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最強幻想使いの異世界魔術学園  作者: 十織ミト
第1章
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第27話 〜ゴブリン討伐 その3〜

 ゴブリン討伐に向けて村を出てから六日が経っていた。

 もし、これを聞いた者が居るのなら、何故そんなに時間が掛かったのかと聞いてくる事だろう。

 ゴブリンの探索を怠っていたのではないかと言われても仕方の無い時間なのだから。

 しかし、言い訳をさせてくれるのならそれは正しくもあり、間違ってもいる。

 正確には、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 それを聞いた者が居たのなら、どういうことと聞いてくる事だろう。

 エルシャを驚かせたオリジナル魔術【境界空間(アストラル・ルーム)】を作った場所の『狭間』は時間の流れが外側、つまりは現世とは全く別の流れをしていることから、その様な事になっているのだ。

 実際はこの境界、もしくは狭間には時間の流れが存在しないらしいんだが、そこは俺の異能でちょちょっと弄くるだけで時間の流れが俺の思いのまま。

 てなわけで、ここでは今までまともに取っていなかった休暇を取れる様にと六日間(こっちでの一週間)を用意し、英気を養いながら合間を縫って訓練を行っている。

 そうして、今も俺とエルシャは向かい合って木刀を構えていた。


「何時でも良いぞ」

「…………………す〜、は〜…………いきますっ」


 合図はなく、エルシャから斬りかかり俺がそれを捌き、隙を見ては時折返しの刃で切り返す。

 上段からの切り下ろし、下段からの切り上げ、左斜め上からの切り下ろし、切り上げ、突き、と俺が教えた基本的な剣の振り方をしてくるが、俺はエルシャの剣の横腹を俺の持つ木刀で打ったり流したりしてかわし続ける。

 一つ一つの剣の振り方はまだまだ未熟。まだ少し、剣に振られている印象を受けるが最初の頃から比べれば、遥かにマシにはなってはいる。


「はっ………やっ………せえい!」


 エルシャは何度も切り結んで来るが、俺に対する決定打になることがなく、時間だけが過ぎ去っていく。


「そろそろ、休憩にするか」

「いえ、……ハア、ハア………まだできます」


 息切れをおこしながらも続行を願うエルシャだが、俺としてはこのまま続けても疲れが溜まる一方だと思ったので、強制的に休憩に入れるために強烈な一撃を与える。


「そんなに息切れをしていながら、何を言ってんだか」

「…………ハア、ハア………実際、まだ身体は動きます。ですから、続きをお願いします」

「…………はあ。なら、次の俺の一撃を防ぐか、俺に一撃を入れられたなら休憩にする。良いな」

「……………………はい」


 弓を引くかの如く突きの構えを取り、切っ先の一点に意識を集中し――――――放つ。


「……………ふっ」


 津我無流剣術:無纏 (さん)ノ型 『瞬天』


 ガツンッッ!

 

 と、木刀同士がぶつかり合い、一方的にエルシャの持つ木刀だけが吹き飛ばされた。


「一本だ。ほら、約束通りに休憩にするぞ」

「……………はい」


 エルシャはシュンとへこみ、不承不承と頷くと、突然膝から崩れ落ちた。

 咄嗟に近寄り、エルシャの身体を確認すると自分でも気付かないうちに疲労が溜まっていたのか、身体からは緊張から力でいた力が抜けていた。


「ほれ見たことか、自分でも気付かないうちに疲労が溜まっていたんだよ」

「う〜〜〜」


 唸りながら、悔しそうな、不甲斐ない様な表情で居るエルシャ。

 この空間では外敵が居ないからこのまま寝かせてやっても良いんだが、ここは一応とは言え外だ。なので、ここで寝泊まりしていた家に抱き抱えて連れていく。


「ち、ちょっと待ってください! タクトさんっ、この格好は流石に恥ずかしいです!」


 エルシャの今の格好は俗に言う“お姫様抱っこ”。

 誰も居ないからとは言え、恥ずかしいものは恥ずかしいらしく、断固拒否しようとしているが、俺は面倒だった為そのままの態勢で連れていく。


 家に着くまでの間と、その後も少しの間顔を赤くして恨みがましげな視線を俺に向けてきた。


 夕食時になり、俺達は向かい合ってご飯を食べていた。今日の料理はボロネーゼとサラダ、そして食後のルーリャ(カフェ・オレの様なもの)だ。


「明日、ここを出て村の依頼を受ける」

「ああ、そういえばゴブリンの討伐の依頼を受けていたんでしたよね、私達」

「まさか、忘れていたのか?」

「……………え? そ、そんな訳無いじゃないですか」


 どうやら忘れていたらしい。妙な間があったことからほぼ確実だろう。

 一つため息を突き、明日の予定(向こうでは一日も経っていない)を確認し、本格的にゴブリン探索をする事に決まった。



      〜・・・〜      〜・・・〜



境界空間(アストラル・ルーム)】から出た俺達は、既に日が登り白み出した森に戻って来た。


「う〜ん。何だか、こっちに来るのが久しぶりな気がしますね」

「まあな。時間の流れがあっちの方が速いからな。そう思うのも仕方ないだろう」

「本当に不思議ですよね、その魔術。一体どんな原理で発動しているんですか?」

「そうさな……………………まあ、もうちっと強くなったら教えてやっても良いんだが、多分エルシャには使えないぞ」

「それでも、知ってて損はないと思うんです」

「はははっ、そんじゃあ、そん時が来たら教えてやるよ」


 俺達は一通り笑いあって村とは逆方向、森の奥に向けて歩き出した。


「それにしても、静かですね」

「ああ、既に朝なのに森に住み着いているだろう動物の気配が少なすぎる」


 俺達はゴブリン探しながら森の中を散策していると、違和感が襲ってきた。それは、余りにも静かで、薄すぎる気配。

 この森に入った時にも感じたが、その時は夜だったから寝静まっているのかと思ったが、朝になってもそれは変わらない事に多少の不気味さを感じている。

 動物や魔物であれば、確かに気配を殺すやり方を知っているだろうが、俺はそれを見破る方法を知っている為にそれは意味をなさない。

 だからこそ、不自然で不気味さを感じずにはいられない。


「一体、どうなって………………………ん?」


 その時、森の奥―――――俺達が向かっている方向に複数のまとまった気配を感知した。


「どうしたんですか?」

「どうやら、この奥に固まっているみたいだな」


 俺達は早足でその気配のする方へ向かい、そこで見たものは――――――


「おいおい、これは」

「何…………これ」


 そこは少し高台になっている場所で、そこから気配のした方へ目を向けると、地面を覆い尽くされてしまいそうな程の膨大な数の魔物、魔物、魔物。

 見渡す限りの魔物の大群。

 軽く見ただけでも千や二千では利かない数。魔物の種類も、ゴブリン、オーク、グリーンウルフ、etc


「タクトさん、これって」

「ああ、間違いない」


『スタンピード』


 魔物の数が爆発的に増える事で起きる現象。一種類だけの時もあれば、複数の時もある。その数は歴史上で確認されたもので最大数万〜数十万以上の規模にもなる。

 しかし、それを含めてもこの数は凄まじかった。


「これは、一度ギルドに戻って報告すべきだな」

「はい」


 俺達は急ぎ、クルリ村とアルベンのギルドに報告に戻る為に走り出した。 

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