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01 序章。


ハロハロハローウィン!

Twitterのアンケートに参加ありがとうございました!

タイトル「悪役に気付いたのは私だけじゃない!」に決定です!


20170908



「君は君でいいんじゃないか」


 ある日。電車の中にいた同い年くらいの少年に、そう言われた瞬間、思い出した。

 この世界は生前プレイしていた『シャルルーン学園〜恋の魔法〜』というタイトルの乙女ゲームに酷似している。否、そのものだと思う。

 世界で一番大きな学園を誇るシャルルーン学園。

 王族や貴族と身分の高い者から、一般庶民まで通う。中には貴族が庶民と同等の扱いを受け、同じ一室で通うことを反対する意見もあるが、この学園は実力重視がモットー。貴族の文句も跳ね返すほどの権力を持っている。

 大きく分けると選択教科が二つ。魔法科、戦士科。

 一般教養だって、もちろん学ぶ。

 魔法はセンスと魔力で優秀さが決まる。庶民でも魔力を膨大に所有している者が、貴族を負かすことは度々あった。魔法科の中でも種類があって、ざっと分類すれば呪文・化学・生物と分けられる。魔法の職業だけを目指す者は、この科だけを選ぶ者も多い。

 戦士科は剣術や武術等、戦闘スキルを磨く場であって、こちらも実力重視。掛け持ちする生徒は少なくない。

 それぞれの科で優秀な成績を取れば、貧困な庶民も胸を張って卒業して、いい職につける。

 貴族でも、庶民でも、実力がものを言わせる世界なのだ。

 そういう設定の乙女ゲームだった。

 そんな世界に、私は紛れもなく生きている。

 そしてその乙女ゲームの中で、私はーー悪役ポジションだ。

 子爵令嬢、シェリエル・サリフレッド。それが私の名前。

 白金の長い髪はウェーブがついている。瞳は明るい青色。

 気が付けば、少年はいなくなってしまっていた。不思議なことにどんな容姿だったか、思い出せない。あまりにもインパクトの強い記憶が、蘇ったせいだろうか。何の話だったかも思い出せない。

 それでも、私がやることはわかっていた。

 もふもふの座席から、立ち上がる。芋虫のような生き物が電車そのもの。外部と寮と学園を結ぶ交通手段だ。この世界は中世風と現代風が混ざっている。街並みは中世風だけれど、服装は現代に近い。制服だって膝上スカートだ。

 私の目的地は、寮だ。

 降りれば、目の前には大きな豪邸に見える寮があった。全体的に純白。窓枠は金色で煌びやかだ。

 今日から、私はここで生活をする。

 他にも新入生がもふもふの電車から降りて、次々と寮を見上げては入っていく。

 私は入り口前に留まり、ポケットから折り紙を取り出す。これはお遊びようではなくて、立派な連絡手段だ。


「クラウドとアイリーンとジェイコブに、ここに来るよう知らせて」


 魔力を込めて折り紙に囁けば、折り紙は鶴に折られて、翼でバタバタと三羽が飛び去った。

 暫くして、折り紙の鶴が三人を連れてきてくれる。


「シェリエル。なんだ、呼び出して」


 クラウド・スターロン。私の幼馴染であり、伯爵子息。

 金髪と青い瞳の持ち主。整った顔立ちのこのクラウドは、乙女ゲームの攻略対象者だ。


「あたし、まだ荷解き終わってないんだけれどぉ。シェリー」


 アイリーン・シューベル。同じく幼馴染であり、男爵令嬢。

 水色の短いボブヘアーと明るい水色の瞳の持ち主。アイリーンは私と同じ悪役ポジションだ。


「何でしょう、シェリエル様」


 ジェイコブは、クラウドの従者。でも同じく幼馴染だ。

 褐色色の肌と黒い髪と瞳の持ち主。彼もまた、時には悪役ポジションだ。


「……単刀直入にはっきり言うわ」


 私は腕を組んで言い放った。


「私達、距離を置きましょう」

「……はぁ?」


 クラウドは、ポカーンと口を開ける。


「何を言い出すんだ。そんな交際もしていないのに、恋人同士に言いそうな台詞を何故……」

「考えたのよ……私達、距離を置いた方がいいと」

「だから何で恋人同士に言いそうな台詞なんだ」

「新しい交友関係も築いた方がいい時期よ。別れましょう」

「別れないぞ!? そもそも交際していないだろ!」

「お願い! 私と別れて!!」

「だから交際していないだろ!!」


 私がクラウドにしがみ付いて叫べば、周囲を気にしながらクラウドは私をあやす。ジェイコブも落ち着くように言い聞かせる。


「クラウド……シェリーのためを考えて……別れてあげて、ぶふふっ」


 アイリーンは乗ってきて、クラウドの肩に手を置くと泣くふりをしては吹き出す。


「悪ノリをするな、アイリーン! 一体どうしたんだ、シェリエル!」

「どうもしないわ。言った通り、新しい交友関係を築くためにも、距離を置きましょう」

「何故わざわざそんなことを言うんだ。オレ達が何かしたのか?」


 強いといえば、これからすることが原因で離れたいのだ。

 悪役は罰せられることが鉄則。悪役にならないために、離れたいのだ。主人公達と関わらずに、平和に過ごしたい。

 そのために、私は登場人物達から離れる。


「私達は友だちよ。それは変わらないわ。でも離れましょう」

「……よくわからないが、承諾しよう」


 クラウドは折れてくれた。私は微笑みを溢す。

 平和な学園生活の第一歩だ。

 何故なら私は、怠惰に過ごしたい。だって、私は前世は親が運転する車に乗っていたら、交通事故に遭って私だけが即死した。その時やっていたアプリゲームが、『シャルルーン学園〜恋の魔法〜』だ。

 なるべく平穏に過ごしたいと思うのは、当然とも言える。

 無駄な争いをして、学園生活を台無しにしたくないもの。



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