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最強幻想使いの異世界魔術学園  作者: 十織ミト
第1章
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第30話 〜ランク昇格試験〜

 今日俺達が受けたのは街の中を流れる下水道に住み着いた魔物ポルターマウスの討伐だ。

 今から三日前、下水道の修理と不備がある場所の確認をするの為に作業をしていたところ、突然今までは確認されていなかった魔物が現れ、作業員を襲ったとのこと。早急に討伐してもらいたいらしい。

 俺達は依頼を受注後すぐに下水道に繋がる入り口が在るらしい街の中央にある建物に向かう。

 その前には、衛兵が立ち、下水道からの魔物の流出を監視していた。

 衛兵達が自分達が監視している建物に俺達が向かって来るのを見つける。


「何だ、お前たちは」

「俺達は冒険者ギルドから依頼を受けた冒険者だ」

「これが依頼書とギルドカードです」


 エルシャが持ってきていた依頼書と俺達のギルドカードを見せる。

 依頼書とギルドカードが本物であるのを確認した衛兵は俺たちを中に通してくれた。


「これが入り口か。そんじゃ、ちゃっちゃっと終わらせるか」

「そうですね。でもまさか、最後に受けるのが下水道に現れた魔物退治何て」

「何だ、エルシャ。嫌なのか」


 凄く嫌そうな表情で愚痴るエルシャに訪ねる。


「それはそうですよ。だって下水道って凄い匂いがするじゃないですか」

「何当たり前な事を言ってるんだ。上下水道は人間が生活するなかで無くては成らない設備だ。なら、そこにに住み着いた魔物が居るなら退治するのは当然だ」

「う〜〜〜」


 未だに渋るエルシャを引きずる様にして俺は、下水道に向かって歩を進める。



      〜・・・〜      〜・・・〜



「【浄化之矢ピュリフィケーション・アロー】」

「ギュアアアアアアァァァッ」


 俺達は下水道に入って、【地動探査(アース・ソナー)】で感知したネズミの魔物であるポルターマウスを片っ端から魔術で吹き飛ばし、矢で貫き討伐していく。それでも何匹かは難を逃れ、俺達に向かって襲いかかってくるが、それは剣で対処する。


「そっちはどうだ、エルシャ」

「【火炎弾(ファイア・バレット)】。こっちは何とか終わりました」


 エルシャの方も襲い来るポルターマウスに魔術で応戦しながら答える。


「それでも気を付けてくれよ。こんなところに住み着いていたんだから、どんな病気を持っているか分かったもんじゃない」

「はい。にしても、タクトさんの魔術は本当にバリエーションがありますね。全属性を持っているのは聞いていましたが、まさか、下水道で一番問題なあの匂いを感じない様に出来るなんて」


 そう、俺達は現在、下水道に入れば必ずあり、俺達だけで無くここで作業する人達に不快感を与え気にせずには居られないあの異臭激臭を気にする事無く探索に勤しむ事が出来ている。

 その理由が、俺のオリジナル魔術【断空之球渦(エアーズ・スフィア)】だ。この【断空之球渦】は自分の周りの空気を一定の距離でその周りの空気から断絶させる魔術で、常に新鮮な空気を確保し続け、この魔術一つあれば、例え火の中、水の中、土の中だろうと呼吸を保つ事が出来る。


「言ってみれば、この扱い方は俺にとっては副次的なものだ。本来は、探索が困難な場所でも問題なく行動出来る様にと考えて作った魔術だがらな」

「それでも、私的には凄く助かってますよ」

「俺としても、ここの匂いはあまり好ましくは無いからな。それが例え、俺達の生活から出ている物だとしても」


 俺はぼやきながら、手に持つ剣(神剣では無く、魔術で作った剣)を地面に突き刺し、【地動探査】を発動させる。


「後、数匹だな。…………………ん? 何か、デカイ反応が二つ。ああ、成る程、コイツらがポルターマウス達の親か」

「え、親ですか?」

「ああ、大きさ的には他よりデカイから、二メトス位かな」


 ポルターマウスは約一メトス程の大きなネズミで、普通のネズミと同じで繁殖力が強い。その親ともなれば、沢山の子供を産む事が出来る様にさらに大きな身体をしていることだろう。


