優等生は受け答えする
二時間目が終わり、また付近の様子を窺う。
今度も天城の周りにクラスメイトが来る様子は無い。
興味を失われる様な発言でもしたのだろうか?
「なあ、お前何か変な事言ったのか?ホームルームの後は群がられてたのに、なんで誰も来ないんだ?」
気になったので、本人に直接聞いてみる事にした。
天城は少し驚いた様な顔をした後、首を横に振った。
「転校初日にそんなやらかししないわよ……。まあ、理由は自分で確認したら?」
「いや、出来ないんだが……」
俺は入学初日から今の様な動きをし続けた結果、恐らく周りの人間から『話し掛けづらいガリ勉陰キャ』の評価をされている。
その為、話し掛けてくる様な相手も居ないし、また話し掛ける相手も居ない。
「なんで?」
その事を知らない天城は、無邪気に理由を問うてきた。
「こんな見た目の奴に進んで話し掛ける奴はそうそう居ないだろ……」
「ここに居るじゃない」
「じゃあお前が異常者なだけだ」
「えっ、それは酷くない!?」
実際異常者だろう。
容姿端麗で転校生ともなれば、話し相手には飽き足らない筈なのに、俺みたいな勉強ぐらいしか取り柄の無い陰キャに話し掛ける事を選ぶ奴は、100人中0人だろう。
「で、結局なんでお前の周りに誰も寄って来ないんだ?」
会話がズレていきそうになったので、路線を元に戻す。
「んー、まあ……山瀬くんは勉強がしたいみたいだし、昼休みまで一旦話すの待って~って言っただけ」
「……はぁ?」
予想外の答えに、思わず手に取った教科書を落としそうになった。
何を言っているんだ、コイツは?
「だって、周りが騒がしかったら迷惑でしょ?他にも話し掛けてこない何人かの女子とか、迷惑そうにしてたし……」
「ああ、なるほど」
危うく、俺の為にやっている事かと勘違いして恥を掻く所だった。
もしやわざとやっているのか?
ともかくまあ、そういう事なら遠慮無く勉強させてもらおう。
「でさでさ、山瀬くんって頭良いの?そんだけ勉強してるし良いよね?」
「……お前さ、迷惑だからってさっき自分で言ったよな?」
「言ったけど?」
「この状況、迷惑以外の何物でも無くない?」
俺は自身の机に広げた教科書とノートを指差し、次いで天城の顔を指差す。
これが迷惑で無ければ、一体何が迷惑になるというのか。
「こんな美少女に話し掛けてもらえるのを迷惑とか……見る目無いね」
やれやれ、と言った様子で溜め息を吐く天城。
凄いムカつく。
「なんというか……残念な奴だな、お前……」
ムカついたので、哀れなものを見る目で見てやった。
「その憐れみの視線やめてもらえる?」
「いや、実際哀れだし……」
「何がよ!」
「……無駄に自己評価が高い所?」
「山瀬くんが低いだけじゃない?」
「俺は自分に対して適切な評価しか下した事は無いぞ」
友人ゼロ、ガリ勉、身嗜みに無頓着の陰キャ。
これが俺の客観的な評価であり、主観的な評価だ。間違っている事は言っていない。
「まあ確かに見た目はみすぼらしいけど……勉強出来るっていうのは凄い事だと思うわよ?」
「サラッと刺すな……。裏を返せば、勉強以外出来ねえって事だけどな」
褒めてるのか馬鹿にしているのかよく分からない天城の発言に、俺は肩を竦める。
見た目がみすぼらしいは大きなお世話だ。俺も別に好きでこんなボロっちい制服を着ている訳では無い。
「そもそも勉強なんて誰でも出来る事だろ……しようとしないだけで」
「しようとする事が凄いのよ、まず」
天城のその言葉に、俺は思わずポツリと呟く。
「……しなきゃいけない理由があるからな……」
「え?なんか言った?」
「なんでもない。お前は早く次の授業の準備をしろ」
聞こえていない様だったので、少し安堵しつつ誤魔化した。
天城は俺の誤魔化しに気付く事無く、「はーい」と言って授業準備を始めた。
その後も、天城は授業間休憩の度に何かと話し掛けてきた。
適当にかわして勉強をしたかったのだが、無視したり適当な返しをするとうるさかったので、全く勉強が出来なかった。
「……流石に昼休みは集まって来るんだな」
各々の弁当を持って天城に近付くクラスメイト達を見やり、そう呟いた。
どうやら、天城達は食堂で食べるらしい。弁当を持って来ていない人も居るから、そこに配慮しているのだろう。
まあ、俺には関係の無い話だ。
俺は騒がしく教室を出て行く彼らを横目で見つつ、自身の鞄から参考書を取り出した。
少しでも面白いな、と思って頂けたら、感想・評価・ブックマーク等して下さると非常に嬉しいです!今後の活動のモチベーションになります!




