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第十二話『タイムスリップ』

 まどろみの中、夢を、見た気がした。ずっと前に死んだ、母親の夢を……

 強くて、優しい人だった、ように思う。思う、というのは、そこまで良く覚えていないから。

 なにせ、もう、死んでから、十年も経っている。俺は五歳だったんだから、当然かもしれない。

「龍樹は、強い子だから、きっと大丈夫。神様が守ってくれるから。だから、兄弟仲良くね」

 最後に母さんに面会したとき、姉貴も兄貴も弟も泣いていた。もちろん、俺も……

「キー! キー!」

 ……夢の中での病室が遠ざかっていく。現実の声が、俺を呼び戻しているのだろうか? ……なあ、母さん。神様って、いるの?

「キー! キー!」

「……ん? てけ子、か?」

「キー!」

 俺が目をあけた先では、仰向けになっている俺の腹の上で、てけ子が首をブンブン縦に振っていた。

 どうやら、眠ってしまっていたらしい。周囲を見渡すと、森の中、といった感じ。傍では、屋根のついた小型ボートのような見た目の、俺たちの乗っていた脱出艇が、大破して煙を噴いていた。

 さらに視線をめぐらすと、水月が、俺の隣で伸びていた。こいつがこの様子だと……

「てけ子が、俺たちを運び出してくれたのか?」

「キー!」

 首をブンブン縦に振るてけ子。

「サンキューな、てけ子。それで、運び出した後、力尽きて、元に戻っちまったのか?」

「キー!」

 また、首をブンブンと縦に振る。やっぱり、長時間は持たないか…… 結構無茶な働きもしてもらったし、仕方ないか。

「それにしても、こいつ、これからどうするんだろうな……」

「キー……」

 俺は帰るにしても、こいつは、もう帰れないだろう。助けちまったはいいけど、どうしようか……

 てけ子も、事情を知らないはずなのに、何故か困った風に首をかしげている。……やっぱり、小さい方が可愛いな。さて、

「……とりあえず、こいつを起こすか」

「キー! キー!」

 そうしましょう、と言うかの如く同意するてけ子を、肩の定位置に乗せ、立ち上がる。立ってみると、周囲はやや薄暗いが、木々の間からの日光で、脱出艇周辺だけは明るかった。

 俺たちがいるのは、森の中の少し開けたところのようだった。木々の間も、良く観察すると、斜面になっているようで、もしかしたらどこかの山なのかもしれない。

 ガサガサ…… と、落ち葉を踏みながら、水月に近づき、隣にしゃがみ込む。幸い、呼吸はあるようで、目立った外傷も無かった。

 覗きこんだ水月の顔は、眠っているようで、その中性的で綺麗な顔立ちからは、こいつが未来の犯罪者だ、なんてことを全く連想させなかった。

「てか、あの話しを総合すると、こいつ十七なんだよな…… それに、未来人、ねぇ……」

 あまりの突飛の無さに、全く信じれる気はしないが、あのよくわからない船や、精巧な人型ロボット、それにゼロとか呼ばれてたオッサンを見る限り、嘘だと断定することも出来なかった。

 まあ、なんにせよ、だ。起こさないことには始まらない。

「おい、起きろ水月。朝だぞ」

 定番の呼びかけを行ないつつ、肩を揺する。が、起きない。もうちょっと強い刺激じゃないと、ダメなんだろうか?

「おーい、起きろー」

 ぺちぺち、と軽く頬を叩いてみる。が、これでも起きない。ならば、続けるしかない。

 ぺちぺち。ぺちぺち。ぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺち。

「……あーもう! さっきからなんですか! ぺちぺちぺちぺちと!」

 しばらくの間、ぺちぺちと続けていたら、額に青筋を立てた水月が、叫びながら上半身を起こした。

「おー、起きたか。よかったよかった」

「女の子に対する起こし方ってものが、……まあ、いいです。それで、ここはどこですか?」

 かなり呆れた様子で、俺ことを睨んでいたが、それはどうでもいいと言わんばかりに、会話を切り替えてきた。

 しかし、どこと言われても、どっかの森、としか答えられないし、

「しらね」

 と答えるしかなかった。

「……そうですか。貴方に聞いた私がバカでした。自分で確認します」

 心底呆れた風に、そう言うと、ごそごそと、自分の制服のポケットから小さな機械を取り出した。携帯のようにも見えるが、あんな機種は見たことが無い。

 ……それにしてもこいつ、こんなに口が悪いキャラだったか? これが本性だとしたら、女ってわかんねーな……

「あれ? メッセージが…… これは……」

 薄暗い森の中で、小さな機械の画面からの光が、真剣そうな水月の顔を照らしている。その顔は、みるみるうちに曇っていって……

「ふ、ふふ、ははは……」

 最後には、笑い出した。それは、かすれた、壊れたような笑い声で、聞くものを不安にさせるような、そんな声だった。

「……どうしたんだよ」

 気にならないわけが無かった。でも、聞くのは怖いような気も、してる。十中八九、良くないことだろう。恐らくは……

「クビですってよ! クビ! サイコゴースト計画もサブリミナル計画も失敗して、闇討ちも失敗。部下は逮捕された上、政府のイヌと朱城ソラに、その正体や計画がばれる。その上、時空間跳躍可能な航空機(タイムマシン)も壊した私は、司教の席を剥奪され、教団に敵対する背信者ですって! ……しかも、計画されていた作戦なのに、全て私の独断専行扱い! 救援は送らない。刑罰は、時間幽閉。つまり、この時代で死ぬまで生きろ、ですって!」

 水月は、半ば錯乱したような語調と表情で、そう叫んだ。……それは、俺の予想を越える、最悪の状況だった。教団とやらは、よっぽど人に対する情が薄いらしい。

 ……かけるべき言葉が、思いつかないな…… どうする? これは、親父がリストラされたとき以上のヤバさじゃないか?

「……と、とりあえず落ち着け」

「落ち着け? 私は冷静ですよ! なんでしょう、もう、笑いが止まりませんよ、ふふ、ははははは! こんなもの! 砕け散ってしまえ!」

 叫びながら、手にしていた機械を放り投げる。それは、地面に着くことも、木々にぶつかることも無く、まるで中に爆弾が仕込まれていたかの如く、

 パーーーン!

