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最強幻想使いの異世界魔術学園  作者: 十織ミト
第2章
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第41話 〜騎士団長、乱舞する〜

お久しぶりです。十識ミトです。

最近は梅雨が明けてから暑い日が続いて嫌になりますね。

しかも、ここん所雷がなって大変です。

てなわけで、今回の内容紹介。

前回の皇王ギリアの無茶振りで、無理やり皇国の騎士団長全員と闘うはめになったタクトです。

少し闘いの場面を頑張って見ましたので、どうぞ読んでみてください。

さぁ、勝者は一体誰!

 流れに流され、俺は皇王に提案(命令か?)をされた、この国の全騎士団長との模擬戦をさせられる事となった。

 それにより、俺の実力を測るらしいが、本当に大丈夫かね。

 特に、相手をする騎士団長達のプライドがポッキリ折られて、あの世に逝かないか。


 現在の俺達は、謁見の間で謁見していた皇王様を含めた王族全員とその場に居た貴族達を伴って騎士団が毎日鍛練に使う大型練技場へとやって来ていた。

 そこには多数の騎士達が鍛練に勤しみ、自らの技量の向上に励んでいた。


「ふむ、精が出るようで何よりだ」


 騎士達の鍛練風景に気を良くしたのか、皇王ギリア様は一つ頷く。


 その後方で、俺はエレーナさんから話し掛けられていた。


「貴方から見て、彼等の力量は如何かな」

「そうだな、別にこれは、俺の主観で良いんだろ?」

「ええ」


 俺は目の前で繰り広げられている鍛練風景を見て、こう言った。


「俺の相手じゃない」

「それは、貴方が全力を出したら? それとも出さなくても?」

「俺が()()を出さなくても、だ」


 本気と全力では意味が違う。

 全力は全ての力を出し尽くす事で、本気は真面目に取り組む姿を見せているだけ。

 俺の場合は、大半の力は制限されていて、現在使用可能な力で本気を出す。それでも、ここに居る騎士達を相手にしたなら、五分もたないだろう。


「あれでも、この国の精鋭達なのだけど。それでも貴方の敵ではないのね」

「ああ」

「それは残念ね。まあ、このワタシでも貴方に勝てるか分からないしね。そもそも、負ける確率の方が高そうだ」


 何を言ってるんだか、と俺は呆れ顔をし、さっきから()()()()()()()()()()()()()()()()()()()|。


「それで、さっきから俺に熱い視線を向けてくるアンタ等は、一体誰なんだ」


 視線の主達が居たのは訓練をしている騎士達から、ギリギリ視界から外れる所でそれを観ていた豪奢な騎士甲冑を纏った五人の騎士だった。

 その騎士達に言い放つと、それを横から皇王様が割り込んだ。


「そうか、ソナタは初見か。あそこに居るあの者達は、ロザリアと同じく各騎士団を統べる騎士団長達だ」

「あれが」


 俺達が話していると、騎士団長達がこちらにやって来た。


「御待ちしておりました、皇王陛下。それで、この度はどの様なご用でしょうか?」

「うむ、今回ソナタ等を呼びつけたのは、この者と一戦してもらいたかったのだ」


 皇王様は俺に指で示し、話し掛けてきた騎士団長の一人に言う。

 騎士団長達は示された俺に目を向ける。


「彼と、ですか」

「うむ」


 俺は自分に向けられている騎士団長達の視線に含められているものを正しく読み取る。

 それは、


(うっわ、めっちゃ見下しているし)


