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最強幻想使いの異世界魔術学園  作者: 十織ミト
第2章
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第40話 〜皇王謁見(冒頭へ)〜

お久しぶりです。十識ミトです。

最近はこの前書きも書いていなかったので、久しぶりに書いてみました。

今回の話は第2章のプロローグに繋がる話になります。

前回、前々回は拓斗達が国の首都に赴いて、そこでランクアップ試験や騎士団長との遭遇何かを書いていました。

なので、今回はまさしく冒頭に繋がり、その後に関する話を書きました。

どうか、これからもよろしくお願いします。

 という訳で、俺達はこの国の皇王様が居るお城に登城する事となった。


 入城する時に門の傍らに立つ騎士に身分証の確認を軽く済ませただけで中に入らせてもらえた時は驚いたが、横に視線をズラせば、そこには皇王様が俺を呼び出すために指令を出したロザリアさんとそのロザリアさんが頼ろうとしていた冒険者ギルドのグランドマスター、レウルさん。

 更には俺とエルシャが拠点にして活動しているアルベンの街のギルドマスター、エレーナさん。


 そんなそうそうたる顔ぶれの中に俺達が混じっていたとしても、この三人が俺達の絶対的な証人になってくれる事間違いなし。


 で、そのまま皇王様との謁見にしゃれこもうとしていたら、横からロザリアさんが


「陛下に報告とご準備していただくのに多少の時間が出来る。その間に、ツガナシ殿とシグナート殿には風呂と着替えをしていただきたい」

「「…………は?」」


 応接室に通される事無く、ロザリアさんが近くに居たメイドさんに声を掛け、そのままお風呂場まで連行されてしまった。

 そこにあったのは、地球の銭湯や旅館並みに広く造られた脱衣場と、それ以上の広さで設計された風呂場。

 そして、いつ連絡したのか分からないが、そこに居並ぶ五人の美人メイドさん達。


「それでは、コレよりタクト・ツガナシ様のお身体を洗わせていただきます。総員、取り掛かりなさい」

「「「「はい!」」」」

「え、ちょ、ま……………アアアアァァァ〜」


 まるで女性のような悲鳴を上げさせられながら、最後までされるがままな俺だった。

 服を手早く脱がされ、腰にタオルを知らぬ間に巻かれ、風呂場に連れ込まれた。

 確かにさっきまで闘っていたけど、ここまで強引にしなくても良いのではないかと考える。

 だが、今の俺にはそれ以上に気にしなくてはいけない事があった。


「ち、ちょっと待ってください!? まさか、()()ですか!!」


 流石は本職のメイドさん達だ。流れ作業の様に頭、背中、腕、足といった部位を洗われ、残るは俺の身体の前面のみ。


「勿論、そちらも洗わせていただきます」


 などと当然のように言ってくるので、せめて男として少しくらいの尊厳は死守したいと思い、メイドさん達をまとめて気絶させ、手早く洗ってそそくさと浴室を脱出する。


 勿論、気絶させたメイドさん達を起こして、異能でちょちょっと記憶の改竄をして。


 脱衣場には俺が着ていた服がなく、替わりに全身を拭くためのタオルと下着、そして―――地球に居た頃は着る機会が無かったスーツに似た上下一式のものだけが置かれていた。


「あの、これは」

「そちらは、こちらからの貸し出し用の貴人服一式でございます」

「貸し出し用の何てあるんですね」

「貴族であれば、その様な物は必要なく、自分で用意したものをお召しになりますが、稀に功績を称えた冒険者やこのような貴人服を持っていない人に限り貸し出すのです」

「そうですか」


 先ずは白Yシャツの様なものに袖を通す。生地が良いのか、肌触りと着心地は白Yシャツとそう変わらない様に思えた。サイズもぴったりだし。

 次に上着とスラックスの様なズボン。こちらは黒を基調にし、様々な箇所に美しい色彩を出すための工夫をされている。