 と、音を立てて、空中で爆散した

 ……確実に、冷静な奴の応対ではないな。……そういや親父も、昼間っからブランコで揺れながら、石を池に投げてたっけな……

 っと、そうじゃない。どうする? なんて言えば…… そう考えている間にも、水月は笑い続けていた。

 そして、一通り笑い終わると、ふう、と息をついて、ボソっと、呟いた。

「……こんなことなら、いっそあの場で死んでしまった方が良かった…… ソラさん……」

 聞こえた言葉は、俺の助けなんか要らなかった、と言ってた。確かに、俺の自己満足に過ぎない、偽善的・独善的行動だったかも知れない。でも、

「……死んでいい、なんてときがあるわけないだろ!」

 そうだ、俺の母さんだって、最期は、自分は幸せだったから、死んでもいい、なんて言ってたけど、そんなことあるはずがない! ……だって、自分のためにも、他人のためにも、生きてなきゃ、意味が無いじゃないか。

 だが、俺の思いは、一切水月には通じていなかった。

「……死は、救済ですよ。生の苦しみは、死によって救われるのですから」

 それは、俺とは正反対の考え方だった。しかし、水月はそれを、俺にではなく、まるで自分に言い聞かせるかの如く呟いていた。

 自分の信じることが揺らがないようにする為の、自己暗示、そう感じられてしかたがなかった。その様子は、俺にある最悪の仮説を連想させた。それは……

「てめえ、まさか…… そう言って、人を殺してきたんじゃねーだろうな……?」

「……………………」

 回答は沈黙。それは、肯定の意を含んでいた。……気が付くと俺は、水月の胸倉を掴んで、自分の手前まで引き寄せていた。

「……オイコラ、なんとか言えよ!」

 胸元を掴んだまま、ガクガクと揺する。すると水月は、俺から目を逸らして、

「…………何もせずに、国家予算規模の賞金クビになると思いますか?」

 小さく呟いた。その唇は、弱々しく震え、顔は青ざめていた。

「そうかよ。見損なったぜ、てめえ」

 言いながら、ドサッ、と手を離し、立ち上がり、背を向ける。本当に、見損なった。だって、こいつは、喜んで人を殺すようには見えないから。

「…………貴方も、そう言うんですね。そう言って、私から離れていく……」

「あ?」

 振り返りつつ、水月を睨む。その視線の先では、怯えたように、白い顔で、こちらを見る水月。その口が震えながら開かれ、紡がれた言葉は、

「……仕方がなかったんですよ。教団にしか居場所が無くて、殺さなきゃ自分が死んでたんですから。そう、仕方がなかったんです……」

 また、自分に言い聞かせるような言葉だった。

「ああ? 甘えたこと言ってんじゃねーぞ! てめーは、自分の犯した罪と向き合うことを投げ出したチキン野郎じゃねーか!」

 そう、罪悪感がありながら、教義だかなんだかに甘えて、逃げて、自分を騙し、正当化している最低野郎。喜んで人を殺す奴と同じくらい、いや、それ以上に最低だ。

「っ…… そう、ですね…… やはり、私は、死ぬべきでした、ね……」

 水月は、俺の言葉が効いたのか、俯いて、弱くそう呟いた。だが、

「それも逃げだ」

 安易に死を選ぶ、それは、自分が殺した奴らへの冒頭である、と思う。しかし、そう言うと水月は、切実な視線で俺を見据え、叫んだ。

「なら! どうすればいいんですか!」

 ……どうすればいいか、なんて、決まっている。

「……てめえ、今まで、辛かったか?」

「……え?」

 水月は、俺の質問の意図が掴めずに、きょとんとしていたが、すぐに意味がわかったようで、

「…………未だに、夢に見ますよ。今まで殺した人たちのこと」

 そう答えてくれた。

「じゃあ、その辛さを抱えたまま、生きろ。決して忘れることなく」

「…………はい」

「それ以外のことは、自分で考えろ。何をすべきなのか、なんて、わかりたくねーだけで、知ってるもんだろ?」

「……はい」

 水月は、俯いているが、その頬には、濡れた跡があった。こいつが、何人殺して、何をしようとしてたか、今までに何があったのかは、俺にはわからないが、俺に言えるのは、これだけ。

 ……偉そうなこと言ったが、俺の家族がこいつに殺されてても、俺は同じことを言えるんだろうか? ……いや、こいつに罪悪感がある限りは、言えなきゃダメだな。

 母さんだって、きっと……

 ……チッ、すっかり、湿気たムードになっちまったな。再度背中を向けつつ、

「さて、んじゃ行くか。ほら立て、置いてくぞ?」

 言った。だが、手を差し伸べたわけでも、振り向いたわけでもない。俺は、背中を向けたままだ。

 こいつの泣き顔を見て、同情したくないから。

「……へ?」

 またもや、きょとん、とした顔をしてるんだろう。そんな様子をありありと想像させる、間の抜けた声だった。

「帰るぞ、って言ってんだ。行くとこないなら、うちに泊まってけ。……何をすべきなのか、考える時間くらいは、あった方がいいだろ?」

 同情はしなくても、これくらい助けてやっても、バチは当たらないだろう。……人殺しとはいえ、罪に向き合おうとしてるんだ。それに、泣いてる女の子を放っておいた、なんて親父に言ったら、向かいの家までぶっ飛ばされかねない。

 ガサガサ…… と、後ろで水月が立ち上がる音がする。そして、水月の小さな声が、聞こえてくる。

「…………いいんですか? 私は人殺しの犯罪者ですよ?」

「……俺はなにも、卑屈になれって言いたかったわけじゃないんだけどな…… まあ、いいんじゃね? もう、殺さないだろ?」

「はい。……貴方が助けてくれた、この命に誓って」

「よし、じゃ、行くか」

 それだけ聞ければ、もう十分だった。水月は、力強く、そう宣言してくれた。神ではなく、自分に誓って。

 こうして、俺たちは下山を開始し、帰路に着いた。だがまあ、事はそう簡単には、運んでくれなかった。


 道無き道を進み、三十分ほどしたところで、ようやく俺たちは、アスファルトで舗装された道に出た。山間にある片側一斜線の小さな道だが、この先がどこかに通じている以上、これ以上に無い安心感を与えてくれた。

 水月と並んで、その道の辛うじて残っている歩道を歩き、さらに山を下る。たまに見かける電信柱は木製だった。どうやら、よっぽど田舎に落下したらしい。携帯もずっと圏外で、ここがどこなのか、わかりゃしない。

 帰りの電車賃、足りるか……? そんな不安が、俺の脳によぎっていた。そもそも、終電があるのだろうか? 携帯で時間を確認すると、既に午後四時を回っていた。最悪、今日中には帰れない、ということもありうる。

 しかし、今考えても仕方の無いことだった。隣を見れば、辛気臭い顔をした水月が、黙々と歩いている。俺もこいつを見習って、足を前に出す作業を続けないとな……

 だが、ただ歩く、というのは、どうも俺の性には合わないらしい。折角、会話可能な奴がいるんだ、何か話すか。

「……なあ、水月」

「なんでしょう?」

 こちらを向いた水月の面は、やはり辛気臭かった。だが、声は、そうでもない。どうやら、歩いているうちに、何かが纏まってきたのだろう。

 さて、声を掛けたはいいが、何を話そうか。そういえば、こいつのこと、あんまりどころか、全然知らないんだな、俺。知ってることといえば……

「……なんか、長い苗字みたいのがあったけど、あれが本名なのか?」

「アヴァロラですか? あれは、教団から授与された名前であって、本名ではありませんよ」

「でも、水月も偽名だよな?」

「はい。この時代に潜入するために付けた偽名ですね」

「んじゃ、お前の本名ってなんだ?」

「マコトです。そもそも私、MG第十三地区スラムのストリートチルドレンなので、苗字とかありませんし。マコトも、私の能力のせいで、仲間内で言われるようになった名前です。“嘘から出たマコト”って感じで。それ以前に何て呼ばれていたかは、覚えていませんね」

