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5 Cool Beauty
扉を開けた瞬間に、ひんやりとした風が頬を撫でた。
一瞬で暑さを忘れる冷え切った空気に、ゆっくりと微笑んだ。
そっと扉の内側に足を踏み入れた俺は、カプセルに横たわる彼女を見下ろす。
純白のドレスを纏った身体。
俺の吐く息は白い。
凍り付くような冷たさで、極暑の炎天下を歩いてきた肉体が、汗もろともその場に固まりそうな気がする。
「……ハニー、起きてくれよ」
白い頬を撫でると、冷たい感触で手のひらがぴたりと頬に張り付きそうになった。
慌てて手を離して、そっとため息をつく。
彼女はぴくりとも動かない。
絶対零度の世界、君は目を覚まさない。
「ハニー、俺を置いて行かないでくれ……」
言い返してくれていい、恨み言を聞いてほしい。
魅力的なブルーアイズを開いて、つんと顎を上げて。
不死の病と分かったその時に、最先端の技術で冷凍睡眠に入った君を。
俺は、ずっと待っている。
君を目覚めさせることの出来るその時を。
……え? これ、えっと……この寝てる方で良いのよね?
「さあて、どっちが囚われてるんだろうね」