 これを着るのか、と少し躊躇われるがこのままの格好で謁見する事はできないので仕方なく袖を通す。


 俺は壁に立て掛けられていた姿見の鏡を覗き、自分の姿でおかしなところは無いかを確認する。


「襟は立っていない。袖も大丈夫。裾と丈も問題なし」


 パッと見ただけなら問題はない。

 問題はないが、ただ俺が貴族が着るような服を着ている事には違和感しかない。

 スーツさえ着たことのない俺では、この服に着させられている感が半端無く感じる。

 ある程度スーツを着慣れているのならなんともないのだろうが。

 鏡に写る自分の姿に渋い顔をする。


「なかなかお似合いですね」

「えっと、ありがとうございます」


 俺の後ろに立って、鏡に写り込んできたメイドさんに話し掛けられる。


「それでは、そろそろ応接室に向かいましょう。シグナート様の方も準備が出来ている事でしょうから」

「わ、分かった」


 俺はメイドさんに先導されて応接室に入るとドレスに着飾られたエルシャと来たときのまんまの格好のエレーナさん達に出迎えられ、俺とエルシャの姿を審査する品評会みたいな場になった。



      〜・・・〜      〜・・・〜



 レウルさん達にああでもない、こうでもない、貴人服を着るならこうした方が良い、ああしない方が良いなどと言う高説を貰いながら待っていると、俺達をここまで連れてきたロザリアさんがやって来た。


「陛下のご準備の方が整いましたので、案内いたします」




 そうして、案内された先の冒頭に戻ります。




「今回は、私の呼び出しに応え、良く来てくれた。私がこの国の皇王ギリア・ルア・レギスト・ハシュバルだ。こっちが皇妃のメレイア・ルア・レギスト・ハシュバルだ。その横に立つのが私の子供達、ベリアル・ルア・レギスト・ハシュバル、カユナ・ルア・レギスト・ハシュバルだ」

「こんにちは。わたくしがメレイアよ。この度はアルベンの街から来てくださり、ありがとうございます」


 皇王様の横に座る皇妃様から労いの言葉が掛けられる。


「とんでもございません。この度は、私達はグランドマスターに今回のスタンピードの顛末を報告するためにこの皇都に赴いたしだいで、余計な時間を取らせる事がなかった事は私達としても幸いでした」


 俺は咄嗟に余所行きな言葉使いになってしまったが、この際仕方がないし、これが一番問題が無いだろうと考えて、続ける。


「それで、この度はこの冒険者のタクト・ツガナシをお呼びになられたのはどのようなご用件でしたのでしょうか」


 緊張する俺の代わりにレウルさんが問答してくれる。

 それは俺も気になっていたのだ。俺がこの国の皇王様に呼び出される案件は間違いなくアルベンに関することだ。俺が他に関わりを持った街は無く、村なら幾つか回ったが、呼び出しを受ける程ではなかった筈だ(立ち寄ったことがあるのは訓練時代の時だが)。

 だからこそ、やはり思い浮かぶのがアルベン関連。あそこでなら、幾つかの厄介事に首を突っ込んだことはあるから。


「うむ、今回そこの冒険者。確か、タクト・ツガナシだったか。その者を呼び出したのは我が国の汚点と言っても良いことをしでかした馬鹿者に関してだ」


 最初は何に関してだったかと頭を傾げ、皇王様の台詞に繋がる厄介事を探す。

 そして、


「…………………………あ」


 思い出した。

 アルベンのギルドで受けた依頼で孤児院にちょっかいを出していた闇組織とそれに関与していた貴族をぶっ飛ばした件。

 それ以外に国の『汚点』、『馬鹿者』この二つの単語から連想するものは無かった。


「え〜と、もしかしなくても、ベン・リンガルト子爵の事でしょうか?」


 俺がそう問うと、皇王様はニヤリと笑った。


「やはりそうであったか。その通り、そのリンガルト子爵が自分を捕らえた者について語っていたのだ。話の内容は荒唐無稽なものでな、あらゆる属性魔術と見たことの無い剣術で自分が雇った私兵達が薙ぎ払われたとな」