 さらっと、ヘビーな過去が出てきた。こいつ、色々とヤバイ過去を持ってそうだと思ったら、いきなりこれか……

「そうか。……なんか、悪いことを聞いたな」

「いえ、今更気にしませんよ。マコトって名前は、結構気に入っていますし」

 俺が、やや凹みかけている横の水月は、この程度の過去、と言った様子だった。……だとすると、これ以上の何かヤバイ過去が、こいつを苦しめていることになるな……

 間違いなく、聞いたら心が折れるだろう。さて、そこは、あまり考えないようにして、会話を続ける。

「じゃ、俺も水月じゃなくて、マコトって呼んだ方がいいか?」

「んー、どちらでも結構ですよ。お好きなように」

 さて、そう言われると、意外と困るな。どうしたもんか…… うーん……

「じゃ、マコちゃんで」

「……はい?」

 かなり、きょとんとされてしまったが、まあ確かに、俺のキャラでは無いな。だが、ここは一つ、瑞希を習って、あだ名という物に挑戦してみたかった。何故なら、

「……お前にマコトなんて、イケメンすぎる。マコちゃんで十分だ」

 こいつ、意外と女々しいし、卑屈だからな。

「……どうゆうことです? いや、お好きに、とは言いましたけど……」

「いやほら、可愛いだろ? な、マコちゃん」

「……貴方、確実に私のことをバカにしていますね……」

 水月、もといマコちゃんは、呆れたように嘆息すると、正面に向き直ってしまった。しかたが無いので、俺も正面を向いて、黙々と歩き続ける。まあ、黙っていようが、しゃべっていようが、結局は道の終わりまで行くだけだ。そのうち、着くだろう。


 かれこれ一時間以上歩くと、やっと人里に出た。さっきまでと違い、木々の遮光が無いので、日差しが強く感じられる。

 ざっと見ると、背の低い建物が並び、レトロとでも表現すればいいのだろうか、やけに角張ったフォルムの車も、何台か見かけた。

 木造一戸建ての民家も何件かあり、ビル、と呼べそうな建物は、ほとんど無かった。それでも、やや都会の香りがする、そんな不思議な町だった。

 ひょっとして、ここは、もの凄く田舎なのか……? いや、だが、それ以前に、ここまで来て、携帯が圏外のままなのはおかしい。それに……

「……なあ、もう五時過ぎだってのに、やけに日が高くねーか?」

「キー……」

 日差しに弱いてけ子が、肩の定位置から、するりとポケットの中にもぐりこんでいる。やはり、五月末とはいえ、おかしい。

 それには、マコちゃんも気が付いていたようで、思案顔で、黙り込んでいる。そして口を開いたと思えば、一言、

「………………妙ですね」

 まあ、妙なのは、わかりきっている。思い返せば妙なことだらけだ。さあ、どうしようか、お、あれは、

「……コンビニあんじゃん。行って、何か買って一休みするか?」

 俺の視線の先には、緑と白のカラーリングで有名な、ファミリーマート。こんな田舎でもある、ということに感動していると、隣で思案顔だったマコちゃんも、

「そうですね。確認したいことも、ありますし」

 同意してくれた。

 それから二人で、ジリジリと照りつけ始めた太陽の下、歩きだす。そして数分もしないうちにたどり着き、すぐに店内に入る。

「お、涼しいな。んー、何買うかなー…………ん?」

 見渡した店内に置いてあるものが、やけに昔の商品の復刻ばかりだった。値段もやたら安いし、これは、どーゆーことなんだ。

 ふと、店内を不審なまなざしで見渡す俺に、後ろから声が掛けられる。

「八幡君! これ……」

 振り返れば、レジ横から新聞を持ってきたマコちゃんがいた。またして顔が青ざめているが、なんだろうか? 報道されるほどヤバイことをやったのか?

 そう考え、新聞を受け取った俺が見たのは、そんな予想の斜め上を行く情報だった。

「は? …………昭和56年、9月26日土曜日!? なんじゃこりゃ!?」

 新聞には、そう書いてあった。ニュースは、見慣れないものばかり。これは、まさか、もしや、ええ!?

「とりあえず、外で話しません……?」

「……ああ、そうだな」

 混乱も、一周すると、落ち着くらしい。店員に不審の目で見られつつも、新聞を戻した俺たちは、店の外に出た。

 そして店のそばにある駐車スペース付近のベンチに腰掛ける。きっと俺は、強い“残暑”の日差しの下にありながら、青ざめた顔をしていることだろう。

「……なあ、あれ、マジか?」

「恐らくは。空中分解する機体が、時空間跳躍機能を暴走させた、とかでしょうね……」

「……なあ、昭和56年って、西暦で何年?」

「1981年です」

「……なあ、俺たち、帰れんの?」

「……………………………………無理かと」

 青空の下、果てしない絶望が俺を包み込んでいた。……俺たち、これからどうなるの?

 ホントに、ずっとここで生きていくのか? いや、何か方法はあるはずだ…… っと、そうだ。あまり使いたくはなかったが、悪魔の瓶に頼めば、あるいは…… よし、まだ希望はある。詳しそうなマコちゃんに聞いてみるか。

「……なあ、悪魔の瓶に頼んだら、なんとかならねーかな?」

 ポケットから、オレンジ色の光を、揺ら揺らと紋様のようにはためかせている瓶を取り出しつつ、聞く。

「……貴方は、四次元座標を正確に捕捉し、悪魔に伝えることが可能ですか?」

「……なにそれ」

 隣から、はぁ…… っと、ため息が、聞こえてくる。……悪魔に対する願いは、正確でなくては、いけない。確実に戻るためには、正確に四次元座標とかいうやつを知ってる必要があるってことか?

 確かに、俺は未来人の技術である、時間の概念や法則を理解してない。だから、無理ってことか……………ん? 俺には無理でも……

「……お前は知ってるんじゃねーのか? 四次元座標とかいうやつ。じゃあ、その通りに俺が願えばいいんじゃねーのか?」

 これで解決、じゃないか? そう思って、少し前向きになった俺の視線の先では、ベンチに深く腰掛けているマコちゃんが、浮かない表情を浮かべていた。そして、バツの悪そうに、口を開く。

「…………時空座標捕捉機、ついカッとなって壊しちゃいました……」

「……もしかして、あの解雇メールが着てたっぽい、機械のことか?」

「……………………………………はい」

「……じゃあもう、四次元座標ってやつの正確な捕捉は、出来ない?」

「……………………………………はい」

「……つまり、帰れない?」

「……………………………………はい」

「……なんてこった」

 結局、振り出しだった。カッとなっていたとはいえ、そんな大事なもの、壊しちゃダメだろ…… 森の中で砕け散ったあの機械が、直るとは思えないし……

「……どうするんだよ?」

「とりあえずは、現在地を確認し、色々と調べてみる他は、ないでしょう。これから先、生きていく為にも」

 本当に、どうなるんだろうな。いよいよ強くなってきた日差しを振り切るように立ち上がり、俺たちは、生きるために、ベターを選ぶための行動を開始した。


 それから二時間ほど、マコちゃんと二人で、町を練り歩き、本屋などでの立ち読みを繰り返したり、道路標識や公園の時計など、利用出来る情報源を最大限に活用した結果、結構色々なことがわかった。

