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1roomKitchen  作者: 猫缶
2/2

4年に1度なのに!

「ご飯あったかいうちに食べてよぅ」


「…うーん」


歯切れの悪い返事をしながら、頭の中でオンラインゲームって止めるタイミングが難しいよねと呟き、黒い枠組みのガラステーブルの真ん中に置かれた白皿に盛られた白いシチューに目を落とした。僕の彼女の得意料理だ。

黒いゲームコントローラーをテーブルに置き銀のスプーンに持ち替え無言で食べ始めた。



合コン当日の朝


「やばい×2全然寝れなかった」


頭の中で妄想が膨らみ遠足前の小学生みたいに、ソワソワして寝付けなかった。久々に女の子との食事会その名は合コン寝つけるわけがなかった。大学を卒業してからはまったく女子との接点がなくなり両親からもコンビニのバイトだったら地元でもできるんだしと言われ続け巡ってきた出会いのチャンス。

バイトが11時から17時で合コンの待ち合わせが駅前の居酒屋に19時。4時間睡眠しか出来なかった自分に気合を入れるべくシャワーを浴びて洗面所の鏡の前で久方ぶりに蓋を開けたワックスで合コン用のヘアーセットを40分かけて仕上げた。普段バイトに行くだけなので特にヘアーセットなんてするわけもなく、この行動からも浮かれているのがよくわかったが、自然とニヤけてしまう。普段からあまり服装にもこだわりがなくレパートリーも少ない中から爽やかな印象をイメージした服装をチョイス。下はジーパン上は白いパーカー意気揚々とバイトに向かった。


バイトの時間が迫っていたので走ったらいいのに折角のセットが乱れるのが嫌で早歩きでバイト先のコンビニに到着。

「ふるいくーん!遅刻だよ!」

タイムカードを押そうとした時店長に言われてタイムカードの時計を見たら4分過ぎていた。

「すみません。昨日あまり寝れなくて…」

店長が僕の言葉を遮るように

「えっどうしたの?髪型バッチリ決めちゃってぇ」


「そんな事ないですよぅ」


そんな事しかないのに遅刻してバツが悪いのもあり、仕事用のエプロンを手にしてバックヤードを急いで出て行った。

駅に隣接しているコンビニで働いて約3年、仕事内容は慣れたもので時間が過ぎるのを長く感じる日々を過ごしていた、特に今日は時計を何回も確認しては時間の進みが遅い事を痛感した。特に何事もなくあと30分でバイトが終わると思った矢先、店長から

「ふるいくーん、申し訳ないんだけど1時間延長してくれないかなぁ」


「えっ!!!」


「今日から夕方シフトになった大学生がくるはずだったんだけど急に来れなくなったって連絡がきてさぁ」


「マジすかぁ!」


「俺もちょうど1時間くらい出かける用事があって、お店をあけなきゃいけなくてさぁ」


「はぁっ」


「ねっ頼むよー今日用事あるの?」


「えっ、まぁ、ないわけじゃないですけどぉ」


今日合コンなんでなんて言えなかった。ここに来て4分の遅刻もジワジワと効いてきた。

待ち合わせの時間にも間に合いそうなので渋々承諾した。


「じゃあ頼むねぇ」


店長がお店を出て行った。なんで今日とゆう日に限ってと思い、それと同時に最近の若い奴はだらしないとやり場のない気持ちが込み上げてきた。

待ち合わせ40分前、1時間で戻ると言った店長が戻って来る様子もなく、時間と入口ばかり気にしていた。入口の自動ドアが開く音がするたびに身体が反応して顔を向けると店長ではなくお客さんで、焦る気持ちを抑えながら大雑把ないらっしゃいませを何回か繰り返していた。

待ち合わせ4分前、レジの列にエナジードリンクを片手にオフのコータローさんが並んでいた。なんとも言えない表情で接客している僕に。


「あれぇまだバイト中なの?」


不貞腐れ気味にレジ打ちしていた僕に声をかけた。バイトの延長理由と店長が戻ってこない事を簡潔かつ感情的に説明した。


「それは災難だなぁ、まぁ待ち合わせ場所もすぐ近くだし、終わったらすぐ来いよっー」


エナジードリンクを買ってコータローさんはお店から出て行った。

ほどなくして店長が帰ってきた。


「ごめんごめん、少し用事が長引いちゃってさぁ、ありがとう、もういいよあがってぇ」


小さくうなづき気持ちを切り替えてバックヤードでタイムカードを押して店を出ようとしたら店長が今日はお疲れ様とエナジードリンクを渡された。渡しながらのウィンクの意味がこの時はまったくわからなかったが、急いでいたのでお礼も漫ろに。

「お疲れ様でしたぁ!」

足早に合コンに向かった。

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