「方角的には、あっちか」


 俺達は反応があった方向に向かうため、反対の岸に跳び移らなくてはいけない。俺は問題なく行けるが、エルシャはちょっと不安かな。


「エルシャ、次は反対の岸の先に居る奴等で最後だが、行けるか?」

「当然です」


 エルシャを伴ない俺達は対岸に跳び移り、残りのポルターマウスの討伐に向かう。



      〜・・・〜      〜・・・〜



「これで、この依頼は完了となります。お疲れ様でした」


 俺達はポルターマウスの討伐(駆除)依頼を終え、ギルドでその完了報告をしていた。


「こちらが依頼の報酬となります」

「ありがとう」

「それと、こちらを」


 報酬を受け取ると、何時もの様に俺達の対応をしてくれているレーナさんが受付カウンターの下から二枚の紙を取り出し、渡してくる。

 そこには、


「『C』ランク試験受付受理書」

「はい。この度の依頼達成により、タクトさんとエルシャちゃんの二人にこれを渡す様にとギルドマスターからのお達しが来ましたので」

「ああ、ありがとう」


 前回の報告の際に、俺は少し(俺からしたら)だけ脅しを含めた交渉をし、俺達のギルドランクをすぐに上げられる様に俺達の現ランクで重要な依頼を優先して回してくれと頼んでいたのだ。


