3.見えないお化け
お母さんは台所で、あしたの朝ごはんの準備をしていました。ふたりのアサコちゃんはお化けから逃げたい一心で、お母さんのかげにかくれました。そしてお母さんに言います。
「お母さん、助けて。お化けが来るのよ」
「お化けですって? そんなもの、いるわけがないでしょう。夢でも見たのよ」
はたして本当に夢なのでしょうか。ただの夢にしては、あまりにもお化けの形がはっきりと見えるのです。
「お母さん、よく見ていてよ。向こうからお化けがやってくるから」
その言葉とともに台所に入ってきたのはお父さんでした。夜遅い仕事から帰ってきたところなのです。それを見てお母さんは笑いました。
「どこがお化けなのよ。お父さんじゃないの。お帰りなさい、お父さん」
「ああ、ただいま。お化けがどうしたって?」
「アサコったら、お父さんのことを、お化けが来るなんて言っていたのよ」
それを聞いてお父さんも笑いました。
「まいったなあ。アサコにお化けだなんて言われちゃあ、まったくかなわないよ」
と、そのときです。お父さんの横からお化けが顔をのぞかせました。思わずふたりのアサコちゃんは叫びました。
「きゃあ、お化け」
これにはお父さんもびっくりです。
「アサコ、どうしたんだい。お父さんはお化けなんかじゃないよ。ほら、ちゃんと足もあるだろう」
「ちがうのよ。お父さんのとなりにお化けがいるのよ。そのお化け、アサコのことを追いかけ回すのよ」
お父さんはまわりを見回したあと、不思議そうな顔をして言いました。
「お化けなんていないじゃないか」
お母さんも同じように言います。
「お化けなんていないわよ。アサコったら、まだ寝ぼけているのね」
「そんな。そこにお化けがいるのにふたりとも見えないの? アサコのことを追いかけてきたのよ」
どうして、お化けはアサコちゃんにしか見えないのでしょうか。




