兼任
「課長、仕事持って来ました」
「おう、ありがとう。そこに置い…と……」
ドサッとデスクに書類を置く。
「……コレ全部陸の仕事?」
「全部は確認して無いですけど、仕事の割り振り上そうなってる筈ですよ」
「お、おう……」
プルルルル、プルルルル、プルルルル。
中井が仕事の多さに唖然としている時、内線が鳴った。迷わず受話器を取る。
ガチャ
「はいもしもしこちらライトミリタリー同盟陸上幕僚監部の中井ですが……ああ、統幕長」
統幕長の単語が出た瞬間、鳴海1曹がギョッとした。
「ええ、ええはい。たった今……えぇっ⁉︎自分がですか⁉︎この中に⁉︎……はい……はい……あ、本当ですか?分かりました。やってみます。失礼します」
受話器を置き、溜め息を吐いて背もたれに身体を預ける。
「と……統幕長から……ですか?」
「あぁ、そうだ」
「良く普通に話せますね……私には畏れ多くて無理ですよ」
中井は深刻に話し出す。
「何かな?陸自の担当の割り当てが一番少ないらしくってな……」
「これで少ないんですか⁉︎」
鳴海1曹は書類の山を見て驚きの声を上げた。
「いや……そうでなく、1番少ない陸自が米軍関係を担当してくれ、とさ」
「へ⁉︎」
「米軍関係の書類も混ざっているそうだ。あー……まぁ、頑張るか。自衛隊大好きだけど米軍と協力も必要だしね」
それに、と中井は続ける。
「在日米軍から日本語が通じる隊員が2名ほど派遣されてくるそうだ、米軍関係はその2人の協力の下、って感じかな」
「あ、そ、そうなんですか……」
はぁ……と鳴海1曹は深い溜め息を吐く。
「溜め息吐くと幸せ逃げるぞー」
「課長も吐いてたじゃ無いですかっ」
あ、でも。と鳴海1曹が何かに気づいた。
「……米軍と一緒に仕事出来るなんて、課長にとったら本望じゃ無いですか?」
「そうか……?」
ま、ポジティブに捉えねぇとな。と中井と鳴海1曹は仕事に手をつけ始めた。
「そう言えば、幕僚長方の作品読みました?」
「あぁ、読んだよ。皆さんとても素晴らしい作品をお持ちだ。間違いなくこれからのライトミリタリーを引っ張っていく作家・作品になるよ」
「ですよね!あの作品は____」
「あの場面も____」
先に着任した御三方の作品の話で盛り上がり、一向に仕事が捗らない2人であった。