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プロローグ
「あなたの幸せ、買い取ります」
とある山のどこかにある深い森、その開けた場所にある木造建築の一軒家。その入口に、青地に白い文字でこんな看板が出ている。
「幸運販売代行店」
いかにも胡散臭い名前である。
もともと商売、というものは、人間の欲求から生まれるものであり、欲求を満たすことで対価を得るものである。
例えば、レストランやスーパーというものは人間の食欲を満たすために、パチンコやゲームセンターといったものは楽しみたいといった欲求を満たすためにある。他にも、ホテルや旅館などの宿泊施設は遠出で寝床を求める欲求を満たすためにあるし、あるいは風俗店などは性的欲求を満たすためにある。
直接的な欲求とは異なるものもある。たとえば占い師という職業は異質のような感じがするが、「自分の未来を知りたい」という人間の欲求に基づいている。
究極的に考えるならば、人間には「幸せになりたい」という欲求があって当然のはずだ。
そういった発想から、この「幸運販売代理店」は作られたのである。