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魔法書を作る人  作者: いくさや
少年編

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番外3 ねこのきもち

 番外3


 びっくりした。


 シズの鼻から血がどぱってなった。心配。

 わたしたちがあわててる時もこうかく竜は歩いていた。いのししを食べたりしてる。

 ちょっと落ちついたシズが服の下からまほうのふでを出してとっくんしようって言った。

 なんでとっくんするんだろう?

 わからないけどシズが言うならやってみる。


 こうら、書くのむずかしい。


 昨日みたいにすぐ終わっちゃって、ふでをシズに返した。

 シズはなんでかさっきの鼻血で書き始めた。

 なにか、字が……光ってる?


 変!変なの!


 シズはよろこんでたくさん書いてく。

 字がまっかになってカアアッてなってく。

 これ、こわい。

 こうかく竜もこわいけど、これもこわい。ううん。こっちの方が怖い!耳が後ろにペタってなって、しっぽが足の間にかくれちゃう。

 ふくをひっぱったらやっとシズが気付いてくれた。

 シズはわたしのローブをポイってして、竜がそっちを見ている間に手をとって走り出した。

 こうらから下りて走る。

 走る。走る。走る。走る。

 まっかになる。

 足が下につかない。

 ふわってなって、風がごうってなって、じめんをゴロゴロころがった。


 目が回る。痛い。うー、もう。うう……。


 まっくらになってわたしは眠ってしまった。



 シズとさんぽするゆめを見た。

 耳はピコピコで、しっぽはビンビン。

 たのしくて、うれしくて、しあわせ。


 なのに、いやなにおいがいして目がさめた。

 起きたらまたこうかく竜がいた。さっきより大きくておこってる。こわい声でわたしたちをおどかしてくる。

 シズがわたしの前にいてくれた。

 でも、ふるえてるよ?こわいの?

 

「僕が気を引く間に逃げて」

「……やだ」

「大丈夫。無理しないから」

「嘘。やだ」


 なのに、わたしを守ってくれる。

 そんなシズを置いてくなんてできない。

 ぜったいに、やだ。

 りゅうをにらむ。こっちくるな。かえって。くやしい。シズに守ってもらってばかり。なにもできない。


 そしたら空から金色が落ちてきた。


 すごい光って目が見えない。

 色んな音がしていつのまにか知らない人が立っていた。

 きれいな女の人。

 背よりもずっと長いぼうを持っていて、ひゅうんひゅうんってかっこよく回してる。

 ぼうっと見てたらシズが目をふさいでくる。なに?もっと見てたいのに。シズはいじわる。

 だけど、すぐに手の向こうがぴかってなったからシズがまぶしくないようにしてくれたんだ。いじわるなんて思ってごめんなさい。

 光るのが終ったら、こうかく竜は死んでいた。

 女の人がたおしたんだ。


 女の人はシズのお母さんだった。

 しかられた。

 こわかった。きょう、一番こわかった。

 おこってないのに、耳もしっぽも丸まって、かってにおなかを出してしまった。

 シズもブルブルしてた。シズもこわいならしょうがないよね。


 そうして村の人がいっぱい来て、わたしたちは村に帰れた。

 父さんと母さんにおこられて抱きしめられて、いっぱいいっぱいいっしょに泣いた。


 こわいばかりだったの。

 いやがいっぱいだったの。

 でも、うれしいもあったの。


 次の日はおうちでねてた。

 母さんがずっとよこにいて外に行けなかった。

 でも、あしたは行っていいって。村の外に行かないってちゃんとやくそくした。


 シズのおうちに行った。

 こわいお母さんはこわくなかった。

 やさしくてあったかだった。

 シズは昨日からとっくんしてたみたい。あんなことがあったのに。シズはすごい。


 今日もいっしょに走って、まりょくを使って、とっくんする。

 まりょくはぜんぜん追いつけないけど、走るのは勝てるようになってきた。

 でも、ゆだんしちゃダメ。シズはすぐに早くなってくる。負けない。

 

山でわたしはなにもできなかった。

 シズがいなかったらこうかく竜に食べられてた。

 次はわたしががんばる。


 もう耳もしっぽも気にならなかった。

 ローブはもうないし、あれがあると思いっきりくんれんできない。

 それにシズがいっしょにいてくれる。

 他の子にからかわれてたらシズが助けてくれた。

 からかってた子たちが耳としっぽをじっと見るようになったのは変だったけど、他の子ともあそべるようになった。


 でも、守られてるのはやだから。

 こわい方のシズのお母さんにおねがいする。

 くだものの木があるところにいたシズのお母さんをじっと見つめる。


「あら?リエナちゃん、どうしたの?シズなら遊びに行ってるわよ?」

「わたしを強くして」

「あらあら。どうして?」

「シズを守るから」

「そう」


 その日から夕方、おうちのうらでけいこを始めた。

 シズにはないしょ。

 長い木のぼうを持ってふりまわす。

 これをししょーに当てたら勝ちなんだって。

 ししょーはやさしいけど、ときどきこわい。

 こわいのがたくさん見れたら強くなれるんだって。

 こわいのはやだ。

 でも、くやしいのはもっとやだ。


 シズはおっきくなったらおうとのまほう学園に行くって言ってた。


 置いていかれたくない。

 いっしょがいい。

 だから、がんばる。


 ししょーみたいにびゅんってぼうをふった。

 あ、はねかえされちゃった。でも、いい感じ。

 ししょーもにっこりしてる。あれ?こわい?


「リエナちゃん、いいわねえ。じゃあ、もうちょっとがんばろっかあ」


 ししょーがびゅううううんってぼうをふった。

 耳としっぽがきゅってなった。

 こわいー。でも、がんばるー。でも、こわいー。



 たくさん頑張って。

 そして、わたしは12才になった。

リエナ視点だと難しかったです。

ようやく学園編に行けそうですが、次回の更新は1回飛んでしまうかもしれません。

なるべく今のペースで書きたいので頑張ります。

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