第2話:選択肢
たった1つの質問にすら答えられないのだろうか?
あれから幾らかの時間、女性が答えてくれるのを待っているのだが、「ああ、う・・・」やら何やらで一向に答える気配がない。
外部からの応援が来るまでの時間稼ぎか?
まぁ、そうならそうで色々と手前が省けて嬉しいのだが、こちらもいいかげん無害を装うのも面倒になってきた。
とりあえず手足にまとわりつく4つの金属輪を軽く摘まんで外し自由になる。
あってもなくても自由に動けるのだが、やはり気分的な問題が大いにあるからな....束縛されるのは本当に嫌いなんだ。
それを見てか何でかは知らないが、女性は後退ろうとして尻餅をついてしまったようだ。
そして、その拍子にフードが脱げ、その女性の顔が露わになったのだが、織夜はその素顔に少なからず驚いてしまった。
歳でいうと、18、19くらいの年齢だろうか....金髪のウェーブのかかった長い鮮やかな髪の碧色の瞳をした彫りの深い顔立ちの美少女なのである。その顔は青ざめていたが、それでも決して美しさは損なわれていない。
もとの世界に残してきてしまった2人の絶世の美女である、桜花とセシリアよりも若く美しさでは若干分が悪いとはいえ、中々の美人さんだ。
「こりゃ驚いたな....随分な別嬪さんじゃないか....」
思わず声に出してしまったが、それを聞いた目の前の少女は自分の身体を自らの両手で抱き締め、視線から守ろうとしているようだ。
んな、不躾な視線送ってないだろ....
織夜は天を仰いで嘆息した。
桜花とセシリア、この2人は俺がその場にいないと気付いたら幾つかの国を滅ぼしかねない....
ぶっちゃけ国なんかはどうでもいいのだが、俺としても2人がいないとなると、だいぶ精神的に厳しいからな....
そう思った織夜は、さっさと話を進めるために再び少女に語りかけた。
「・・・まぁ、とりあえず今この時はさっきの話はおいておこう.....それで、一体君らは俺になんのようだ?」
それを聞いた少女は、はッとした様子で俺を見た。
その少女の瞳には困惑と怯え、そしてほんの少しの期待が伺えたが、こちらとしては知ったこっちゃない。
こちとらさっさと2人がいるところに戻りたいんだ。無駄な話をしてる暇はないとです。
「え、えっと・・・この国助け「まだ終わらんのかッ!!」・・・」
奥にあった部屋の金属の扉が勢いよく開き、そこから中に入ってくる男性のような人物。
はぁーもう誰が入って来ようがどうでもいいんだけどさー....こちらの返答がどうなるにしろ、少女の話をきちんと最後まで聞こうとした俺の気持ちを汲んでくれないかな?
さっきからしょっちゅう妨害されてばかりでもう臨界点突破しそうなんですがね....?
この国消すよ?
織夜がそんな物騒なことを思っている間に、先ほど入ってきた男が鎧を着た数人の男を引き連れて、織夜がいる部屋の中央にやって来た。
「一体いつまで掛かっている!!それに何故そいつの拘束が解かれているのだ!?そんな貧弱そうな奴でもなにかあったらどうする!!さっさと拘束しろ!」
矢継ぎ早に言葉を発するおっさん。
だが、周りの元々部屋にいた奴らは動けない、声を発せない。
「おい!なにをしてる!!さっさと拘束せ...ん、か....」
それに対する返答はナイ....あるのは虚ろな瞳から向けられる空虚な視線だけだろう。
やっとこさ、緊急事態であることを悟ったおっさんは警戒心を露わにし、織夜に向かって言った。
「貴様....一体、なにをしたッ!!」
ほんの少しは頭が回るらしい。
だが、警戒したところでどうにもなるまい。
先ほどから邪魔されてばかりなため、若干威圧感を加えながら、静かに言った。
「残された道は1つ。今すぐ俺をもとの世界....いや、もといた場所に帰すことのみ・・・でなければ今すぐに....」
「シヌダケダ」
2人がおらず、気が立っていた織夜はそういう選択肢を出すことしか出来なかった。
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