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最強幻想使いの異世界魔術学園  作者: 十織ミト
第2章
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第44話 〜帰還〜

 行きと同じく五日の道程を消化し、俺達はアルベンの街に戻ってきた。

 一月も離れていないのに、何故か凄く久しぶりな感覚を抱く。


「いや〜、まだ半月くらいしか皇都に居なかったのに、すんごく懐かしく感じるな」

「はぁ……はぁ……そ、そうですね」


 隣からエルシャは俺の言葉に息も切れ切れに答える。

 俺はそんなエルシャの方を向くと、彼女は膝から崩れ落ち、女の子座りをして息を整えていた。


「おいおい。この程度でへばっていたら、この先の訓練は更にきつくなるぞ」

「わ、分かってはいるんですが……はぁ……はぁ……」


 エルシャは息を整えながら話しているので、会話の合間に息継ぎをしないと上手く喋れないようになってしまう。

 何故、エルシャがここまで疲弊しているのかというと、それは俺が帰還の間にエルシャに果たした課題のせいであった。

 その内容とは―――


「あのですね、タクトさん。流石にあれは無いでしょう。何ですか、魔力強化をしながら属性強化と二つの異なる魔術を展開と維持を移動しながらしろだなんて。あまりにもハード過ぎませんか?」


 複数の魔術の同時行使。

 それは魔術師であれば、必ずとは言わないが、使える様になりたいと思うであろう技術なのだ。

 たった一人で複数人の役割を担えるのと、単純に攻撃の回数と手数が増える事を意味する。

 だが、それが出来るのは一部の実力者のみ。ほとんどの人間は一つの魔術で何とか手数を増やそうと躍起になる。それでも、戦闘では役に立つだろう。

 しかし、ここまでエルシャにやらせていたのは、それとは異なりそれ以上に難易度が高かったりする。

 魔術を図形に例えるなら、一つの魔術を多く展開するのは片手で同じ図形を描いていけばいいだけで、二つ三つと魔術の種類を増やしていけば、両手で全く違う図形を書き出している事になり、それだけで難易度が上がっていく。

 例えば、【火炎球(ファイアボール)】を複数同時発動したとして、それはどれもが同じ術式からなるものであり、ただ数を増やせば良いだけ。対して、俺がエルシャにやらせていたのは属性による身体強化と【火炎(ファイア)】を両手での行使。そこにさらに、通常の身体強化を合わせれば、合計四つ(両手の【火炎】を二つとカウント)の同時行使になる。