 まず、一番重要なことだが、俺たちがいたのは、埼玉県狭山市だった、ということだ。山に落ちたときは、最悪国外も覚悟したが、俺たちの元々いた街に、かなり近い。

 五時間も歩けば、家に帰ることは可能な距離だろう。もちろん、現代だったら、の話だが……

 次に、時間だが、こちらとは、約五時間、時間がずれているらしい。これは、俺の携帯の時計が18時を指しているとき、公園の時計が13時を指していたことから、わかったことだ。マコちゃんの腕時計を、こっちの時計に合わせてもらったから、これからはいつでも、こっちの時間の確認が可能だろう。

 最後、所持金だが、こっちで使える金は、二人合わせても千円に達しなかった。紙幣は、千円札(のぐちさん)五千円札(ひぐちさん)はもちろん、一万円札(ゆきちさん)も使えない。五百円硬貨も同様に使えず、使えるのは、百・五十・十・五・一円玉のみ。

 しかも、そのうちで、昭和56年以前に製造されたもの、となると、俺が307円、マコちゃんが570円しか、持ってなかったのだ。

 さて、そんな感じでいろいろと調べた俺たちは、住宅街にある、やや大きい公園の外れにあるブランコで、うなだれている。情報は集まったが、これからどうするという方針も決まらないまま、時間だけが過ぎていっている。

 現在時刻は、14時を少し過ぎたところだが、俺たちの体感的にはもう19時、結構腹も減ってきた……

「……なあ、どうするよ?」

 何度目かもわからない問いかけを、隣のブランコに投げかける。だが、キィ……と、ブランコの金属があげた小さな悲鳴が返ってくるだけだった。

 ブランコの小さな揺れで身体が少し動くたび、ブランコを覆うように立つ木々の合間からの日差しが顔にかかり、チカチカと視界が点滅する。

「……なあ、腹、減らね?」

 意識したせいか、空腹が強くなり、キィ……キィ……と鳴るブランコの音が、腹の音に聞こえて仕方が無かった。

 しばらくして、やっと隣から、呟くような声が聞こえてきた。

「確かに、お腹すきましたね……」

 しかし隣からの言葉は、同意するだけで、何かの解決策を伴っているわけではなかった。

「何か買って食うか?」

「……いえ、お金はなるべく節約した方がいいでしょう。稼ぐ方法も、まだ確立していませんし」

「……そうだな。どうやって稼いだもんか……」

 とりあえず、目下の目的は、そこだった。飯や、寝床を確保するためにも、金。先立つものの重要性を、俺たちは痛感していた。

 戸籍も何もない俺たちが、金を稼ぐ方法…… まともな手段じゃ、ダメだろうな……

「……私の力で、店員を催眠状態にさせれば、飲食店なり銀行なり、簡単に強盗出来ますけど、貴方はそれを良しとはしないでしょう?」

「あたりめーだろ。……そんな最終手段は、使わないで何とかしたい」

 やっと出てきた、建設的な意見だが、却下せざるを得ない。犯罪に手を染めたくない、というのもあるが、過去であまり大きなことは、しない方がいいだろうから。

 しかし、バイトは出来ないし、犯罪もダメ。この時代には、助けてくれる知り合いなんか居ないし、持ってるものは、携帯、財布、悪魔の瓶、のみ。この状況、本当にどうしたもんか……

 悪魔の瓶に、現金を頼めば、なんとかなるとは思うが、何が起こるかわからない以上、多用することも出来ない。ああ、この瓶が、融通の利く瓶なら………

 ……ん? そうだ、

「……この悪魔の瓶をさ、質屋に売る、ってのはどうだ?」

 ふと思いついた妙案を告げると、ジト目でこちらを見つめるマコちゃんから、今度はすぐに事が来た。

「それで一時的にお金を得るんですか?」

 だがその声には、そんな一時凌ぎ、と言わんばかりの気持ちが篭っていた。だけど、俺の考えは、そうじゃない。

「ああ。でも、0.8円以上で売れた場合、この瓶の所有者は俺のままだ。だから、すぐに手元に戻ってくる。そしたら、また売る。これを繰り返せば、宿代と飯代は、確保出来るだろ?」

 我ながら、中々に妙案だと思う。だが、マコちゃんは、訝しげな表情のままでこちらを見つめている。

「そんなに上手くいきますかね?」

 まあ、俺も、それだけで簡単にホイホイとお金が得られるとは、思っていない。だけど、

「やってみるしかねーだろ。ほら、質屋探しにいこうぜ」

 ガシャ……っと、音を立てるブランコから立ち上がり、ポケットの中の瓶を見つめる。淡く発光する瓶は、禍々しさと神聖さを併せ持ったような、不思議な色合いに見えた。

 俺は、乗り気ではないマコちゃんを連れて、そのまま公園を去り、市街の中心へと向かっていった。


 三十分後。ありがとうございましたー、という店員の声を背中に浴びながら質屋を出た俺は、髭のオッサンが描かれた、見たことの無い千円札を二枚、握っていた。

「結構な値段で売れましたね」

 隣では、意外そうな顔をしているマコちゃんが、歩いている。たしかに、ただの空き瓶にしては、結構な値段で売れたと思う。まあ、値段の理由は、色合いが珍しいから、インテリアとして売れた、ということなのだが。

 しかし、質屋の中では、結局こいつの力を借りることになってしまった。……やはり上手い案ではなかったのだ。

「……やっぱ、高校生が物を売るのって、保護者の証明とか必要なんだな……」

「それはそうでしょう。まあ、結果的に騙して買わせることになってしまいましたが、値段は向こうが決定したことですし、騙したのは我々の年齢と身元証明だけですから、そんなに気に病まなくてもいいのではないですか?」

 だとしてもまあ、元々、手元に残らないものを売っているのだから、自分から発案しておいてアレだが、詐欺みたいなものではある。小さな犯罪も積み重ねだ。……仕方ない、ということにしてしまっていいのか?