 完全に俺を戦闘の素人か、戦闘に携わっているとしても自分達には敵わない存在なのだと見下している。それがありありと観て取れた。


「彼は、見たところ冒険者のようですが。その彼と戦えと?」

「その通りだ」

「……………はぁ、陛下のお呼び出しだと言うから何かと思いましたが、まさかの冒険者とやり合えとは」

「何だ、アグニル不満か?」


 皇王様は話していた騎士団長―――アグニルと呼ばれた人に不思議そうに聞く。


「不満、と言えば不満ですが、一番は不思議なのです」

「不思議とは?」


 アグニル騎士団長は俺にうろんな視線を向け、今度は完全に見下す気配を隠さずに言う。


「このような冒険者などをしている者と戦っても、我らに得られるものなどありはしません。それどころか、我らの栄えある皇国正統剣術に余分なものが混ぜられてしまいます」


 などと言い放つので、俺はチラッとエレーナさんとレウルさんに目を向けると、二人とも表面上は平静を保っているようだが、明らかに怒りを堪えている。


「そう言うな、アグニル。この者はこう見えて、既に冒険者ランクは『A』。それに、ロザリアを打ち倒しているのだ」

「何ですって!?」


 皇王様の言葉にアグニルを含めたロザリアさん以外の騎士団長達は驚愕する。


「ふっ、驚いたであろ。だから、今度はロザリアを含めた()()()()()()と戦ってもらいたいのだ」



      〜・・・〜      〜・・・〜



 俺達は距離を取って向かい立つ。


(まったくこんな事をして、何になるんだか。まぁ、俺達冒険者を馬鹿にした落とし前をつけさせなくちゃとは思っては居るが)


 俺は借り受けた刃の潰された模擬戦専用の模擬剣をぶら下げるようにして持ち、鎧やガントレッドを着けずに立つ。

 対して、相手は模擬戦に使われる鎧等のつけた上でロザリアさんを含めた六人が隊列を組んで立ち、その身からは並々ならぬ気迫が漏れている。


「各自、位置に着け」


 レフェリーをかって出たレウルさんが言う。


「今からルールを説明する。武器は模擬剣のみで、魔術は中級までとする」


(彼等は俺と同じ魔術戦士タイプか? いや、彼等は間違いなく前衛タイプ。つまりは魔術をある程度は使える前衛か)


「勝敗は、どちらかが完全に戦闘不能になるか、降参の意思を表明したときとする。それでは、始め!」


 合図が下った。


 最初に動いたのはロザリアさんだ。その身には魔力強化がされ、強化がされている箇所から脚力と腕力に振られている事が分かる。

 一瞬にして俺の間合いに入ってくるが、俺は一歩分下がり、首を軽く後ろに傾げる事でロザリアさんが振るう剣をかわし、瞬時に下げた足を蹴りに転じる。

 その反動でロザリアさんの横っ腹を蹴り抜くが、同時に支えを無くした俺は後ろに倒れていくことになる。

 が、それをただ見ているどけでは無かった団長の一人アグニル(ロザリアさんは青系の鎧で、こっちは赤系)が横合いから斬りかかってくるが、俺はそれを無詠唱で唱えた『旋風(ハイ・ウィンド)』で自分を押し上げる事でかわし、斬り返そうとした所を、また横合いから今度は黄色っぽい鎧を着た騎士が土魔術の散弾を放ってくる。

 それを俺は模擬剣で打ち落とし、一旦仕切り直しで距離を取る。


「流石は騎士団長様達だ。連携に隙がなく、途切れる事の無い連撃を放ってくる」


 俺が称賛を贈るが、それには誰も応える事無く、ただ真剣な眼差しだけを向ける。


「まったく、少しは会話を楽しもうぜ。じゃないと―――――」


 何時ものように、一瞬だけ全身を薄く魔力を纏って強化し、俺に攻撃をしなかったロザリアさん以外で二人居る女性騎士団長の緑色の鎧を着けた方の後ろにほとんど瞬間移動の様な速度で回り込み、首筋に模擬剣を軽く当てる。


