1.お化けの夢
アサコちゃんは朝がきらい。なぜって、せっかく楽しい夢を見ていても、目覚めなくてはならないからです。今朝もなかなか起きないでいると、お母さんに布団をはがされてしまいました。
「どうして起こしたのよう。とっても楽しい夢を見ていたのに」
なじられてお母さんはたじたじになってしまいました。
「わかりました。あしたからは起こしませんよ。そのかわり、自分で起きるのよ」
「そのくらい、できるわよ。だから、あしたはぜったい起こしちゃいやよ。アサコは楽しい夢を見るんだから」
「はいはい」
夜が来ました。今度こそ、楽しい夢を最後まで見られるかと思うと、アサコちゃんはわくわくする気持ちでいっぱいです。布団にもぐるアサコちゃん。さあ、いよいよ心おきなく楽しい夢が見られます。
「今夜はどんな夢が見られるのかしら。楽しみだわ」
あんまり楽しみなので、アサコちゃんはしばらく眠れませんでした。それでも一時間もするころには、寝息を立てて眠りはじめました。アサコちゃんはどんな夢を見ているのでしょうか。アサコちゃんの夢をちょっとのぞいてみましょう。
アサコちゃんの夢のなかはなんだかとっても暗くて、冷たい風が吹いていました。どこからともなく薄気味の悪い太鼓の音がどんどろどろどろと聞こえてきます。空にはねずみ色の雲がうずまいています。これが楽しい夢なのでしょうか。
しめっぽい大地の上にアサコちゃんが立っているのが見えました。アサコちゃんもどうやら今夜の夢がいつもとちがうことに気づいたようです。小首をかしげて空を見上げています。
「ここはどこかしら。いつもの夢と様子がちがうわ」
アサコちゃんがそう言ったときでした。いつの間にやってきたのか、アサコちゃんの後ろにお化けが現れたのです。白い布を頭からかぶったような体で、両足がなく、宙に浮いています。まわりにはぼんやり火の玉が浮かんでいます。アサコちゃんは思わず夢から飛び起きました。
「気持ちの悪い夢だったわ」
アサコちゃんは布団のなかでたくさん汗をかいていました。二階の部屋から一階へおりて、リビングルームまで行くと、お母さんがテレビを見ていました。アサコちゃんがテレビをのぞきこむと、なんとテレビ画面にもさっきのお化けが映っています。
「きゃっ」
思わずアサコちゃんが叫んだときです。お母さんがふり返りました。
「あら、アサコ。どうしたの」
ところがそのお母さんの顔も、さっきのお化けの顔になっているではありませんか。アサコちゃんは二階にある自分の部屋へ逃げかえりました。すると驚いたことに、二階はさっきの、暗くて、冷たい風が吹きぬける、薄気味の悪い世界になっています。
「ここはどこなの。アサコの部屋はどこへ行ってしまったの」
はるか遠くに小さな家が見えました。アサコちゃんはその家に向かって走っていきました。近づくにつれて、そこが自分の家とそっくりなことにアサコちゃんは気がつきました。ドアを開けてなかに入ると、リビングルームのほうからテレビの音が聞こえてきます。アサコちゃんは真っ先にリビングルームに向かいました。
そこにはお母さんがいました。さっきと同じようにテレビを見ています。アサコちゃんは、またお母さんの顔がお化けの顔になっていたらどうしようかと思いましたが、思い切って言いました。
「お母さん、お母さん。アサコ、怖い夢を見たのよ」
ところが、です。お母さんはアサコちゃんの声がまったく聞こえていないかのようにふり向いてもくれません。そのうちにテレビを消して、二階へ上がっていってしまいます。いったい、どういうことなのでしょうか。アサコちゃんはお母さんのあとについていきました。