「うーん……」

「八幡君って、意外と真面目なんですね。私は、小さい頃は窃盗を繰り返して生きてきたので、これくらいは、とか考えちゃってましたけど、八幡君を見てたらだんだんと、良くないって気がしてきましたよ」

 またもやさらっとヘビーな過去を聞かされたが、良いわけはない、だろう。だが、他に方法は無いだろうし、緊急事態でもある。

 ……いつか、きっと返そう。現代に帰って、あの会社があるのかどうかはわからないけど、あるなら絶対に返そう。

 ……過酷な状況にある今こそ、前向きにならないと、な。

「よし、じゃあこの金で飯でも食うか」

 握っていた見知らぬ千円札を制服の上着のポケットに突っ込みつつ、気持ちを切り替える。腹が減っては戦は出来ぬ、ってな。全く、その通りだぜ。

 顔を上げると、隣のマコちゃんも賛成のようで、こちらを向き、先ほどまでとは違う、やわらかい表情で答えてくれる。

「いいですね。何食べます? 食べたいものとかありますか?」

「そうだなあ」

 言いながら、辺りを見渡すと、駅前なので飲食店はすぐに何軒か目に付いた。ランチタイムを過ぎて、人通りも多くなっているようだが、問題は無いだろう。むしろ空いていることで、すぐに飯にありつける。

「暑いし、蕎麦とかどうよ?」

 駅前を見渡して、目にとまった蕎麦処と書かれた看板を差しつつ、聞く。よく考えたら、未来人が何食ってるのかって、わからないな。未来では、何がスタンダードなんだろう。

 そんなことを考えている俺に帰ってきたのは、さらに未来をわからなくする予想外の回答だった。

「いいですね。でも私、蕎麦には結構うるさいですよ?」

「……お前、ホントに未来人か?」

「はい、そうですよ。蕎麦好きでもいいじゃないですか。畳に卓袱台で蕎麦食って育って何が悪いんですか?」

「お前、何年生まれだよ……」

「3981年生まれですが?」

「……大分遠い時代なのに、畳と卓袱台と蕎麦が残ってるんだな……」

「ええ、まあ」

 ……未来って、わかんねーなぁ…… そんなことを思いながら、遠未来の蕎麦通を連れつつ、若干疲れたまま、俺は蕎麦屋に入った。

 暖簾をくぐってガラスの引き戸を開けると、その先は昭和の香り漂う、趣のある蕎麦屋だった。昼を過ぎたからか、予想通り人は少なく、すぐに席に案内され、お冷とお品書きを貰った。

「安いな……」

「ざる蕎麦三百円ですか。確かに安いですね」

 お品書きを開いて思ったが、三十年前と今とでは物価が結構違うらしかった。この分だと、大体のものが、今の三分の二くらいの値段なのだろう。だから、何かするのであれば、あの二千円を三千円と考えた方が良さそうだ。

 そんなこんなでお品書きを眺めていると、程なくして店員が注文を聞きに来て、俺たちは、さる蕎麦を二つ頼んだ。

 注文してからすぐに届いた蕎麦を目の前にして、二人で、

「「いただきます」」

 と、声を揃えて挨拶をして、箸をつける。すすった蕎麦は、美味しかった。三十年程度じゃ、変わらないだろうとは思うが、何故か、現代で食べたものより美味しく感じる。

 空腹だったからだろうか? まあ、なんにせよ、美味しいのはいいことだ。難しいことを考えるのを止めて、ずるずると、蕎麦をすすっていると、向かいに座るマコちゃんが、訝しげな表情で、薬味を見ていた。

「この緑色のペーストは、なんなんですかね……」

「いや、何って、ワサビだろ」

 マコちゃんの視線の先には、小皿に乗ったワサビがあった。こいつ、変なところで未来人っぽいな。って、ゆーか、

「未来って、蕎麦はあるのに、ワサビは無いのか?」

「はい、蕎麦はありますが、ワサビは無いですね」

「それ、刺身食うとき困んないのか?」

「お刺身って、醤油と生姜以外に何か使うんですか?」

「え? 生姜って、カツオとかだけじゃね?」

「え? カツオって、お刺身にするんですか? お刺身と言ったらメダイじゃないですか」

「いや、メダイの刺身なんて滅多に見ねーよ……」

 なんだろう。未来人と現代人の、カルチャーギャップという会話のはずなのに、そんな気が、全然しない。なんとも言えない差異だな……

「……お前さ、実は未来じゃなくて、日本と風習の微妙に違うアジアのどっかから来たんじゃないのか?」

「いやいや、ちゃんと西暦3998年の未来から来てますよ?」

「本当かよ……」

「あ、このお蕎麦、美味しいですね!」

 聞いちゃいねぇ…… まあ、いいか……


 蕎麦を食い終わった俺たちは、質屋を転々としながら、金を稼ぎ、自分達の街の方へと向かっていた。

 既に、金額は一万を突破し、一泊分の宿なら、安いビジネスホテルと仮定すれば、なんとかなりそうだった。

 しかし、転々と質屋を巡るのにも、結構時間が掛かったようで、時間は既に、19時を回ろうとしていた。とぼとぼと二人で歩く片側一斜線の住宅街も、さすがに暗くなっていた。

 俺たちの体感時間だと、もう、24時だった。俺はもちろん、隣を歩くマコちゃんの顔にも、疲れが見えていた。この感覚は、いわゆる、時差ぼけに近いのかもしれない。

「なあ、今日はこんなもんにして、そろそろどっかで休まねーか?」

 発した声は、自分でも驚くくらい疲れていた。いや、当たり前か。朝、普通に起きて学校に行って、昼頃友達と遊んで、よくわかんねー飛行機を探索して、山道歩いて、かれこれ17時間近く活動していることになるのだから。

 古くさい街灯が、弱々しく照らす道で、隣を見ると、マコちゃんも賛成な様で、

「そうですね。では、次の駅で、宿を探しますか」

 疲れたような声でそう言った。

 それから、また無言で歩く。歩く最中も頭にあるのは、元の時代に戻る方法、それだけだった。そう、タイムマシンが無くても、何かあるはずだ。

 要は、三十年後に行ければいいのだから……

 と、何かを閃きかけた俺の耳に、カンカンカンカン……という音が聞こえてくる。顔を上げれば、目の前で踏み切りの遮断機が下りていく。

 どうやら、考え事のし過ぎで、前が見えてなかったらしい。危ない危ない。ん……? 踏み切り内に、人? あれは……

「チッ!」

 気付いたときには、ダッシュで遮断機を潜り抜けて、人影の元へ走っていた。四本の線路が走る、比較的大きなその踏み切り内にいた人物は、中央付近うずくまっていたのだ。

「おいあんた! 大丈夫か!?」

 そう叫び、駆け寄って姿を確認すると、セーラー服に黒く長い髪をした、女子高生のようだった。辺りが暗いので顔はわからないが、線路の隙間に、ガッチリと足が挟まれている。

「え!? あ、はい。でも電車が……」

 女子高生の驚いたような声に、顔を上げると、既に電車が近くに迫っていた。眩いヘッドランプが、俺たちを照らし出している。

「やべえな…… ちょっと我慢しろよ!」

「痛っ……」

 俺の掛け声と、女子高生の悲鳴が同時に響き、線路の隙間から、足が外れる。時間が無かったので、強引に引っこ抜いてしまったから、もしかしたら血が出てるかもしれない。

 でもどうにか足は外れたようだ。さあ、後はこいつを抱えて横に飛ぶだけ……

 そう考える俺の、ほんの目と鼻の先にまで、電車は来ていた。その動きは、スローモーションの様に見え、思考がどんどん加速されていくのがわかる。

 しかし、加速された俺の思考は、これが回避不能であると告げていた。

 何も出来ず、女子高生を抱えたまま、ただただ固まる。思考の加速の影響か、視界を埋め尽くさんばかりの電車も、固まっている。

 そのまま、永遠にも等しい時間が流れたような気がした。

「……まるで、時間が止まったみたいだな……」

「いや、実際止まってるんですけどね」

 女性にしては低い、綺麗な声が、俺の独り言に返事をしてくれた。……コツコツコツと、アスファルトを踏み鳴らすように、声の主は俺の元まで歩いてくる。

「…………は?」

「いや、だから、私が止めたんですよ、時間」

 止まっているらしい時間の中で、俺の思考も停止して、声の掛けられるままに振り仰げば、マコちゃんが営業スマイルを浮かべて、俺を見ていた。

 ええと、今までの話しを総合すると、つまり、こいつが、時間ごと電車を止めた、と?

