転校生は食事をする
四時間目が終わって昼休みの時間になると、再び私の机にクラスメイトが集まって来る。
まあ、私が「周りの迷惑になっちゃうから昼休みまで話し掛けるのは待って」って言ったからなんだけど。
私は弁当を持って来ているからどこでも食事が摂れるけど、学食で食べる人達も多いから、食堂に行ってみる事にした。前の高校では食堂は使わなかったから、ちょっとだけ楽しみだし。
二十人近くの大所帯になってしまったけど、ここの食堂には大人数用の机があるらしくて、十人十人で分かれて座る事が出来た。
誰が私と同じ机に座るかで揉めて、結局じゃんけんまでしていたみたいだ。まあ、私には関係の無い話かな、うん……。
同じ机の人達が食事を持ってくると、みんなでいただきますをしてから食事を始める。
食事を始めてすぐに、近くに座る男子生徒が質問してきた。
「天城さん、山瀬と何話してたの?」
私と山瀬くんが付き合わないか警戒でもしてるのかな~。そんな事にはならないと思うけど。
「う~ん、世間話みたいな?勉強ばっかりしてたから、理由を訊こうとしてただけだよ」
「そうなんだ……。アイツとはあんまり話さない方がいいよ」
「それは、なんで?」
突然の言葉に驚きつつ、理由を尋ねる。
男子生徒は真っ直ぐな疑問の視線にたじろぎつつも、私の質問に答えた。
「アイツ、元々もっとレベル高い高校行こうとして、落ちて滑り止めのここに来たって噂があるんだよ。だから多分、俺らの事馬鹿だと思って見下してるから、誰とも関わってないんだよ。だからアイツとは話さない方がいい」
高校受験云々はどうか知らないけど、少なくとも、私達の事を見下しているという事は無いと思う。
話した感じからして、ただ単に勉強がしたくて……焦っている?様な雰囲気しか感じ取れなかった。
そう、彼は何かに焦っていたのだ……理由までは分からないけど。
脱線しかけた思考を元に戻し、男子生徒に質問を重ねる。
「それ、本人が言ってたの?ただの憶測だよね?」
「え……うん、まあ、そうだけど……」
「ただの憶測とか噂で人を下げるのはあんまり好きじゃないかなぁ。それに話した感じ、見下された様には思えなかったけど?」
「え……あ……ごめん……」
私の言葉を受けた男子生徒は、まるで飼い主に叱られた子犬の様にしゅんとしてしまった。
別にそこまで強く言ったつもりは無いんだけど……。
落ち込んでしまった男子生徒をフォローするかの様に、女子生徒が話し始める。
「でも実際、何か話し掛けても、最低限の言葉しか返さないしね……。なんだか、私達と会話する気が無いです、って言ってるみたいな?」
「……あー、確かに」
それはちょっと分かるかもしれない。
でも多分、それにもちゃんとした理由があるんだと、私は思う。
普通の男子高校生は、あんなに焦って勉強しない。受験生ならともかく、私達はまだ一年生だし……。
まあでも、私がそこまで必死に彼を庇う理由も無い。
ただ誰かの悪口を言う空気は嫌いなので、話題を変えよう。
「ねえねえ、私まだみんなの名前知らないんだけど――」
食事を終えて教室に戻る。
昼休みはまだ残ってるけど、席を占領し続けるのは迷惑だし。
男子生徒達は早い段階で遊びに行ったので、教室に戻るのは女子生徒だけだ。
教室に入ると、一番最初に目に入ったのは、机で参考書を広げている山瀬くんだった。
……あれ?教室出る時も同じ事してた様な……?
私が山瀬くんを見詰めて唸っていると、周囲の女子達が勘違いを始める。
「なになに、琴葉ちゃん、山瀬くんが気になるの?」
「まあ勉強出来て落ち着いてて、大人っぽいもんね……ちょっと分かるかも?」
「でも見た目が無頓着だからなぁ……」
「付き合ったら好き放題改造出来るじゃん?」
「確かにー!」
私を無視して好き放題会話を広げていく女子達に、私は焦りながら両手をわたわたと振る。
「そんなんじゃないよー。ただ、出る時も勉強してなかったかなー、って思っただけで……」
「あー、そういえばそんな様な……?」
「よく見てたねー」
「まあ私らが食べてる時に食べてたんじゃないの?」
一部未だに茶化してくる子も居たけど、私は最後の意見に納得したので、それ以上は考えない事にした。
流石の山瀬くんでも、ご飯食べずに勉強するとか無いだろうし。
山瀬くんの事を意識から外した私は、残りの昼休みを女子達と話して過ごした。
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