 そんな事を普通の魔術師がやれば、一時間と経たずに魔力枯渇状態になり、倒れ伏す事となるだろう。

 それを俺はエルシャにやらせながらここまで戻ってきていた。だから、エルシャのこの非難も当然であるだろうが、その声は弱々しかった。

 勿論の事、俺もやりながらで、俺の場合は全属性の魔術を自分の回りに衛星の如く回しながら走って来た。


「それじゃ、少し休んだらギルドに向かうぞ。エレーナさんに帰って来た報告をしないとな」

「わかりました」


 相当疲弊していエルシャが息を整えるのを待ち、俺達はアルベンの街の門を潜ると、


「お、おい。あんたもしかして、タクト・ツガナシかっ」


 恒例の身分証の確認をしていると、門番をしていた衛兵が俺のギルドカードを見て驚いていた。


「ああ。そうだが、それがどうした?」

「やっぱりそうか! いやぁ、最近見ないと思っていたけど、こんなところで街の英雄に出会えるんなんてな! あ、そうだ、握手してくれないか!!」

「え、英雄? それに握手って」


 衛兵は俺が本物だと知ると、おおいに喜んで俺に握手を申し込んでくる。

 困惑しながらもそれに応えるていると、近くに居た他の衛兵や住民が俺の方を向き、方々から声が上がった。


「おい、今の聞いたか」

「ああ。あの英雄が帰って来たんだって」

「今、門の前に居るんだって!?」

「キャアァァァァ!! タクトさぁん!!」

「こっち向いてええええええ!」


 何て、アイドルに掛ける様な黄色い声援を掛けられてくる。

 その光景に俺は唖然とし、隣のエルシャに問う。


「何、コレ?」

「いや、私に聞かれても」


 エルシャも困った顔をしているから、彼女も知らないな事なのだろう。

 なら、知っていそうな人物に聞くとしよう。

 そう思い、俺は俺達の担当をした門番衛兵に問う。


「何、コレ?」


 俺はエルシャに聞いたのと同じ台詞で尋ねる。

 すると、門番は嬉々として教えてくれた。


「コレはですね、貴方がこの街を救ってくれた事が忌諱しているんですよ」

「え? どゆこと?」


 訳も分からず、聞き返す。


「貴方が災厄(ディザスター)級スタンピードをほとんど一人で討伐したことで、今や貴方はこのアルベンの街で知らないな人の居ない有名人であり、英雄なのです」


 衛兵は我が事の様に、誇らしく語っている。

 確かに、スタンピードを討伐した後に、俺を英雄に祭り上げる動きをしていた奴らが何人も居たことを思い出す。


「そ、そうか」


 俺は少し戸惑いながらも、それを聞き、引いてしまう。

 ここまで広まるか、普通。


「そ、それじゃあ、俺達はギルドに用が有るから、これで」

「はい! お気をつけて!?」


 背にそんな溌剌とした声を受け、俺達はギルドに向かって歩く。

 しかし、当然と言うべきか、その間も方々から声が掛かる事となる。


「キャアァァァ!! タクトさぁん!!」

「ほおう、アレが噂の英雄さんかい?」

「なかなか若いねぇ」

「タクトさん!? 俺を弟子にしてくれ!!」

「ちょっ、ズルいわよ!? ワタシも!!」


 言われた通り、この街で俺を知らない人は居ないのか、さっきからひっきりなしに声が掛かるし、俺を讃える者や弟子にと懇願してくる声が聞こえる。

 確か、似たような事がスタンピード終息後にあった気がする。


「これは、凄いな」

「そ、そうですね」


 俺達は少なからず気後れし、恥ずかしく思いながらも、ただギルドに向けて進む。

 そこで、ふと頭によぎる予感。


(アレ? これはもしかして、ギルドでもか?)


 そう。ギルドには俺の実力を間近で見ていた冒険者達が何人も居る。そこで、俺の頭によぎるのは、今おきている歓声か嫉妬、罵詈雑言の嵐かもしれないと考え、少し鬱になりそうになったが、冒険者ギルドはもう目と鼻の先にまで来ていた。

 ここまで来たら、覚悟を決めようと考え、俺はギルドの木製の扉を押し開ける。

 すると、


「「「「「「「「「「…………………………………………」」」」」」」」」」


 先程まで扉の外からでも聞こえていた声が、俺達が入ってくる事で静まり返っていた。


「え、どうしたんだ?」

「な、何なんでしょうね」


 ギルドに居る全ての冒険者と受付嬢の視線が俺とエルシャに殺到し、まるで視線の暴意を受けているかのように錯覚してしまう程の圧力を感じている。

 一体どうしたことだろうと疑問に思っていると、


「「「「「「「「「「帰って来たあああああああああ!!!!」」」」」」」」」」

「「ひいぃぃぃ!?」」


 静まり返っていたギルド内が一瞬にして大音響の嵐に襲われる事となった。

 冒険者と受付嬢達の大声量を放たれれば、それはまさしく音響兵器の如く圧力を俺達の身に受ける事になって、数瞬の間、身体が固まり動けなくなった。


 恐るべし、人類の興奮度合い。



  〜・・・〜 〜・・・〜



「ははははっ、なるほどね。さっきの歓声から貴方達が帰ってきていたのは分かっていたけど、そんな事になっていたとはね。まあ、予想は出来ていたけどね」

「ああ。流石の俺でも精神的疲労と羞恥心が堪えてな」


 あの後、俺達に向かって冒険者達が雪崩か荒波の如く押し寄せて来るので必死に押し留め、隙間を縫う様にしてここまでやって来たのだ。


「にしても、アイツ等どうしたんだ。あんな興奮して」

「ふふふっ、知ってるか判らないけど、今の貴方はこのアルベンの英雄。だから、この街に住む冒険者も兵士も、ましてや住民達でさえも、今や貴方は憧れの的なの」

「うへぇ………マジかー」


 俺は目立たない様にしてたかったのだが、あの時は仕方なかったとはいえ、やり過ぎたかもしれない。そのせいでここまで崇められ憧れの対象にされている。

 これから先、これが続くのかと、自分でも分かるわくらいに苦虫を噛み潰した様な顰めっ面になってしまう。


「そんな顔しないでよ。あれは、彼等なりの感謝の現れなんだし、あの時貴方が力を使ってくれなかったら、この街は壊滅していたのでしょうから」

「そう言われると、何も返せないんだがな」


 呆れ顔の俺をエルシャとエレーナさんは笑う。


「そう言えば、貴方達は準備が出来たらすぐ皇都に発つの?」


 エレーナさんは俺とエルシャが皇都の魔術学園に通う事になっているのを知っているので、そう聞いてくる。


「いや、準備はある程度したら数日は休養日にするか、依頼を受けるかするよ」

「そう。それは良かったわ」

「何が?」


 エレーナさんは机の引き出しから二枚の紙を取り出し俺達に渡してくる。


「これは、依頼か?」

「ええ。貴方達への()()()()

「「えっ!?」」







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