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練習開始

校庭に朝日が差し込み、リアム・フジサワはトレーニングウェア姿のキタサンブラックとサトノダイヤモンドを前に立たせた。


「さて、今日から選抜レースに向けた練習を始めるぞ!」


キタサンはにこやかに拳を握りしめる。

「はーい、トレーナーさん! 今日も全力で駆け抜けますよ!」


ダイヤは少し照れくさそうに頭を下げる。

「……はい、トレーナーさん。よろしくお願いします」


リアムは二人の前に立ち、メニューを説明する。

「まずはウォームアップとして短距離のダッシュを数本。その後に持久力トレーニングと曲線走行の練習を組み合わせる。体力とレース展開の両方を鍛える感じだ」


キタサンは手を叩き、元気よく答える。

「了解しました! トレーナーさん、任せてください! いっぱい走って、いっぱい笑います!」


ダイヤも穏やかに微笑む。

「……私も、精一杯頑張ります。トレーナーさんの期待に応えたいですから」


三人は息を合わせ、校庭に飛び出した。風を切る足音、笑い声、そして真剣な眼差しが交錯する。数本のダッシュと持久走、曲線走行を終えた頃には、二人の呼吸も少し乱れ始めていたが、達成感に満ちた顔がそこにあった。


夕暮れが校庭を染め始め、三人は芝生に腰を下ろす。汗をぬぐいながら、キタサンがぽつりと言った。

「ふう……今日もいっぱい走ったね、トレーナーさん」


ダイヤも頷く。

「……はい。楽しかったです。でも、なぜ私たち二人を選んでくれたのか、気になっていました」


リアムは少し笑みを浮かべ、肩越しに空を見上げる。

「ふふ、まあ、その話をするにはちょうどいい時間だな。今日は君たちと本気で向き合ってみたかったんだ。だから声をかけた」


キタサンは目を輝かせる。

「本気で向き合ってくれたって……それって、私たちのことを信じてくれるってことですか?」


ダイヤも小さく笑みを浮かべた。

「……そうですね。私もその気持ち、嬉しいです」


三人は芝生の上に座り込み、沈む夕陽を眺めながら、リアムは「なぜここに来たのか」を語り始めた。

夕陽に照らされる芝生の上で、三人は少し息を整えながら腰を下ろした。汗に混ざる風が心地よく、練習の疲れを和らげる。


キタサンが小さな手を胸に当てて、少し恥ずかしそうに口を開く。

「トレーナーさん……どうして、私たちを選んでくれたんですか?」


リアムは肩越しに沈む夕陽を見ながら、少しだけ口元を緩める。

「うん……正直に言うと、俺には日本に来た理由があってね。でも、それは社会には言えないことなんだ。だから表向きには、“母の故郷のウマ娘たちに会いたくて”ってことにしてある」


ダイヤは目を丸くして、少し驚いた表情を見せる。

「……社会には言えない理由……ですか」


リアムは笑いながら首をかしげる。

「まあ、簡単に言えば……運命の人に出会いたくて、ここに来たんだ」


キタサンは少し間を置いて、耳をぴんと立てて言った。

「運命の人……? トレーナーさん……それって……」


ダイヤも小さく微笑む。

「……私たちのことですか?」


リアムは首を横に振ることなく、二人の目をまっすぐに見据えた。

「いや……それはまだ、これから分かることだ。でも、今日一緒に走ってみて……なんとなく感じたんだ。君たちとなら、すごく特別な時間を過ごせる気がするって」


キタサンは頬を赤くして、少し照れた声で答える。

「そ、そんなこと……言われたら……私、もっと頑張らなきゃって思っちゃいます」


ダイヤは穏やかに笑いながらも、少しだけ意志の強さを宿した目でリアムを見つめる。

「……私もです。トレーナーさんに認めてもらえるように、もっと強くなりたいです」


リアムは笑顔を崩さず、二人の肩に軽く手を置いた。

「よし、なら約束だ。君たちが栄光を掴むまでの間、俺たち三人で全力で走ろう。これからの練習も、戦略も、全部一緒に考えよう」


キタサンは小さく拳を握り、元気に叫ぶ。

「はいっ! トレーナーさん、今日からよろしくお願いします!」


ダイヤも静かに頷き、柔らかな微笑みを浮かべる。

「……よろしくお願いします、トレーナーさん」


リアムは二人のやる気に微笑み返し、立ち上がる。

「よし、最後にストレッチと深呼吸だ! 選抜レースで最高の走りを見せるために、明日も全力で行くぞ!」


夕陽に染まる校庭に、三人の足音と笑い声が響く。練習の汗はまだ流れ続けているけれど、心は確かに結ばれ、これからの挑戦に向けて走り出す準備は整ったのだった。

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