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最強幻想使いの異世界魔術学園  作者: 十織ミト
第1章
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第4話 〜異能の力〜

お久しぶりです。十織ミトです。

今回も、「最強幻想使いの異世界魔術学園」を読んでいただきありがとうございます。

今回の内容は、簡単に言うなら『幻想具現』という異能の力に関するものになっています。

ちょっとだけ、本当にちょっとだけ戦闘を描いていますので、よろしかったら読んでください。

 シェルヴェローナが解き放った俺の中にあり、封印されていた《根源の種》からほとんど一瞬の内に俺の中を駆け巡り溢れ出さんばかりに暴れる力の奔流、次第にそれが落ち着き、馴染んだ末に脳裏に浮かぶ一つの言葉。

 それらを理解した事で、自分が本当に異能を発現させたのだと知った。


【幻想具現】オーバー・ザ・リライト―――これが、俺の異能(いのう)なのか」


 脳裏に浮かんだ言葉を口にする事により、異能の名前と共にその効果、異能によって引き起こされる力が理解(わか)った。


「は、はは。何だよ、これ。あり得ないだろ、この強さ」


 理解させられた内容は、名前の通り幻想を具現化させる能力。しかし、そこに内包されるモノはあまりにも多様であった。

 異能の名前にもなっている『幻想』だけでなく、他にも『空想』『仮想』『想像』の力さえも宿していた。

 だが、もし、その名を聞いた者が居たとしても、「全部同じ」だと考えるか、似た様な意味を持つ言葉だと考えるだろう。

 しかし、この異能を発現させた俺からすれば、似ている意味合いだとしても、全く異なる力だった。


『幻想』は、(まぼろし)(おも)う。

『仮想』は、仮定(かてい)を想う。

『空想』は、現実にはあり得ない事を想う。

『想像』は、現実では存在しない事柄を思い描く。


 こうして思い浮かべるだけで、その四つが違う事が解る。

 だが、そんなモノでも、同じものが存在する。

 それこそが、『思い浮かべ、描く』事。

 まさしく、想像力がモノを言う力だ。

 しかし、そこには何の制限も無く、俺が思い描いた物や者を俺が異能の力を解除しない限り永遠に具現化された状態のまま遺される。

 デメリットさえも、仕様過多による頭痛のみときている。

 人間誰しも、頭を使えば知恵熱や頭痛を起こすのだから、これは当然の事。

 だが、それを含めてもあり得ない程に強力な力だった。


「どうやら、御自分の異能の力を御理解された様ですね」

「ああ。だけど、まさかここまでヤバいもんだとは思わなかった」

「それに関しては問題ありません。貴方様方が持つ《根源の種(アドラ・オリジン)》から発現される力は千差万別です。強いものがあれば弱いものもあり、汎用性が有るのがあれば無い特化型のもあります。その点、津我無拓斗様、貴方様の異能は汎用性に優れた強力な力です」

「成る程、そういうことか。なら、この異能の力を使えばあの怪物――――確か魔物だったか? それを倒せるのか?」

「問題無く出来るでしょう」


 シェルヴェローナ様の言葉に俺は、「はははっ」と笑いが込み上げてきた。


「そうか。それなら、さっきまでの借りを返しに行かないとな」


 俺は決意を胸にそう言って、力を漲らせる。


「では、今から貴方様を元の場所に戻します。しかし、ここでは身体に傷は有りませんが、元の場所―――――――現実世界にある貴方様の身体は致命傷ではないとは言え、重傷である事に変わりはありませんので、すぐに治癒する事を推奨します」

「分かった。何から何まで悪いな」

「いいえ。元はと言えば、私が管理する世界の者が起こした事なので謝罪は要りません」


 シェルヴェローナ様は辛そうな顔をする。

 が、俺はそんなシェルヴェローナ様に声を掛ける事はしない。

 事実、彼女の管理する世界の人間が起こした事。

 俺からすれば、最悪な出来事であり、悲劇。彼女からすれば無関係な世界とそこに生きる人間に多大な迷惑を掛けたのだ。

 

「ではこれより、貴方様を元の場所に戻します」

「ああ、何時でも良いぞ」

「分かりました。御武運を」


 フワリと意識が昇るか落ちる様にして消え、数瞬後に最初に感じたのは、身体中を襲う激痛。

 そして、次にやって来たのが吐き気がする程の気持ち悪さ。

 俺はゆっくりと目をあけていけば、そこに広がっているのは最初と同じ濃い霧に包まれた林の中だった。

 さっきまでの事は夢だったのかと思い、落胆しそうになっていたが、身体の奥からこみ上げてくる今までの人生で感じた事の無い力の存在に気付き、あれが夢ではなかった事を知る。


「はははっ。そう言うことか」


 俺は異能を発動し、まずしたのがシェルヴェローナ様が言ったように身体の傷を治す事だった。

 だが、異能の力を理解しているとは言え、今回が初めてということで呪文の詠唱のようなものを唱える事にした。

 勿論、俺のイメージの補完をしたかっただけでは無く、異能を使うと思った瞬間にその呪文が浮かび上がったのだ


「我が身を犯す事象は儚く消える。それは、まさしく、幻想の如し。【幻想具現】オーバー・ザ・リライト


 それの口上(こうじょう)は凄く厨二病ぽいが、この際仕方ない。だが、変化は劇的だった。

 さっきまで身体中を襲っていた痛みが消え、吐き気も治まっていた。

 俺は身体の状態を確認するためにゆっくりと起き上がる。

 顔を下に向ければ、足元には大きな血だまりができていた。制服に目を向ければ、前面にはびっしょりと血がついており引き裂かれた跡もあったはずが、今は綺麗サッパリ無くなって、制服の中に手をいれる。

