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最強幻想使いの異世界魔術学園  作者: 十織ミト
第1章
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第13話 〜街に向けて〜

 俺は一瞬だけ、魔力強化を少しだけ強め、自分の背丈以上の魔物を弾き飛ばし、その衝撃で魔物の爪が無惨にも半ばから折れていた。

 俺は相手の出方を油断無く剣を構えて窺う。

 例え、片方の爪が折れていても、もう片方の爪と牙、その身は健在なのだ。


「さっさと終わらせて、街に向かうとするか」


 俺は剣を基本の構えである中段に構え、まずは小手調べと軽く突っ込み斬りかかる。

 

「ガアアアァァァァアァァッ!」


 咆哮を上げながら立ち上がり、残った無事な爪がある方で襲いかかるが、俺は特に慌てること無く余裕で躱し、一太刀浴びせる。

 すると、


「…………は?」


 魔物は、俺が放った切り上げで右脇から左肩に掛けて切り裂かれ、息絶えていた。

 まさか、反撃を予想しての軽く放った切り上げのつもりが、まさかの一太刀で死んで仕舞うとは、放った本人である俺でさえ驚いた。

 この魔物は、シロナに教えて貰った魔物の種類と特徴を教えてもらう授業で教わったものの中にいた事を思い出す。


(確か、種類名は『緑森熊(フォレスト・ベアー)』だったか。森に生息している魔物の中では、結構上位だったはずだが)


 俺は不思議に思い、手元を見て、「………ああ」と、納得する。

 俺が今持っているのは、訓練時代に使っていた魔術で即席で作った剣では無く、アディーとゾルド、そしてシロナが心を込めて鍛えてくれた神剣なのだ。


「そりゃあ、一刀両断出来る訳だ。まあ、魔術で作った剣でも出来なくは無いが、まさかここまで鋭いとはな」


 斬った瞬間、相手を斬ったという感覚が無く、柔らかい物を斬ったかの如く手応えが無かった。


「これから先、俺って本気を出す機会があるのかな?」


 シロナ曰く、俺の力は常軌を逸して規格外なのだそうだ。

 異能を使えば、相手は俺に何をされ、自分に何が起こったのか気づく事無く死ぬ。

 魔術を使えば、その膨大な魔力に物を言わせた初級から上級、さらにはそれ以上の物から俺のオリジナルに至るまで行使する事での物量攻撃。

 そして、武器や武術を使えば臨機応変に戦う事が可能。

 総じて、まさに一騎当千、万夫不当、完全無欠とまさしく超人の如しと言いたいが、俺も人間だ。

 必ず、何処かしらに抜けはある。


「まあ、細かい事は後で良いか」


 俺は、考えていた事を脇に置き、まずは街に向かう事を優先しようとしたが、そこで女の子を助けたのを思います。振り返ると、女の子は離れていた位置から動いておらず、それどころか驚いた顔でこっちを見ていた。

 改めて良く見ると、女の子は凄く綺麗な美少女だった。

 腰まで届きそうな長い薄桃色の髪をそのままストレートにし、身体付きも女性的な柔らかさが有りながら、しなやかとして引き締まっている印象を与えてくる。それでいながら、出る所は出て、引っ込む所は引っ込んでいる。