 エレーナさんとレウルさんは頭を下げながら視線だけを向けてくる。

 俺とエルシャは気付かないふりをして何とか逃れようとする。

 二人から掛かる無言の圧力。言葉にしなくても、「どういう事だ」と言っているのが分かった。

 エルシャは、可哀想なくらいの冷や汗をかいている。

 しかし俺達は知らんぷりを決め込む。

 そして、皇王様にもとぼけながら聞き返す。


「何の事でしょうか? 確かに私は魔術も剣術も使えますが、その様な事をしでかした覚えはありません」


 そらとぼけながら言ってみるが、皇王様はニヤニヤしながら、まるで面白そうな玩具を見つけた様な表情をしていた。しかし、それはけして悪意に満ちたものではなく、本当に面白い者を見ているかのようだった。


「そうかそうか。身に覚えはないか。なら、あの者に聞いてみるか。のうロザリアよ、ソナタはこの者のランクアップ試験を担当したのであったな」

「はっ。その通りでございます」

「その時のこの者は、どうであった」


 それはまるで、自分は聞いて知っているが、周りの者は知らない事に優越感に浸る子供の様に感じられた。

 何も知らない者達に、自分が知っている面白いことをひけらかそうとしているかのようだった。


「こちらのタクト・ツガナシ殿は、『蒼燐騎士団』団長であるこのワタクシ、ロザリア・グロースハックを全力どころか、それこそ本気を出さずに一蹴して見せた実力者です。お恥ずかしいことに、それに対してワタクシは本気を出していたしだいであり、ベン・リンガルト子爵が雇っていた私兵では、間違いなく力不足でしょう」


 言い終えたロザリアさんは、発言の為に他より一、二歩前に出て居たので、そそくさと元の場所に戻った。

 ロザリアさんの発言内容を知らなかった貴族達はあからさまにざわつき出した。

 自分達の国が擁する騎士団の一つを束ねる騎士団長が敗れたのだから。

 そのさまを皇王ギリア様は楽しそうに見ていた。皇妃メレイア様は、あらあらと夫に呆れの視線を向け、二人の子供のベリアルとカユナは俺に驚愕と尊敬の視線を向ける。


(どうしたら良いんだ、これ)


 途方に暮れていると、俺に事情の説明を催促していたエレーナさんが、場を調えようと発言しようとしていたら、全く別の所から声が掛かった。


「陛下、発言をお許しください」

「うむ、どうした。サーリム伯爵」

「先程のロザリア騎士団長の発言は誠だったのでしょうか? わたしにはにわかに信じがたい。騎士団長とはこの国を守護する騎士達を束ねる者。その実力も折り紙つき。そんな彼女が本気を出し、それでも一蹴するなど、流石に信じがたい」


 サーリム伯爵と呼ばれた人物の発言に周りの貴族達が少なからず冷静さを取り戻してきた。


「ロザリアよ、サーリム伯爵の疑問だが、どうだ?」

「はっ。ワタクシの発言に嘘はありません」


 堂々とした態度で言い切るロザリアさん。


「ふっ、まぁ、私はロザリアからの報告を虚偽だなどと考えてはおらん。だが、例え私兵を倒せても騎士団長のお前が負けたということが私も気になるのでな」


 皇王様はわざとらしく考えるそぶりをして、ニヤリと笑う。


「であるなら、ロザリアの言葉を信じて他の騎士団長共に戦ってはもらえぬか」


 皇王様の言葉に、貴族達がにわかにまたざわつき出した。


 その対象である俺は頭を抱えていた。


(どうしてそうなる!?)


 あり得ない流れだ。

 孤児院の子供達を誘拐した事に関してかと思ったら、まさかまさかのこの流れ。


(あり得ないだろう。何、この皇王様はバトルジャンキーなの? 野次馬なの?)


 どうやって切り抜けようか悩んでいると、どうやらタイムオーバーになってしまったようだ。


「それで、タクトよ。どうだ? 受けてはくれぬか?」


 皇王様はこの国の頂点。それに反論できるのは限られる。

 単なる小市民では逆立ちしてもそんなことは出来ない。

 なら、答えは決まっている。


「わ、分かりました」

 

 これは、ハイかyesしかない問いなのだから。



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