると、


「………うっ、まぶっ」


 視線の先にキラキラと光る輝きを見つけ、そちらに向かう。

 そこにあったのは、対岸が遠くに見えている程に大きい泉、いやそれはもう湖と言ってもいいものだった。


「でっかいな。これ、どんぐらいの大きさなんだ」


 湖を越えて遠くに見える対岸に行くには船で行くか、(ふち)に沿って行くかのどちらかだ。


「にしても、ここもか」


 ギルドからの指名依頼を受けて、この森にやって来たときから感じて、数時間も森の中を探索した事で確信に変わった事。

 この森は少し異常だった。

 俺が知る森は幾つもあるが、その中でもこの森はダントツ上位で魔力が大量に滞留(たいりゅう)している。魔力は本来、世界中に分散放散され、滞る事が無い様になっている。

 それは謂わば、世界の流れ。環境が違えば、そこに生息している植物や生物は違い、生き物達が無意識かに放出している生命エネルギーこそが魔力の元になる。

 俺達人間もそうだ。国と国、街と街の間を行き交う人々は、もともとある世界の流れとは別の流れを作り出し、魔力の拡散に貢献している……………のだが、人が訪れない、またはその数が少ない事によってその地に発生した魔力が拡散も分散も出来なく、その地に滞り、自然界に悪影響をもたらすことになる。

 それを調べあげた学者達は、魔力が滞るこの現象を『魔力だまり』、魔力によって悪影響を受けることを『魔力汚染』と呼んでいる。

 しかも、この現象を放置しておくと危険な事にも繋がる。

『魔力だまり』があるところには魔物が集まり、産まれやすくなる。そこに『魔力汚染』が加われば、魔物にさえ作用するコレによって、想定外の化け物が産まれる危険性もある。

 魔物が産まれる方法は三つ。

 一つ目は『魔力汚染』によって変質したことで産まれる存在。例を挙げるなら、死した人間や動物の魂が魔力に影響される事で産まれるゴーストや死体を利用するゾンビ、ゴーストがさらに強化されたリッチといった霊体や死体を基にしている魔物。

 これを《変質型》と呼ぶ。

 二つ目が『魔力だまり』の魔力が物質化したことで産まれる《発生型》。これはスライムやバチュラムの様な不定形の魔物を差し、希に既存生物を魔物化させる事もある。

 三つ目が、動物の胎内で変質し産まれる《変異型》。この場合は、親は通常の動物と変わらないが、産まれてくる子供が魔物になっている事を差す。これはゴブリンやオークといった二足歩行の魔物や、ウルフ等がいる。

 だからこそ、この森の異常性に目がいく。


「この森。あり得ないくらいに魔力が濃いな」


 まぁ、それも当然か。この森は許可証が無くては入ることも出来ない危険区域。生息している魔物も高位の物などザラだし、数も多い。

 そのせいで、魔力が流れない。


 つまりは、こういうことだ。


 自然界→魔力自動生産→世界の流れはあるが人は少ない→動物は居るが、住み処から離れない→魔力が滞る→『魔力だまり』&『魔力汚染』の発生率上昇


 ってな感じ。


「さぁてと、どうしたもんかな」


 流れを作り、放散させる事は俺でも簡単だ。しかし、それはその場限りの一時しのぎでしか無い。

 頭を悩ませていると、


「………ん?」


 何処からか敵意のある視線を感じた。


 周囲に視線を走らせた、次の瞬間。


 ザバアアアアアアアアンッッ!!