「それで、これは何時受けられるんだ?」

「それを今出していただけるのでしたら、明後日に行われます」

「試験内容は?」

「現『C』ランク冒険者との対人戦です」


 対人戦、それは主にその『C』ランクから出され始める盗賊の討伐や護衛の依頼を想定してのものだ。

 それでも、人の実力にはピンからキリまであるので、どうなるかは分からない。

 が、俺とエルシャは間違いなく合格するのは分かりきっている。

 俺の力は言わずもがなだが、エルシャに関しては俺が鍛えた事によって、その実力は冒険者ランクで言うところの『B』に届くんじゃないかと思える位の実力は付いたと思う。


「なら、俺らは間違いなく受かるな」

「ちょっと、タクトさん。あまりそんな事は言わないでくださいよ。この試験が受からなくて未だに『D』ランクのままだって言う人だって居るんですから」

「確かに、少しだけ軽率だったかな」

「それにですね、今の発言をその試験に受からなかった人や、受けられない人が聞いたら、間違いなくイチャモンを付けられますよ」


 俺からすれば、そんな事をするのは自分に実力が無いのを自分から公表しているようなものだがな。


「まあ、絡んでくるなら、片っ端から潰していくだけさ」


 事実、俺はそれが出来るし、その過程でエルシャや俺達がお世話になった人達に危害が及ぶなら、そいつらの心に恐怖を刻み付けることも意とはない位に潰すことは確実だ。


「それでは、試験には参加という事でよろしいですね」

「ああ」

「はい」



      〜・・・〜      〜・・・〜



 試験の受付をした翌日は休養日として、各々がゆっくり休める時間にしたり、用事を済ませたりする事にした。

 そして『C』ランク試験当日。

 俺達は試験会場である冒険者ギルドに併設されている練技場(れんぎじょう)にやって来ていた。


「全部で十三人か」

「ですね。時間までまだ少しありますけど、もう既に集まっている人も居るんですね」


 練技場には既に試験資格を持っていると思われる冒険者が十三人居て、俺達を入れれば十五人居ることになる。

 俺達はそんな彼等から少し離れた所で立っていると、既に居た冒険者達の中から二人の男が俺達の所にやって来た。


「おいおい、何だコイツら。今日はこの練技場はオレたち『C』ランク試験の受験者しか入れないんじゃないのかよ?」

「それで合っているハズだ。つまりは、彼らもその受験者なのだろう」

「はっ、こんなガキ共がか?」


 いきなりのイチャモンに少しだけ気分を害された俺は、努めて平静を装って話す。


「俺達に何か用ですか?」

「何、こんな所に子供が迷い混んだのかと思って声をかけたのさ」

「そうですか」


 俺と相対しているのは、片やどこにでも居そうな軟派男と、片や現実主義そうな堅物男。

 あまりにも正反対な見た目なので、もし彼等がパーティーならちょっと意外だ。

 しかも、俺達との実力差を気付く事もなく、人を見た目だけで判断してくるので、呆れもする。


「なら、問題ありませんね。俺達は正当な手順で歴とした資格を得た受験者ですから」

「へぇ」


 チャラ男が俺達に向けてうろんげな視線を向けてくる。


「なら、()()()()の実力なんだろうな」

「ええ。そうですね」


 俺とチャラ男との間で、静かな言葉での戦闘が行われていると、練技場の入り口からギルド職員と三人の冒険者が入って来た。


「おい、セズ。試験官たちが来たみたいだ。そろそろ行くぞ」

「あいよ」


 どうやら彼等はパーティーメンバーのようだ。

 突っ掛かってくるチャラ男と、それを止める真面目男って感じかな。

 そんな訳で、彼等は俺達から離れてもとの場所に戻って行くのを眺めていると、横で俺達の会話を聞いていたエルシャが不快感を露にした様な表情をしていた。


「何なんですか、あの人。勝手な言い掛かりをしてきたと思ったら、勝手に話を切り上げるし」

「あんまり気にするな。あんなのは、自分の立ち位置ばかりを気にするどこにでも居る小者(こもの)だよ。それより、どうやら試験官達が来たようだ」


 入り口から入って来たギルド職員と冒険者達は、集まっている受験者の冒険者達の前に立ち、一人ずつ受験者を確認していく。


「それでは、全員居るようなので、これより『C』ランク昇格試験を行いたいと思います。今回の『C』ランク昇格試験の試験官としてこちらの『C』ランク冒険者パーティーの『三連聖(グランザラス)』の方々に協力していただきます」


 職員がそう説明すると、その横にたっていた冒険者達―――『三連聖』の人達が前に出てくる。


「今日ここに居る受験者の中で俺達を知らない奴、知っている奴が居るだろうからはじめましてと言っておこう。俺の名前はキース・グラムハルト。この『三連聖』のリーダーをしている」


 パーティーリーダーの男性――――キースが最初に自己紹介し、続いて他のメンバーも紹介する。


「わたしはヘザー・マルグレン。パーティーの立ち位置的には敵の撹乱や中距離からの支援が主ね」

「僕はクシュナ・メレディス。見ての通り、魔術師だ」


 俺達の試験官になるのは三人の紹介が終わると、職員の人が試験内容を教えてくる。


「今回の試験は、こちらの三人の内の誰かと一対一の対人戦となります。制限時間は十分。その間に、相手を戦闘不能にするか、降参するかによって結果を決めます。ギルド側からの昇格条件は、最低でも七分は抵抗して下さい。最高であれば、試験官の彼等を倒していただいて構いません。その場合は文句無しの合格です。その他であれば、彼等試験官をする『三連聖』の方々がこの人はという人の合否を決めます」


 その内容を聞いて、俺は「何とも、まあ」と思ってしまう。

 その試験では、間違いなく俺は彼等を倒して合格できる。エルシャも、最高で二人を相手出来るくらいには鍛えているので、そう易々とはやられはしない。


「それでは、今回の受験者は全部で十五人ですので、彼等には一人五人相手していただく事になりますので、一人が終わり次第、次の対戦まで三十分の休憩を挟みます」


 職員の人がルール説明をし、俺達は指名された順に対戦する相手である冒険者の前に立つ。

 俺は『三連聖』のリーダーのキースに、エルシャはクシュナが相対する。


「それでは、これより試験を開始します。まずは、キースさん対アラム・グレンセン。ヘザーさん対ガイ・サイル。クシュナさん対セイ・コリアン」


 こうして、俺達のランクアップ試験が始まった。



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