 もう一度言おう。完全なる美少女だった。


「おい、大丈夫だったか?」

「………え? あ、はい。大丈夫です。助けていただいて、ありがとうございます」

「気にするな。単に、悲鳴が聞こえたから来ただけだ」


 実際そうだしな。


「そうはいきません。何か、お礼をさせてください」

「うーん。そうは言ってもな」


 俺が助けたときに思った通り、彼女は心根が優しそうだった。


「なら、この森を抜けた先にあるアルベンの街まで案内を頼めないか?」

「はい! 勿論です。そんなことで良いのなら、任せて下さい」


 女の子は俺にお願いされた事が嬉しかったのか、笑顔で了承してくれた。

 と、そこで俺は、女の子の名前をまだ聞いていなかった事に気付く。折角、街まで案内をしてくれるのだから、ここらで自己紹介でもしておくか。


「そういえば、まだ名乗ってなかったな。俺はタクト・ツガナシだ」

「これはご丁寧に。私の名前はエルシャです。エルシャ・シグナートです」


 これが、俺と長い付き合いになり、共に戦う懸け換えの無い仲間で、大切な間柄になる女性、エルシャとの出合いである。



     〜・・・〜      〜・・・〜



「そういえば、エルシャって何か理由があってこの森に居たのか?」

「はい。私は冒険者で、冒険者ギルドで受けた依頼を行っていたんです」


 やっぱり、冒険者や冒険者ギルドってのはあるのか。シロナの言ってた通りだな。


「って、ああっ!!」


 突然エルシャが大声を上げ、俺はビクッと震えて驚く。


「ど、どうしたんだよ」

「受けていた依頼の採取品が無くなってるんです!?」


 どうやら受けていた依頼の品を何処かに落としてしまったらしく、それに気付いて大声を出してしまったらしかった。


「依頼って、何を受けたんだ」

「えっと、傷薬やポーションの材料になる薬草の採取です」

「傷薬と言う事は、もしかして薬草って『レリス草』の事か?」

「はい、そうです。でも、どうしよう。現在位置が分からないと、採取を出来たとしても街に戻るのも難しくなりそうだし」


 相当お困りのようだ。だが勿論、解決策が無くもない。


「それなら、俺が群生地を知ってるから其処に行こうか」

「ほ、本当ですか! お願いします!」


 俺はエルシャを先導して、今いる場所から程近い所に生えている『レリス草』の群生地に向かう。『レリス草』は肥沃な土地であれば、大抵の場合はどこでも生えている。

 俺はこの森に一年という長いような、短いような時間を過ごしていた。魔術や武術の鍛練の合間に、時間に余裕がある時は森を散策し、ある程度は把握している。勿論、各種薬の原材料になる薬草等の植物の生息地も。

 それに今、俺達がいるのは本来俺が向かっていた方向から多少ズレて離れた場所にいた。魔力強化がかなりの練度まで上がっていた俺の森の探索範囲は広大だが、そればかりにかまけている場合でもなかったので、今の俺が知っている範囲は半分をいってるかいってないかと言った所だろう。

 だが、俺達にとっては運が良かった。丁度、今に場所は俺の探索範囲に含まれていた。

 なら当然、生えている場所も知っている。


「場所は、ここから少し離れた所にある俺が知っている限りでは数本しか無い巨木の根元にある筈だ」


 そして、俺が言った通りの場所には周りの他の木々を超える巨木が一本鎮座していた。その有り様は、この森を支える者、もしくは森の主のようにも感じられた。

 だが、今はそんな事を考えている場合ではない。俺は、目の前に広がる巨木の威容さに唖然とするエルシャを伴い『レリス草』の採取を始める。


「なあ、採るのってこの位で良いのか?」


 俺は自分が採った分をエルシャに見せる。


「そうですね。はい、その位で十分かと」

「そんじゃ、街に向かうとするか」

「はい」


 採取を終え、森を出ようとするがエルシャはこの森を別段熟知している訳では無く、現在地が全く分からないとの事で、ここも俺が森の外まで連れていく事になった。


「すみません。お手数をおかけして」

「構わないさ。ちゃんと、街まで案内をしてくれるんならな」

「それは当然します」


 数分、もしくは数十分程歩いただろうか。感覚的には一時間は歩いていない筈だから、もう少しで森を抜けられる筈。

 最初の戦闘以降、これと言った出来事も無く平和な道のりだった。


「はあー。やっと帰れる」

「ははは。まあ、いきなりの事だったからな。御愁傷様って訳だ」

「そうですね。でも、私が今こうして居られるのはタクトさんのお蔭です。ありがとうございます」


 エルシャは無事に森を抜けられた事に安堵し、俺を振り返ってお礼を言ってくる。


「構わないさ。こっちも、街まで案内してもらう訳だしな」

「はい。勿論やらせてもらいます」


 森を抜けた俺達は、エルシャの案内で街道を進みアルベンに向かう。途中、ラノベ小説何かである盗賊や何か面倒な事にも巻き込まれる事もなかったな。


「あっ! 見えてきました。あれが、私が拠点にしている街アルベンです」


 視線の先には、成形された石もしくはレンガで作られた立派な外壁。


「あれが、アルベンの街か。なかなかに立派だな」

「はい。立派なだけではなくて、かなり栄えていて居心地も良いんですよ」

「そうか。それは楽しみだ」








 


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