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抵抗
抵抗
息絶えそうな蟻を見ていた
長閑で平和に過ごしただけの
小さな夜に
ピクッと動いてはすぐ止まり
定まらない瞳のように
起き上がることはなかった
何も殺せなくなって
暖かい布団に嫌気がさして
この世界の生き者が
達磨落としになってって、
それを見ているだけの自分がいる
何事もなく過ぎた夜でも
もがき苦しむ者たちがある
今、
死にそうな
痩せこけた手で
贅沢な私たちを掴もうとする
汚れた手もある
忘れてしまいそうなことはすぐ近くに
平和が当たり前ということも
私たちが今ここにいるという奇跡も
内ポケットにしまっておけば
いつでも取り出せる
決して平和ではなかった
小さな夜にでも