interlude 合わせ鏡
ふたたび、真っ暗な空間にいる。
また一休みかしら?
哀して愛されて、囚えて捕らえられて。
何だか頭がくらくらするわ。
「はい、お疲れ様。ちょっとは不安になってきたかい?」
不安? ……そうね。
不安と言うか、ちょっと不思議なことがあるんだけど。
「ん? どうしたの? もう止めたくなった? いいよいいよ、今すぐ願いを取り消してもらえば……」
――そうじゃなくて。
ねぇ、私、何だかここまでのこと、どこかで見たことがあるような気がするの。
「……えっと……そういうの、ほら。アレでしょ。デジャヴ?」
そういうのじゃないの。
「んー……何かほら、あったんじゃない? 似たようなことが」
あなたがそう言うなら、そうじゃないのね。
私の記憶違いじゃないのね。
お星さまはいつだって都合の悪いことを誤魔化すの。
「……ちょっと。何でそういうところで気付いちゃうの? もう……僕のせいでバレたとか、マジで黙っててよね」
誰に?
「……えーと、うーん……あ! じゃあ、次に行ってみようか!」
ちょっと待ちなさい。ほら、言ってみて。
さっきまでの色んな人生は、この先に生まれ変わった私のはずなのに。
どうして、私は今まで見た事をうっすらと覚えてるの?
まるで、過去に一度体験したみたいに――
「何だよ、もう自分で答えてるじゃない。分かってるのに、教える必要がある?」
……答えてる?
じゃあ、ここまでのことは、私が一度体験したことなのね?
デジャヴじゃなくて、本当に私は知ってるのね?
でも何で? だってこれは未来のことじゃないの?
お星さまは、私が死んだ後を見せてくれるって言ったじゃないの。
「あー……説明しづらいんだけど、君は折り返し地点なんだ。哀して愛されて、囚えて捕らえられて。どれもこれも全部ぜんぶ、君が、君を」
私が、私を。
「君が、君を愛して捕らえたんだ」
……そうなの?
どんなストーカーかと思ってたら、私を追い掛けているのは私なのね……。
「そう。今見てきた中に出てきた登場人物、全部、君」
全部。
全部ぜんぶ私。
私が、私を愛して。
私が、私を捕らえてる。
自分のことながら、何て閉じた世界なの。
……あの。ねぇ、まさか。
今、私と話してるお星さままで、私だなんて言わないわよね?
「うわっ!? ちょっと止めてくれよ、気持ち悪い。僕は君なんかじゃないよ」
……本当に?
「こんなことで嘘なんかつかないさ。嘘をつくのは好きじゃないんだ」
あら。だって今まで私を騙してたわ。
捕われてるのが私だ、なんて言って。
囚えてるのも私だってことを、黙ってたじゃない。
「黙ってるのと嘘をつくのは違うよ」
詭弁ね。
「いいや、これはレトリックってヤツさ。さあ、ちょっと予定外だったけど、これだけ聞いたら、さすがの君も願いを変えようと――」
――変えようとは思わないわ。
まだ先があるなら、早く連れてってちょうだい。
「……いつの時も、君は頑固なんだから。全く」