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5,不良ですけどなにか

 「お前が宇田川か、頭悪いの?一人で来やがって。室戸はどうしたよ」

嫌味に笑う今西の前には、うなだれて蹲る高階がいる。

天が谷公園の東屋の前に陣取って、南中の黒い学ランが6人、真ん中で今西が踏ん反り返っている。


 今西は、目の前の高階を足蹴にして「こいつのケジメ、どう着けるんだ、金は持ってきただろうな」

中ランにパーマ頭の今西が、どこかで聞いたような悪人のセリフを吐く。笑ってしまいそうなセリフの筈なのに、宇田川には笑えなかった。


「お前か今西ってのは、うちの高階がカツアゲしたってのは本当か」宇田川が、感情を抑えて訊く。

「おいおい、恐えー顔しちゃってよ、俺らに何するつもりだよ、被害者だぜこっちは」

高階の頭を持ち上げ「おい教えてやれよ、クックック」と、不気味にわざとらしく顔を歪ませて笑う。不快な笑いだ。

「す、すいません」と、高階がしゃがれた声で答える。


 宇田川には、信じ難い話しだったが、その答えで十分だった。一つ大きく息をついた。

「す、すいません」高階の声が消え入りそうな声で続ける「すいません・・・」

「ケジメは俺が取る。好きにしていいから、そいつを開放しろ」そう言うと、仁王立ちの姿勢を取る。


「はぁ、それで詫びてるつもりかよ」

今西は、立ち上がって宇田川に掴み掛り、殴りつける。肉を叩く鈍い音が響く。

 無抵抗で受ける宇田川に「カッコつけてんじゃねえぞ」と、怒鳴りながら右拳で殴る。

 宇田川はフラつきながらも、今西を睨みつけて、また仁王立ちの姿勢に戻る。


「UMAとか言ってイキがってねーで、跪けよコラ」

 今西が興奮して蹴りつけて地面に転ばせ、また蹴りつける。

 土埃が舞う中、宇田川が立ち、その目がまだ今西を睨むので「このやろう」と、殴りかかる。

 次第に疲れて肩で息をしているが、今西はまだ気が収まらずに「川名が調子に乗ってんじゃねーぞ」と、勢いよく蹴りつけようとした時だ。


「まて、今西っ」叫んで止める声がして、その場にいた皆が振り向いた。

今西の振り下ろした足は止まらずに、宇田川を蹴り抜いた。

「うぐっ」と、堪らず声が漏れる。

 自分の蹴りが効いたのだと、したり顔の今西に大原が走り寄る。

「大原、やっと来たのかよ、おせーよ」と、言い終わる前に詰め寄り、右で殴り、倒れそうな今西を左で捕まえて、更に右を3発入れた。今西が「ぐう」とも言わず、沈む様に倒れ込む。


 周りの南中の連中が挨拶も忘れて呆気に取られ、思い出したように後輩が「コンチャース」と声を張り上げ、3年が「大原どうした」と、声を掛ける。

「土井、来い」と、後から付いて来た土井を呼び、「ほらっ」っと顎で合図する。集まってた面々がザワつく中で、土井が、宇田川の前に膝をついて座る。


宇田川も同じく呆気にとられ、端で起きている事を見つめながら体を起こした。

「宇田川だよな、今回の事はこの土井と、今西がやった事なんだ、川名にカツアゲやらせたのもこいつらだ」大原が真相を簡単に話すと、集まった者達がザワつく。

 土井が、手をついて頭を下げて「ズイバセンでした」と、宇田川に向かって必死に声を張って謝罪した。


「か、川名なんぞに・・・あ、あたま、下げてんじゃねえよ」

 倒れたままの今西が、絞り出して声を上げた。

「今西、大丈夫か」その場にいた3年が駆けつけ、手伝って上体を起こす。息をついて今西が話す。

「大原、何の真似だ、せっかく川名潰せるところだったのによお」

「川名を潰すだと、誰がそんな事しろって言った」

 大原が、今西を見下ろして返す。


「お前がそんなだから、俺らが仕組んだんだろうが。おめえの強さがありゃあ、南中はもっと上行けるんだよ、ここら一帯だってシメられんだ。欲張らなくてどーするんだよ、おめえ一番目指すんじゃねえのかよ」

 今西の声に怒気が含まれ、前のめりになり声が大きくする。

「今西よお、俺だってつっぱってりゃ、自分がどれだけ強いのか知りてえよ、上目指せば一番になれるんならそれもいいよ。ただ、今回はよ、やり方が駄目だろ、そんなんじゃ一番になんてなれねえ、クズになるだけだ」

 大原は言い聞かせるように言った。

「チッ、おれら、不良だぜ、欲張って何が悪いよ」

 今西が力なく肩を落として溢す。


急な展開に、皆が理解が付いて行かないでどよめく。一番呆気に取られてたのは宇田川だった。

 頭を下げる土井の後から、斎藤が遅れて宇田川に駆け寄り「先輩」と、肩を貸して立ち上がるのを手伝う。


「あんたがアタマの大原か、なるほどの貫禄だな」と、立ち上がって大原に近づく。二人が対峙して、また緊張が走る。

「悪いのはこっちだ、気が済まないなら、好きにしろ」そう言う大原に敵意は無い。

「やらされたんだか、何だか知らねえけど、ウチの高階がカツアゲやった事は事実だろが」

 大原の肩をポンと叩き「これでケジメな」と、ふらっと歩き出す。


 思い出したように振り返って、宇田川が言った。

「お前らが来るなら、いつでも相手になるぜ。ウチにはよ、お調子者の優男と、すぐ一人でなんでも動こうとする大男がいてよ、こいつらホント勝手だから、まとめ役は結構大変なんだけど、でもまあ、ウチは強いぜ」

「知ってるよ」と、大原が鼻で笑った。


 斎藤が「大丈夫ですか」と、支えようとする。

「んだよ、平気だから、お前は高階を連れて来い」と、突き放す。


 斎藤が「あの、青野先輩が」と言いかけるが、宇田川がさえぎって、

「知らねーよ」

 

張り出すように繁った若葉の緑が、傾きだした西日に照らされてキラキラ光り、宇田川の背中に反射していた。


「おい、斎藤」

「はっ、はいっス」

「ゆーまって、何よ」


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