  完全に怪我する前の無傷な状態に戻っていた。


「マジで、治ってんな」


 自分で自分の状態を確認する限りでは、魔物にやられた傷は一つとして残っていなかった。

 制服の傷や破れた痕、さらには(ほつ)れさえも綺麗さっぱり修復されていた。


 魔物は突然俺が起き上がったのに驚愕し、立ち止まる。

 俺は止まってこっちを見る魔物に睨み付けた。


「おい、クソ野郎。さっきまではよくもやってくれたな。こっからは、こっちから()らせてもらうぞ。数倍返しでな」


 俺は、身体の中にある異能の力を使って魔物に対して威圧する。

 今まで自分が追い詰めていた獲物から溢れ出すあり得ない威圧感にたじろぎ、それに気付いた魔物が俺に向けて威嚇してくる。


「グルルルルルゥゥゥゥゥゥ!!」


 だが俺には、その威嚇がただの強がりの虚勢に感じられた。


「はっ、そんなもん恐くもねぇよ! 俺はもうお前に恐怖を感じることは無い!」


 右手を魔物に向けて突き出し、魔物にのみ作用する力をイメージし、発動する。


「彼の者に与えしは姿無き衝撃、それを捉えることは叶わず。【幻想具現】オーバー・ザ・リライト


 ドガァァァァッ!


「グガアアアアァァァァッ!」


 突然、自分を襲った衝撃によって吹き飛ばされる魔物は、その先にあった木々を()(はら)って吹き飛ぶ。

 何本もの木々をへし折り、ようやく止まった所で、ふらふらとしながらも立ち上がろうとするが、


 ズドオオオオオォォォォォンッ!


「グルゥガガガァァァァッ!?」


 再び発生した衝撃によって吹き飛び、地に伏す事になった。

 何度も何度も立ち上がろうとするが、すぐに吹き飛ばされるという事を繰り返していた。


 しかし、そこに広がっている光景には不思議な事がおきていた。


 周りに乱立して立っている木々には、吹き飛ばされた魔物がぶつかっている事で何本かは倒されており、さらには地面もでこぼこになっていた―――――――が、それだけだった。

 発生している衝撃は、周りの木々や地面には影響を与えることが無く、さらには、当然の如く俺にも何もなかった。

 そのさまはまるで、魔物にのみ作用する何かしらの姿の見えない力で吹き飛ばされているかのようだった。


「まぁ、こんなもんかな。にしても、なかなか丈夫だな」


 実際、俺に何の影響も無いのも当然で、魔物にのみダメージを与えている姿の無い衝撃は俺が発現させた異能に由るものなのだから。

 それでも、未だに倒すまでいかなかった事から、俺は次の力を使うことにした。


「なら、これはどうだ。(それ)は姿無き友にして死神、無情(むじょう)なる使者にして慈悲(じひ)を捧げし者、彼の者に与えしは絶対なる敗北、我に与えしは大いなる勝利。その名は因果。ここに死と生を体現する【幻想具現】オーバー・ザ・リライト


 それは、因果に作用する幻想(ちから)

 そして、運命は決まった。

 魔物に与えられたもの、向かう先に在るのは―――絶対の敗北。

 俺に与えられたもの、向かう先に在るのは―――絶対の勝利。


「風よ、渦を巻き、無形(むぎょう)の刃を振るえ。大地よ、彼の者に呪縛の戒めを与えよ。【幻想具現】オーバー・ザ・リライト


 風が吹き、次第に強く渦を巻き、大地がうねったかと思えば、そこら中から鎖が飛び出し魔物に絡み付く。

 魔物はそこから逃れようともがくが、その場から動く事は叶わなかった。

 渦を巻く風が鎌鼬の様に魔物の体を傷付け、地面から飛び出した幾本もの鋼鉄の鎖が四肢に絡みつき、魔物の身動きを封じ、中にはその鋭い穂先で身体を穿つ。

 動きが完全に止まった事を確認し、最後の攻撃を放つ。


「これで、最後だ。俺の怒りを受け取れ、クソ野郎。彼の者に与えるは断罪。彼の者が背負いしは虚無。我は汝に浄化と救済を与える者。【幻想具現】《オーバー・ザ・リライト》」


 魔物を包み込む様にして生じた光と闇の光の粒子が混ざりあい、断末魔さえも上げることも無く瞬く間に魔物はその姿と命を消え去った。

 後に残っていたのは魔物との戦闘でめちゃくちゃになった林と地面だけだった。


「はぁ、どうにかなったか。あまりにも拍子抜け…………って、あれ?」


 戦闘後の林と地面は後で直せるだろうと思い、戦闘中は張り詰めていた精神が限界を迎え、膝から崩れ落ちる。


「…………ヤバッ、力が入んない。それに、何か、視界が……………」


 そのまま倒れ込んだ俺は、張り詰めていた緊張の糸が切れたのか、身体から力が一切合切無くなり意識を保つ事が出来なくなり、闇に誘われるかのように落ちていく。

 その瞬間、微かに声が聞こえたような気がした。


「ご苦労さまです。拓斗様」


 




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