プロローグ 〜どうして、こうなった〜
どうして、こうなった。
それが今の俺の内心を表すに最も合っている一言だろう。
それだけ、今の俺の現状は理解不能で、頭を抱えて現実逃避をしたい程だった。
現在俺が居るのは、俺が日本で通っていた学校の体育館がスッポリ入ってしまいそうな程に広々としている大広間だった。
至る所に宝飾品で飾られ、それだけで絶大な権力を所有している事がうかがい知れる。
その室内を横断するかのように入り口の扉から真っ直ぐに続くレッドカーペット。
両脇の壁側に等間隔に建てられた柱と、その前に立つ何人ものきらびやかな衣服を着飾った人達。
その後方と入り口に控える様に立つこれまた立派な甲冑に包まれた兵士達。
そして最後になるが、俺の足元を通るレッドカーペットの先に居る人物。
その人物は、豪奢な椅子にこれまた周りに居る人達とはレベルの違う衣装を着ている髭を綺麗に整え、美しいドレスにコーディネートされた一人の女性と一人の少女、上質なきらびやかな衣服を着た青年を側に控えさせて、ナイスミドルなおじさんが座っている。
何を隠そう、今俺が居るのはこの『ハシュバル皇国』の皇都『グリンザリア』の西に建つ白亜の城『セルトア城』の中の謁見の間で、この国の皇王ギリア・ルア・レギスト・ハシュバルと貴族達に謁見していた。
何故、こうなった。
本来であれば、今日のこの時間は皇都のギルド本部に出向していて、八つある冒険者ギルド本部の八人居るグランドマスターの一人と会って、俺が行った事の聞き取りをして宿で休むかこの都市を観て回る予定だったが…………。
俺はチラッと横を見る。
そこには、青い顔をしている俺のパーティーメンバーのエルシャと、俺達と一緒に皇都まで同行してきたエレーナさん。そして、冒険者ギルドを統括している俺が会う予定(さっきまで会って話していた)のグランドマスターの一人であるレウル・ギーンガル。
この二人ならこの場に居ても良いかもしれない。しかし、俺達はあまりにも場違いだ。
衣服も城から貸し出してもらっている物を着ているが、着せられている感が半端ない。
俺はため息をつき、この場に来る切っ掛けになった出来事を思い出す。




