アウトサイダー第二話【〜好奇の瞳に晒されている〜】
得体のしれないナニカ、とは何なのか。主人公達は一体何をされ生きているのか。
ぜひ考察も含めて読み進んでほしい
半開きのカーテンから覗いた、まだ昇ってきたばかりの日差しが頭を掠める。それが眩しくて、僕は思わず目を閉じた。
ふああ、と呑気なあくびをかましながら、お世辞でも広いとは言えない小ぢんまりとしたベットから身をおろす。時計に目をかざすと、まだ五時三十分じゃないか。
「ちょっと早く起きすぎちゃったかな」
朝の日差しが眩しい。まだ寝ぼけ眼のままで、寝間着から普段着に着替える。その質素な洋服は丁寧に畳まれ、特定の場所へ置かれた。
「やっぱまだねみぃ....」
眠気に襲われ、またまた大胆に大きなあくびをする。寝たいけど、二度寝厳禁。我慢しなければ。
水道で、顔を洗う。朝一の水道水は、とびっきり眠くても無理やり起こされるくらい冷たい。ぴちゃぴちゃと自分を叩き起こすように水をかけ、洗い終わると、使い切り用の簡易タオルで滴る水を拭き取る。
洗面台の鏡に目をやると、寝ぼけていて虚ろな瞳をした自分が映ってちょっと眠気が覚めた。
やっと視界がはっきりしてきた頃、僕は部屋の一番隅にあるボタンを押す。
すると、即座に朝食と制御用カプセル二錠、体調チェックリストが提供された。
「ありがとうございます」
誰も居ないがお礼を言う。そして、朝食諸々を手にとろうとしたところ、誰かに呼び止められた。
「今日は少し厳しくなりますからね」
その声は上、天井から流れてきた。
「、分かりました」
分かっていても、きついもんはきつい。体が拒絶反応を示しながらも、僕はそこら辺の地べたに座って朝食を食べ始めた。
「今日はパンか..」
しかも石のように硬いじゃないか。せっかく一日が始まって、最初に口にするものだと言うのに最悪だ、と苛つきながらも、僕はそれをぼそぼそと口にする。
「...ん?てかカビ生えてね?」
一口齧った後に気づく虚しさに僕は失望する。もう胃の中にぶち込んでしまったので、仕方なく飲み込んだ。さほど見た目に変化がないのがこれまた苛つく。何か体に害がないか心配だが、お腹が言う事を聞かないので僕は、そのカビ生えた硬いパンを齧る。
朝食はこれだけ。あとは制御用カプセルを胃に流し込む。昔から、錠剤とかの薬を服用するのがどうも苦手で、大人になった今でも恐怖心は消えていない。
「ッう」
ありったけの水と共にカプセルを流し込んだ。カプセルが水で溶け、薬特有の苦みを感じて美味しくない。
いつも一回一回カプセルを飲むだけで大量に水分を取る。そのせいで、かなりお腹が膨れてしまう。それは僕が錠剤を飲むのが下手なだけだけど。このままジリジリしていてもどうにもならないから僕はそそくさにカプセルを口に運んで飲み込んだ。
かれこれ此処に来てから、必ず毎日このカプセルを飲んでいる。何のカプセルかは知らない。不確かな情報だが、同僚は体を制御する薬と言っていた。何故体を制御しなければいけないのか、今の僕には知ったこっちゃない。この先、そんなことよりもっと謎に包まれた事があるはずだ。
あーだこーだ考えながら、最後に体調チェックリストを手に取る。
「...さっきのパン大丈夫かな、いけるか?」
『体調チェックリスト』
□熱が36.9度以上あるような感じがする
□頭がクラクラして焦点が合わない
□体が重くて動けない
□臙脂色の痰と咳がでる
□現実じゃないような気分になり幻覚を見ているような感じがする
「多いな」
チェック箇所が案外細かくてびびる。なんだよ、幻覚を見ているような感じがするって。僕は今のところ正常な人間だ。
「、、、まあ大丈夫そうだな」
自分が正常な事を確認して、僕は”異常なし”と記入した。
朝にすべき事全てが完了し、再び僕はボタンを押した。そして、体調チェックリストと先程カプセルを飲んだときに使ったコップを扉の前に置いておく。
一通り終えると、僕は部屋から出されて個室に案内される。がちゃ、と扉を開くと平凡な白い壁。真ん中にぽつんと置かれた古い椅子が鎮座していた。
「そこに座りなさい」
男性に命令され、僕は椅子に腰掛ける。今日は何をされるのだろうか、と僕はうつらうつらと考える。
御免だが、待っていてくれ、と男性が部屋を出ていった。
「......」
狭苦しい部屋に、静寂が流れ僕の呼吸音だけが響いている。
此処は何かの実験場であった。一体、僕達人間に何をしているのかは誰にも分からない。
毎朝きっちりと決まった時間に起こされ、朝食と得体のしれないカプセルを体に流し込む。そして何故するのかも想像がつかない体調チェックリストを記入させられ、一日が始まる。
特別不自由って訳じゃない。寝床もあるし、食事も提供される(腐っているものがでるのがたまにキズ)。
一般人から見たら、僕達の部屋はいたって普通だ。
成人男性がぎりぎり寝れるベッドに、顔を洗ったり歯を磨いたりするために使う洗面台。
しいて言うのなら、天井にスピーカーと恐らくだが監視カメラがあること。少なからずとも、これは普通じゃない事は誰にでも分かる。僕達の行動を監視しているナニカがいるってことだ。
今も、きっとどこかで監視されているだろう。すると、上から声が聞こえてきた。
「今日はこれでもう終わりだ、部屋に戻りなさい」
思いの外早く終わった事に、僕はほっと一息つく。今日はこれだけか、といつもよりも厳しくなると言っていたから何となく寂しくも感じる。
「...流石にそれはないわな笑」
一旦正気を取り戻して、僕はゆっくりと部屋に戻っていった。
部屋に戻ってくると、時計を見て思わず二度見をする。もう夕方の五時じゃないか。
全然早くなんかなかった事に、僕はちょっと気分が落ち込む。すると、扉の外から夕食とまたお馴染みのカプセルが出てきた。夕食を取る時間を過ぎていたらしく、中々ボタンを押さない僕に苛立ちをみせたらしい。
夕食を手にとって、今日はベットの端にちょびっと腰を掛ける。そして、トレーにのった食事を見て僕は呆れた。
「...またパン?」
正直、これを作ったコックを呼び出したいくらいだ。
味はどうかと思えば、朝食に食べたあの腐ったパンよりかはマシだった。ここ最近日本食を食べていないな、と若干飽きつつあるパンを齧りながら呟く。パンを食べ終わると、僕はまたカプセルを手に取った。
いける。大丈夫。僕は、一気にカプセルを二粒飲み込んだ。
そして、着替えを済ませベッドに入る準備をする。九時には全ての電気が消灯し、眠りにつく時間だ。
僕は布団に潜って眠りについた。
いつもコピーのように繰り返される日常。得体も知れないナニカに監視されながら過ごす毎日。こんな世界で、僕達は生きている。
いかがでしたでしょうか
読み応えあったなあ、またちがう短編も読んでみたいなあと少しでも感じていただけましたら、ぜひポイントをくださると光栄であります