「…………時間とか、止められるもんなの?」

「まあ、私が本気を出せば、十両編成の電車を時空間ごと纏めて止めるくらい訳無いですよ」

 ふふ、と笑って見せたマコちゃんからは、微塵も誇張はありません、という様子が感じ取れた。何こいつ、やべえ奴だとは思ってたけど、これほどとは……

「ほら、いつまでも固まって座り込んでいないで、踏み切り渡っちゃいませんか?」

「あ、ああ……」

 そういやここ、線路のど真ん中だったんだな。さっさと移動しないと、そう思い、腕の中の女子高生に目をやると、だらりと力なく俺のもたれかかっている。

 相変わらず顔は確認できないが、どうやら気絶しているようだ。まあ、この状況の説明を求められないのは、非常に助かるな。

 ぐいっと、女子高生を抱え上げ、そのまま踏み切りを渡った先へと向かう。抱えた身体は、気を失っているからか、凄く重く感じた。

 少し冷静になって辺りを確認してみると、踏切の音は聞こえないし、赤いランプも点滅も見えなかった。

 これは、凄く広範囲で時間を止めてる、ってことか……? なんでもアリだな、未来人ってのは……

 下りている踏切を、内側から眺める、という中々出来ない経験をした俺は、何とか無事に踏切の外に出ることが出来た。

 そのまま、踏切を過ぎて少しした場所にあったベンチに、女子高生を下ろす。

「ふぅ……」

 あたりは薄暗く、やはり女子高生の顔は見えない。しばらくすると、後ろからアスファルトを蹴るローファーの音が響いてきて、俺の背中に声が掛けられる。

「靴、拾っときましたよ。全く、貴方は女の子を裸足で帰らせるつもりですか?」

「マコちゃん、サンキュー。お前、意外と出来る奴なんだな」

 振り向けば、革靴を片手に持ったマコちゃんが踏切を背に立っている。靴って、線路から足を引っこ抜いたときに、脱げたのか? 何にせよ、マコちゃんは、結構気が利く奴であることが判明した。

「まあ、若干十五歳にして司教にまでなったくらいですからね。……クビになりましたけど」

「……突然自虐的になるのやめてくれよ……リアクションし辛いから」

「まあ、まだ半日も経ってないので、引きずってるんですよ。さて、じゃ時間停止を解除しますね」

 暗い表情から一転、にこっと微笑んだマコちゃんの背後で、電車が動き出した。同時に、踏切の音も響き始め、赤ランプも点滅を再開する。

 電車の通過と踏切の轟音の最中、不意に後ろから声が聞こえた。か細く、透き通るような声だが、なぜか俺には、轟音の中でも良く聞こえた。

「うぅ、ん…… あれ……?」

 振り返れば、先ほどの女子高生が目を覚まして、ベンチから立ち上がっていた。その姿は、俺の背後を通る電車の明かりに照らされて、今度ははっきりと見ることが出来た。

 目に掛かる前髪と、黒く艶やかな長い髪に、古くさいセーラー服。そして、妙に色っぽい小さな唇。その姿は……いや、そんなはずは……

「大丈夫でしたか? これ、貴方の靴です」

 硬直する俺を押しのけて、わけがわからないといった表情の女子高生に、マコちゃんがスッと歩み寄ると、靴を差し出していた。

「あ、ありがとうございます。……えっと、私、どうして、ここに?」

 女子高生は、まだ、わからない、といった表情だった。前髪のせいで目元はわからないが、困惑の色が浮かんで潤んでいる様子が、ありありと想像出来る。

 それに対してマコちゃんは、営業スマイルのままで、つらつらと、優しい言葉で語り出す。

「電車に轢かれそうになっているところを、彼が助けたんです。それで、気絶しているようでしたので、そこのベンチに寝かせて、少し様子を見ていた、というわけです」

 その言葉に嘘は無かったが、一番肝心で、一番非現実的だった、助け出した方法は、省略されている。

 しかし、それだけでも、状況は伝わったようで、女子高生は、俺の方に向き直ると、頭を深く下げた。

「あの、先ほどはありがとうございました。何か、お礼がしたいのですが……」

「…………いや、気にしなくていい」

 頭を上げた女子高生に、短くそう告げる。視線が合わせづらく、なんとなく横目で彼女を見ると、頭を下げたことで乱れた髪を整えているようだった。

「でしたら、お名前だけでも、お教えくれませんか?」

 やや困った、という風で、髪を整え終わった女子高生が聞いてくる。だが、ここは過去の世界。どうなるかわからない以上、不用意に名前を告げるべきではないだろう。それに、こいつは、もしかしたら…… いや、今考えることじゃないな……

「…………名乗るほどの者じゃない」

「プッ」

 返答に困った俺が、短くそれだけ言うと、俺と女子高生の間にいる奴が、噴出していた。

「そこ、笑うんじゃねー!」

「いや、そんな時代劇みたいなこと言うなんて思わなかったので」

 果たして、こいつは本当に未来人なのだろうか? たまにいる、自称金星人とかと同じ類の人間なんじゃないのか……?

「はぁ……」

「あの、すみませんでした」

 似非未来人疑惑マコちゃんに呆れてため息をついていると、なぜか、女子高生に謝られてしまった。なんでこいつは、こんなに腰が低いんだろう。てゆーか、

「……なんに対して謝ってるんだ?」

「いえ、ただ申し訳なかったので…… あの、本当にありがとうございました」

「……そうか。気をつけて帰れよ」

「はい。では失礼します」

 女子高生は、最後にもう一度頭を下げると、歩き去っていった。俺は、ただ立ち尽くすだけ。過ぎ去った電車のせいで、辺りには暗闇と静寂が戻ってきている。

 女子高生の姿が、完全に見えなくなったのを確認すると、マコちゃんが、俺の方に向き直り、ジト目で睨んできた。

「感心しないくらい無愛想でしたね、八幡君。……何か気になることでもあったのですか?」

 発せられた言葉の前半は、非難の眼差しを伴っていたが、後半、その口調は真剣なものに変わっていた。気になること、か……

「……大有りだな」

「一体何が?」

「……あの人、てけ子に似すぎてる。いや、本人そのものだった」

 夜の住宅街の闇の中に、俺の弱い声が溶けていく。発してみた言葉は、自分の言葉なのに、真実味を帯びてはいなかった。何故? という疑問は、尽きない。

 俺の言葉を聞いてか、聞かずか、ポケットの中で、キー、という声が聞こえた、気がした。

 自分で言っておいて、なおも混乱し固まっている俺に、マコちゃんはわざとらしく目を見開き、あたかも驚いたといった表情で薄く口を開いた。

「へえ、そうですか」

「リアクション薄いな!」

「いやほら、三十年前ですし、生前のてけ子さんが居ても不思議じゃありませんよ」

「そうかぁ……?」

 マコちゃんの言っていることは、真っ先に考えた可能性ではあるが、イマイチ信じられなかった。まさか、知り合いには会うまいと、決め付けていた、というのもあるが、偶然出会って次元じゃなかったというのが、大きい。