「―――――じゃないと、こんな風に、簡単に終わっちまうからさ」

「なっ!!」


 緑色の鎧を着けた女性騎士団長はいつの間に自分の背後を盗られたのか判らなかった。

 いや、この場に居る離れた場所で観ている貴族や王族、騎士達、そして自分達騎士団長ですら気付けなかった。

 恐らくは、魔力強化での移動であろうが、それが分かっていても―――――付いて行けなかった。

 それ程までの速業。

 動いたと分かるような動作があまりにも少なく、小さかった。

 何処に移動したのか、何時そこにやって来たのか、それが分からない。

 この一瞬の出来事で、彼が自分達より遥か高みに居る存在なのだと理解させられる。


「貴方は、一体、何者なんですか?」


 彼女の口から絞り出した問い。

 彼女の身体を支配する言い知れぬ恐怖か緊張から、それだけは口にできた。


「俺はタクト。タクト・ツガナシ。お前達が馬鹿にした、単なる冒険者さ」


 その台詞を聞き終えると同時に、彼女の意識は失った。


 だが、この時の彼女は運が良かったと言えるだろう。

 一番最初に脱落出来たことで、この後に起こる模擬戦とも言えない、一方的な闘いに参加しなくて済んだのだから。



      〜・・・〜      〜・・・〜



「何だ、あれは? あれが、本当に私達と同じ人間なのか?」


 皇王ギリアは、今まさに目の前で起きている事を理解する事が出来なかった。


 何故なら、


「ぐあああっ」

「きゃあああっ」


 自身の国を守護する騎士団の長達が二人がかりで、左右から別々に斬りかかるが、相手はそれを意に介した風もなく、ただその場で自分を軸にして横に一回転しただけで薙ぎ払われる。


「くそがああっ」

「はああああっ」


 遠距離から援護するために炎と土の魔術を散弾のように打ち出すが、


「『流水弾(ウォーター・バレット)』」


 ただ魔術名を唱えるだけで撃たれた数と同じ数の水の弾丸を作り出し、まったく同じ斜線上にぶつかるように打ち出し、相殺する。それも、まともに見向きもせずだ。


「せああああっ」


 背後からの気勢の載った声と共に振り抜かれた剣を、同じ剣で受けるのではなく、流して回避する。

 そのさまをは、まるで風に吹かれる柳(あるか分からないが)のようであった。

 自国の精鋭達を束ねる騎士団長達がまともに相手にされていない。

 それは隔絶した実力差だからこそ生まれる現象。

 大人が子供とじゃれているような、絶対的な実力差があるから生じるもの。


「何なのだ、あやつは」


 横でその様を見ていたエレーナとエルシャ、そして審判をしていたレウルは吹き出さない様に我慢していた。


「レウル、それにエレーナとそこの、確かエルシャだったか。お前達は知っているのだろ? あれは、一体、何だ」


 皇王はエルシャ達に問うてくるが、彼等の答えなど決まりきっている。


「「「彼は、世界最強の魔術剣士です」」」


 付け足すなら、そこに『異能使い』も入れればなお完璧。


「世界、最強だと?」

「ええ。皇王様はロザリア殿から報告を受けていた筈ですよね。自身が冒険者を相手に本気を出したが負けてしまった、と」

「あ、ああ」

「なら、何故そこで不思議に思わなかったのですか?」

「何?」


 皇王ギリアはレウルに聞き返す。


「騎士団長とは、この国の守護を担う騎士団の長。それが本気を出して負ける。そんなことは普通あり得ない」

「いや、『A』や『S』以上であれば出来てもおかしくは…………………ハッ」


 そこで皇王は自分の間違いに気付いたのだ。

 騎士団長達を相手にしている少年は『A』ランクになったばかり。それも騎士団長のロザリアを降す形で、ランクを上げたのだ。

 なら、それ以前に既にロザリアを超える実力を持っていたことになる。それも、本気のロザリアの。


「ロザリアと闘っていた時、あの者は本気を出していたのか?」

「いいえ。ただ軽く流していただけですね」


 そう断言するエレーナ。

 皇王は、もう言葉も無いといったところだろう。

 現に、それを表すかのように団長の一人を破り、残りの五人でさえ一蹴している。


「こんなことが、現実に起こるのか」

「これは、現実ですよ。皇王陛下」


 話している間も、少年――――タクト・ツガナシは一人一人確実に潰していく。


 そして、


「津我無流剣術:無纏 ()ノ太刀『蓮華(れんげ)』」

「なっ…………ぐはあっ」


 俺が放った剣術『蓮華』は、柔剣に鋭さを突き詰めた剣技。一振りに見せての八連撃。

 初撃を防がれても、後の連撃が必ず絡めとる。

 それが、鎧の上からとは言え、無視できない衝撃を与え、残りの騎士団長を数メトル吹き飛ばす。


 ここで(つい)


「そこまで、勝者タクト・ツガナシ」


 全ての騎士団長を降し、無傷で勝利した俺は、エルシャとエレーナさん、レウルさんは当然と言う表情で見て、貴族や騎士団員、そして王族達はあり得ない存在として彼等の胸にその名が刻まれた事だろう。







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