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米軍装備を欲しがる訳

「ありゃ、珍しいな」


「中井課長こそ、休日のこんな時間にどうして?」


「ここ資料一式は揃ってるからな、調べ事には最適だろ?そっちは?」


「近くまで来たんで、ついでに寄ってみたんですよ」


何かの用のついでだろう、鳴海は私服である。

終業時間を終えた後の誰も居ない陸自課の部屋に1人で居ることが好きな鳴海は少しだけ残念そうだ。


中井は本棚から一つの雑誌をとって、デスクに座って読み始める。


鳴海は中井のデスクの前まで歩き、デスクにある戦車の食玩を弄り始める。


「やっぱ米軍の装備は良いよなぁ〜……陸自(ウチ)にも入れてくんないかな……」


「中井課長、なんでそんなに米軍装備欲しがるんですか?」


中井は某ミリタリー雑誌を広げながら鳴海の質問に答える。


「何でってそりゃ……日本の個人装備のカスタム性が低いからだろ」


例えばアメリカなら、プレートキャリア(タクティカルベストと防弾ベストを合わせた様なもの)等の個人装備を自費で購入し、それにポーチ等をカスタム性して自分で使用する事も可能。

その証拠に、ミリフォトを見てみると、隊員達の装備は目的に合わせて自由にポーチを組んでいる事が多い。

同じ部隊の中で、違う種類のプレートキャリアやチェストリグを使用している人も実際にいる。


それに比べて、陸上自衛隊の個人装備は"部隊供与"という形になっており、決まった防弾チョッキしか使えない為、カスタム性が限定される。

自衛隊の訓練の様子などは通常公開されない為、現在はどうなっているかは不明である。


銃についても同じ事が言えるだろう。

最近は市街地戦等で効果を発揮する事が認められてきた為、89式自動小銃の機関部上部にマウントレイルを取り付け、ダットサイトを載せている隊員を見るのは多くなってきたが、それでも限定的だ。


アメリカでは特殊部隊から一般部隊に至るまで、照準器、フォアグリップ、タクティカルライト、バイポッドにレーザーサイトその他を、銃に取り付けられたレイルシステムに自由に取り付ける事が出来る。


銃一つ、個人装備一つをとっても、日本はイマイチ幅が狭く、拡張性が低いのが一部界隈で問題視されている。


「陸自の技術研究本部(技本)がやってる……先進軽量化小銃……だっけ?あれはまともなのが出来るといいなぁ」


「具体的に言うと?」


中井は少し腕を組み、考える。


「……最低でも、アメリカのM4A1並の拡張性は必要、作動方式は信頼性のあるガスピストン方式か良いな」


「なるほど……」


89式小銃の作動方式は、水に沈めようが泥水に漬けようが地面に埋めようが作動する頑丈さが評判の旧ソ連製AK47の作動方式と同じなのだ。

この流れは是非汲んで貰いたい。


「中井課長の自衛隊へ導入したい装備を導入するとどんなのになるんでしょうね……」


中井はそれに答えず、デスク上のA4用紙をとって書き込み始める。


数分後、「ほい」と鳴海にその紙を渡してきた。


そこにはこう書いてあった。


〜〜〜

・第1空挺団と特殊作戦群の個人装備自由化(現時点では不明)

・新型自動小銃の導入(出来ればFN SCAR)

・M249ミニミ軽機関銃のM249PIPの改修

・光学照準器装備自由化

・M240E4汎用機関銃の導入(言う事機関銃よりマシな物を)

・AH-1Wスーパーコブラ又はAH-64Eガーディアン・アパッチの導入


ミサイル護衛艦(イージス艦) 合計8〜12隻

・高性能防空護衛艦 合計12隻

・大型輸送艦(強襲揚陸艦)の導入

・SBUの個人装備自由化


・F-2A あと20機

・F-15Jの全機MJ化

・グローバルホークの導入

・国産ステルス戦闘機の開発予算

〜〜〜


「……予算足りませんよ、しかもこんな無茶な要求、島村統幕長と月夜野海幕長に殴られますよ」


「あくまで"出来たら良いのに"レベルの妄想でしか無いからな、俺のは空自のF-2生産が90機ちょいで止まったのはなぁ……せめて110は欲しかったな」


「しかもこれ、陸自の以外は殆ど検討されているものばっかりじゃないですか、イージス艦建造も強襲揚陸艦も、F-15もグローバルホークも進んでるはずですよ」


「政治家達がもっと柔軟な脳ミソしてりゃぁなぁ……今の野党なんて与党の足引っ張ってる様にしか見えないぞ」


「それは……まぁ、ノーコメントで……」


鳴海は紙を中井に突き返し、中井は積んでいた本に雑誌を重ねる。


と、不安定になっていた本がバサバサと床に落ちてしまった。


「っ……と、いかんいかん」


「もー!何やってるんですか⁉︎」


急いで本を片付け出す2人。

何冊かの本を拾うと_____最後の1冊で互いの手が触れ合う。


「「あっ……」」


「す、すまん」


「い、いえ。こちらこそ」


中井はさっと本を拾って片付ける。


「まぁその、何だ。色々付き合わせたお礼だ。昼飯でも一緒にどうだ?」


「え、あ、あの。良いんでしょうか?」


「あぁ、奢るよ」


「では、ご馳走になりますね」


2人は揃って部屋から出た。

なんだかんだで、今日の陸自課も平和です。

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