 湖の中から青とピンクの混ざったマーブル模様の何かが水柱と水飛沫を上げて飛び出してきた。その数、十本。


「何だ、あれ」


 俺はそれに警戒していると、天を突くかのように伸ばしていた先端を俺に向けて突き出してきた。


「うおっと」


 鞭の様な触手の様なそれは、代わる代わる、または同時に襲いかかってくるが、俺は危なげなく躱し、躱し、時に蹴り上げ、殴り飛ばす。

 殴った時、俺の手に何かが付着する。


 ベチョッと


「うわ、何だコレ!? ベトベトして気持ちワルッ!!」


 殴った方の手を見ると何かしらの粘液が付着していた。

 どんな影響があるのか分からなかったので、急いで魔術で出した水で洗い流す。

 ふと、さっき蹴り飛ばした靴に視線を向ければ、顔をしかめる。


「うへえ、マジかー」


 さっきの手に付いていた粘液の様な物が盛大にくっついた靴とズボン。


「コレ、落ちんのかな」


 俺は今すぐ着替えたいが、彼方(あちら)さんがそれを許さない連撃を放ってくるので仕方なく後回しにする。


「たくよー、ウザいんだよっ」


 俺は『エレクシア』の形状を刀に変え、一気に引き抜く。


 チンッ


 鞘納めの微かな音を立て、刀はいつの間にか鞘に納まっていた。

 視認不可能な神速の抜刀からの斬撃。構えた所までは分かるが、その後の速業は、例え誰かが観ていたとしても理解できなかったであろう。

 だが、それには理由があった。

 それは、地球では、剣術の中で一番速い技は何かと言う話がある。剣道も剣術も長き歴史の積み重ねでもって、その技術を高めていくなかで、世界の剣術家達が認める誰よりも速く斬る事に重きを置いた剣技が日本にはある。

 それこそが、居合いと抜刀術。

 座った所から放つ居合い。

 立った姿勢から放つ抜刀術。


 剣士は誰もが憧れ、日本男児ならいつか自分もあんな剣を振りたいと思い、願う技。


「津我無流刀術:無纏 (なな)の太刀『流天死断(りゅうてんしだん)』」


 チャキッ


 シャンッ


 遅れる事、数瞬。


 どすん、どすん、どすん、どすん、どすん、どすん、どすん、どすん、どすん、どすん


 触手全ての先端を切り落とされ、その激痛を感じているのか、それらはのたうち回りすごすごと湖の中に血を撒き散らしながら戻っていく。


「ぐぎゅアアアアアアアアアアアッ!!」


 血の浮かぶ湖の中から金切声が聞こえてくる。


「やっぱり本体は、湖の中か」


 縁のところまで行き、底の方を覗くが、赤く染まった水と暗闇で見通す事が出来なかった。


「仕方ないか」


 このまますごすごと帰るわけにも逝かないからと、俺は赤く染まった湖に潜る事にした。

 その準備として、まずは水の中でも息が出来、何の障害もなく動き回れる様にしておく為に―――――


「『断空之球渦(エアーズ・スフィア)』」


 一瞬だけ、俺の周囲を風が吹き、すぐに消える。

 これで呼吸の心配は無くなり、例え火の中水の中でも、ましてや土の中でも息をする事が出来る優れもの。


「それじゃ、行きますか」


 バシャアッと水飛沫(みずしぶき)をあげ、湖に飛び込んでいく。



      〜・・・〜      〜・・・〜



「うわっ、何か海外のサメ映画に出てきそうな景色なんですけど」


 そこに広がっていたのは青い透き通った湖………ではなく、湖底から滲み上がってくる血によって赤く染め上げられた水中だった。

 染め上げられた水中の範囲からして、かなりの出血量。


「そんで、本体は何処かな」


 湖底に目を向けるが、薄暗くハッキリと観ることは出来ず、試しに魔術を撃ち込んでみる。


「ちょっと光強めの『光源球(ライトボール)』」


 まずは一つ打ち込むがよく分からない。なので、さらに二つ、三つと増やしていく。

 そして二十個目にして、その全容が明らかになった。


「……………アレは」


 うねうねと蠢き、青とピンクのマーブル模様の長い身体と尾があるべき場所に本来の物より多い尻尾を持つ巨大な怪物。

 頭は前に水族館で見たアリゲーターガーみたいに細長く鋭い牙を幾つも覗かせ、身体は太く長い蛇の胴体。尻尾のある場所には十本の尾? 触手? 触腕? が備えられている。


「さっき切り落としたのはあれか。でも、すでに治っているって事は、かなり高い治癒力か再生能力持ちってとこか」


 これは、気を引き締めないとな、と久しぶりの強敵との遭遇にヤル気を出す。


「さあ、そんじゃ、殺りますか!」



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