 こんな奇跡にも近い偶然、あるものなのだろうか? いやでも、あの似方は、同一人物と考えた方が自然ではあるな。

「うーん……」

「ほら、考えても仕方がないんですし、私たちも行きません?」

「まあ、そうだな。行くか」

 確かに、最もな意見だった。今考えても答えが出ないことに変わりは無い。結果的にマコちゃんに促される形で、俺達は、歩き出した。ビジネスホテルがありそうな駅前を目指して。


 トボトボと歩くこと三十分、暗かった住宅街を抜け、俺達は明るい大通りに出た。そのまま最寄の駅に向かって大通りを進むと、何軒かホテルは見つかった。

 適当に入って、予約無しで泊まれるかどうかを聞くこと三回目、なんとかシングルでなら泊められる、というホテルが見つかった。

「八幡君、何か変なことしたら、千寿さんに報告しますからね」

「何もしねーよ……」

 受付で鍵を受け取り、綺麗に掃除されているホテルの廊下を歩いているとき、そんなことを言われた。真顔でさらっと、言われたので、本気で言っているのか、冗談で言っているのかは判別できない。

 ……実際問題、シングルに泊まろうか、かなり悩んだのだが、疲れてこれ以上ホテルを探すのが面倒だったことと、シングルだと安い、という理由で、妥協し、結局泊まることになったのだ。

 さて、鍵を開けて部屋に入ってみると、暖色系の壁紙に、白く綺麗なベッドが一つ、化粧台も兼ねてそうな小さな机と椅子に、小物などを置く小さな棚がベッド脇にあるだけの、簡単な部屋だった。

「うわ…… マジでベッド一つなんだな……」

 部屋の入り口で、思わず呟いてしまった。すると後ろから、マコちゃんが顔を出し、

「それはそうでしょう。シングルなんですから」

 そう、返事をしながら、ツカツカと歩いて、俺の横を通って、ベッドの前まで移動した。

 いや、ベッドが二つあるとは思っていなかったが、ソファくらいあるかと期待してたんだ…… 俺は椅子で寝るしかないのか?

「うーん……」

「何故、ベッド見ながら唸っているんですか? あ、もしかして、やらしいこと考えてます? ダメですよ?」

「ちっげーよ!」

 マコちゃんは、俺に不信感いっぱいの視線を送った後、はぁ、とため息をついて、

「まあ、八幡君、へたれですし、心配してませんけどね」

 それだけ言うと、

 ぼすん!

 と、音を立ててベッドに倒れこんでいた。

「ふぁーあ…… このまま寝ちゃいそうです……」

「そうかよ。俺は、寝る前にはシャワー浴びたいけどな」

 椅子を引きつつ、欠伸を漏らすマコちゃんに返事をして、椅子に腰掛ける。現代ではすすまみれ、こっちに来てからは汗まみれだ。さすがにこのまま寝たくはない。

 マコちゃんは、倒れこんだ状態のまま、首だけグルンとこちらに向けて、目を瞑ったまましゃべっている。

「じゃ、着替えとかも買わないといけませんね。いつまでも制服のままは厳しいですし」

「そうだな、少し休んだら買いに行くか」

「店、開いてますかね?」

「八時前だろ? ギリギリ開いてるんじゃないか?」

「そうですねー……」

 こいつ、ほっといたら確実に寝るな。まあ、仕方ないか。

 それから数分後、俺は、案の定寝てしまったマコちゃんを叩き起こして、近くの大型スーパーに向かうこととなった。


 一時間後の夜九時、スーパーの閉店時間ギリギリで店を出た俺達は、またホテルに戻ってきていた。

 購入したのは、下着、タオル、シャツに、簡単なズボン、それに小さなカバン。俺達は、完全に手ぶらだったため、買った物をこれから持ち歩く方法すら、なかったのだ。

 で、それらを買うと、大体所持金は0になってしまった。これは、明日からまた質屋に行かなければならないかもしれない。

 そんなことを考えながら、俺は今、マコちゃんが部屋に居ないのをいいことに、ベッドでゴロンとしている。

 ふかふかした感触が、背中を支えて、なんとも心地よかった。確かにこれは、そのまま寝てしまいそうだ。

 まあ、もうシャワーも浴びたし、寝てしまってもいいか。シャワー浴び終わったマコちゃんが、起こしてくれるだろうし……

「ふぁーあ……」

 俺は、そのまま本当に寝てしまったようだった。ふと気が付くと、電気が消えていた。

 暗さになれてきた目を擦りつつ、辺りを確認すると、

「なっ!」

 目の前にマコちゃんがいた。目を閉じているので、眠っているようだった。その寝顔は、幼く見え、起きてるときに比べて五割増くらいで可愛く見えた。

 と、そんなことより、なんでこいつ、俺の横で寝てるんだよ!

 そう思っていると、なんか最悪なことに、寝てるマコちゃんが、薄めをあけてこちらを睨んでいた。

「……どうかしましたか?」

 折角寝てたのに、起こしやがって、という意思が感じ取れなくもない声音だった。ってか、

「……なんでお前、ここで寝てるんだよ」

「ベッドが一つしかないので、仕方なく」

「……そうか、じゃあ俺は椅子で寝る」

「ベッドで寝ないと、疲れが取れませんよ? 私は気にしませんから、ここで寝ればいいじゃないですか」

 俺が、気にするんだけど…… いやでも、ここまで言われたら、仕方ないな……

「……わかった」

「はい。じゃあ、おやすみなさい」

 それだけ言うと、マコちゃんは、本当に寝てしまったようだった。俺も、深くは考えないようにして、寝ることにした。


 翌朝、俺が目を覚ましたとき、マコちゃんは既に起きているようだった。椅子に腰掛けて、何かしているようだった。

「……おっす」

 上半身を起こしつつ、マコちゃんに向かって、簡単に挨拶する。

「おはようございます。中々早いお目覚めですね」

 マコちゃんは、爽やかに微笑みながら返事をしてくれた。言われて思うが、早いのか? でも確かに、窓の外は、まだ薄暗いな。寝たのが、こっちの時間で九時半くらいだったから、実は早朝なのかもしれない。

「今、何時?」

「朝の六時です。チェックアウトが十時なので、結構余裕がありますね」

 時差のせいで、かなりの早寝早起きをしてしまったらしいな。しかし余裕があるのなら、今後のことを話しておきたいな。

「で、チェックアウトしたあと、今日、どうする?」

「そうですねぇ……」

 マコちゃんは、椅子ごと体をこちらに向け、腕を組んで唸っている。やはり、帰るための確実な方法はないのだろうか?

「ひとまずは、お金を稼がないといけませんね。どうします? また瓶を売りますか?」

 確かに、今の状態じゃ、何かあったときに非常に困る。まずは、それしかないのかもしれない。だが稼ぐにしたって、他の方法があるはずだ。例えば、

「マコちゃんの能力で、パチンコ行ったら、一気に稼げたりしないもんか?」

「あ、その手がありましたね。まず間違いなく余裕で増やせますね」

 やっぱり出来るのか。これなら、昨日より短時間で稼げるな。

「よし、じゃ今日はそれで行こう。それでよ、実は気になってることがあるんだが……」

 俺の前置きに対して、マコちゃんも真剣な表情に変わる。

「……なんですか? 私の彼氏とかですか? 居ませんけど、残念ながら男には興味ありませんよ?」

「……お前さ、時間止められるんだよな?」

「……スルーですか。まあ、止められますけど」

「俺達の身体の時間を、三十年間止める、って可能か?」

 そう、昨日の電車停止のときから、考えていた、現代に帰る方法。ここは過去なのだから、それが出来れば、帰れるんじゃ、ないか?

 しかし、マコちゃんは暗い表情で、こう言った。

「……三十年間時間を停止させ、タイマーのように解除することは可能ですが、それで元居た時間に帰ることは出来ませんよ」

「……どうゆうことだ?」

「説明するには、まず時間の概念について説明しないといけないのですが、大丈夫ですか?」

 大丈夫も何も、聞かないと話が進まないなら、聞かないわけにはいかない。

「まあ、わかやすく頼むぜ」

「はい。まず、平行世界、という言葉は知っていますか?」

 平行世界か、あのSFとかでたまに出てくる、別の世界、みたいなやつか? それなら、

「まあ、知ってる」

「わかりました。……世界というのは、無数の平行世界で出来ているのです。それは、時間の進みと共に、分岐を繰り返して、まるで大木の枝葉の様になっているのです」

 マコちゃんは、説明しながら、図を書いてくれた。なるほど、なんとなく、理解は出来る。

「未来ってのは、枝の先のほうなのか?」

「そうです。まあ、私の居た未来の世界は、枝が五本しか残ってないのですけどね」

「……五つ以外、滅んだってことか?」

「ええ。恐らくは、24世紀の初頭くらいに。その代わりに私のいた世界では、平行世界間の交易が行なわれていましたから、そこまで悲観したものじゃ、ありませんよ」

 並び立つ異世界と、交易って、結構どころではなく凄いな。それにしても、24世紀、つまり2300年代に、五つを除いて滅びるのか、世界。

「………………そうかぁ?」

「まあ、今はそれはいいのです。それで、いろいろあって過去に移動できる技術が開発されたのですが、23世紀以前にしか行けない上、厳密には、その過去の世界の平行世界にしか行けないんですよ」

「どうゆうことだ?」

「私たちが未来から過去へ行くと、その行為のため、私たちが着いた地点で枝分かれが発生するのです。すなわち、未来人が来た場合と、そうでない場合。必然的に、私たちが存在出来るのは新たに生まれた枝ですから、まあ、過去ではあるんですが、未来には影響しないのですよ。元々ある枝の先から来るわけですし」

「ふーん。じゃあ、歴史変えたり、ってのは出来ないのか」

「まあ、何かしたなら、そーゆーパターンの世界が生まれるだけですね。それで、23世紀以前にしかいけない理由ですが、これは良くわかっていないのです。仮設では、23世紀以降の世界は枝わかれが出来ないらしく、そのせいで時間移動が未来に影響してしまうため、やろうとすると世界に弾かれる、らしいです」

「なるほどな。大体理解したぜ。ここは、2011年から俺達が来たことで新たに出来た世界、だから三十年経っても、元の世界にはならない、ってことか」

「はい。しかも、我々の元いた2011年は、未来からの来訪者の影響で分岐した世界でもありますから、時空間固定がされているんですよ……」

 どよん、と沈むマコちゃん。聞きなれない単語が出てきたが、それが沈降の原因だろうか?

「その、時空間固定、ってのは?」

「……私たち、犯罪者じゃないですか。政府は私たちを追っかけて過去へ捜査員を派遣するじゃないですか。そしたら世界が分岐して、捉えられない方が絶対に出るじゃないですか。そこで開発されたのが、二度目の枝分かれを防止する楔を打ち込む技術です」

 かなりわかりやすい説明だった。確かに、それがなければ、過去に逃げた犯罪者を捕らえることが出来ない。で、重要なのはここから先。

「……それがあると、なんかヤバイのか?」

「時空間固定は、過去からの干渉も完全に阻止し、そこへの時間移動も出来なくする。おまけに、私の元居た未来の絶対進行時間に同期させられるので、時間の進み方すら、固定されているんですよ」

「じゃあ、タイムマシンがあっても帰れなかったのか」

「ええ。まず間違いなく帰れませんね。もし、時空間固定がなければ、八幡君の言ったコールドスリープ案に、あの瓶と私の力を加えて、この世界を無理やり私たちのいた世界に繋げる、くらいは出来たと思うんですけど……」

「そんなこと、出来たのか?」

「はい。超頑張れば、タイムパラドックスや小さな未来改変を引き起こすことは、可能ですよ。元々が、未来からの干渉で分岐して生まれた世界に対してですし。ですが……」

 そこでまた、マコちゃんは沈んでしまった。うーん、なんとかならないもんか……

 うーん…… マコちゃんが、分岐を無視した行動が出来るのなら、時空間固定を無視した何かも、出来るんじゃ、ないか? マコちゃんには不可能でも。

「……時空間固定をぶち破ってこの世界を、あっちに繋げる、としたら、どれくらいの力が必要なんだ?」

「……大体、私が五十人くらいいれば何とかなりますね。瓶だと、五百本ほど必要かと。その規模だと、まあ、Aランク霊体の力を借りる他、方法なんてありませんね……」

 どうやら、可能らしかった。そしてまた、聞きなれない単語。

「Aランク霊体?」

「私の五十倍強いお化けのことです」

 時間停止の五十倍ってどんなだ? とにかくヤバイということしか、わかんないくらい強いんだろうな。でも、

「……そいつがいれば、帰れるのか?」

「はい。ですが、天然のAランク霊体は、史上、その存在が確認されたことがありません」

「……でも、それしかねーなら、探すっきゃねーだろ」

「……そうですね」

 ひとまずの方針が決まったとき、部屋の中はすっかり明るくなっていた。Aランク霊体がどんな奴で、どこにいるのかなんて全くわからないが、とにかくそいつを見つける以外に、帰る道は、ないんだ。ならば、やらざるを得ない。

「方針、決まったな」

「はい。まあ、まだどうなるかわかりませんが、やることが決まった、というのは意外と気が楽になるものですね」

 ふふ、と微笑んだマコちゃんは、その後、椅子から立ち上がりつつ、重大な何かに気が付いたように口を開いた。 

「あ! 朝ごはんにしようと思ったのに、もうお金がないじゃないですか!」

「……とりあえず、昼まで我慢だな……」

 確かに、俺達は、宿泊費を払うと、もう丁度なくなるくらいしか、お金を持ってなかった。仕方がないので水道水で腹を膨らませた俺達は、チェックアウトを済ませ、すぐにパチンコ屋へ向かっていった。

 やたら強い幽霊探しは、その後、始めよう。


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