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メディシン −命の叫びの代弁をする2人の作曲家−  作者: 浅野翔太(小説家&アイドル)
S1第一章 「メディシンの音楽と2人の音楽って?」
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S1第一章 2話 「癒しのフリータイム 純貴視点」

純貴「ただいま!」


純貴母「おかえり」


学校の荷物を置き、玄関に掛けてあるレッスン用の荷物を持ち、制服は着替えずにそのまま行く。

今は、16時20分

事務所近くの、最寄り駅に着く電車が来る時間が25分

のんびりと着替えたりする時間がない。



純貴「行ってくる!」


純貴母「頑張ってね」


玄関から全力ダッシュで向かい、なんとか電車が来る前についた。




俺はイヤホンを両耳につけ、昨日メッセージに送られた、巧さんの仮歌が入っている、未完成の音楽を聴く。

【※仮歌とは、作曲家がレコーディング前に、歌手に曲のニュアンスや世界観などを伝える為に一時的に入れられる歌のこと。今回はメロディーを伝えるため】



半年前から、俺が作詞、巧さんが作曲とMIXをして音楽を作っている。


今、4曲目を作っているのだが、レコーディング以外は完成してて、昨日事務所で会った時に、メッセージに仮歌を送られた。

昨日の夜、そのレコーディングが終わり、巧さんにデータを送り、事務所のレッスン後に、「完成された音楽」を聴く。



イヤホンから、力強くコードを奏でているシンセ、裏にドラムの音が一定のリズムで聴こえる。

そして、巧さんの明るく真っ直ぐ伝わる歌声


巧さんが作るメロディーは、心臓の鼓動がドック、ドック、と強く重く跳ねて「生きているんだな」という感覚になる。


いつか2人で一緒のステージに立って歌いたいと思っているんだ!



駅構内アナウンス「まもなく、3番線に雲雲(もくもく)。松種行きの電車が到着します。白線の内側でお待ちください。」



曲を聴いて色々考えていると、あっという間に時間が経って、電車が駅のホームに入り減速して止まった。


左右にスライドさせた大きな口に、人が入ってくることを待っている電車に俺は乗り込んだ。




電車に乗り込み、電車の端の席に座った。

この時間は、下校途中の学生はいるが、人が空いている。


と、目の前の左端に、制服を来ている俺と同じぐらいの学生が、「やっと家に帰れる〜」と少し疲れている表情で座っていた。

きっと、俺と降りる場所が一緒なのだろう。


この子は、住んでいる所から遠い学校に行ってて、帰る途中なのかもしれない。

制服が知っている限り、俺の地元にある高校のどの制服にも当てはまらなかったからだ。


そりゃ、疲れるよな

学校もあって、登下校も大変だし



車内アナウンス「次は、松種、松種です。お出口は左側です。」

アナウンスが終わると同時に、左側のドアが開く


俺は、さっきの子をみて、「これから帰りか〜、羨ましいな〜」と思ったが「グループを組んで、デビューするんだろ」と自分を鼓舞して、電車を降り駅から出た。



事務所に到着した

レッスン前に更衣室でレッスン着に着替え、レッスンルームに入る

レッスンは学生だから、途中参加だ


流「伯井!」


入って直ぐに、既に来ていた同期の渡利流(わたりりゅう)に声をかけられた。


純貴「渡利!」


流「昨日のダンス覚えれる?難しいよなー」


純貴「マジでそう!」

「ビスの曲って皆難しいよね」


流「でも、思えないとバックに立てないし…」



ビスとは、EVIDanceの愛称で、うちの事務所(STARMEKER)で、今1番知名度と人気がある5人組ボーイズグループだ。

名前に「Dance」が入っている通り、揃っていて完成度が高いダンスが武器で、それが鬼難しい!



俺ら、練習生は「どれだけ知名度を上げるか」が全てだ。

色々あるがその一つに、先輩のバックダンサーになるというのがある。


その為には、こうゆう難しいダンスを覚えなきゃいけない。


そうじゃないと、俺らの夢である「グループを組んでデビューする」ことが出来なくなる。



ダンス講師「練習再開します」

「伯井 センターで」

「右サイドに金咲 左サイドは川崎」

「他は、後ろに身長順に並んで」


俺は指示通りの位置に移動した。

その途中で俺に向けられる視線と感じながら。

ひそひそと話している人もいた。


後ろからも、流と他の練習生2人の会話が聴こえる


練習生A「今日も、伯井はセンターかー」


練習生B「すごいよなー」


練習生A「俺らには無理だよ…いくら頑張っても、ずっと後ろだもん」


練習生B「努力したって、才能あるヤツには届かないよ」



流「もって生まれたモノには勝てないよ」

「結局、才能ある奴が上に行くんだ」




レッスンが終わり、あの人に会うためレッスンルームに残っている。


巧「ジュン」

向こうから声をかけられた



巧「お疲れ様、疲れたね」


純貴「巧さんもお疲れ様です!」


巧「今日の曲、難しかったよね。」


純貴「本当に!特に間奏のダンスが!」


巧「わかる」


巧さんはレッスンの話だったり、他愛のない話や将来の事を同期と同じ感じで、話せる数少ない先輩だ。


決して“見下している”という訳ではない



先輩も同期もさっきみたいな感じで、俺の事を才能がある奴だと思い込んでいるから、巧さんみたいに対等に接してくれる人はいない。


事務所にいる中で、巧さんと過ごす時間と巧さん自体が癒しだ。



純貴「そういえば、僕らが作った曲…」


巧「あっ、そうだった。 出来たよ」


レッスンルームの壁に2人で並んで寄りかかり、巧さんのスマホで、完成した曲を再生する。



命が震え上がるメロディーと歌声がレッスンルームを充満するを

いつ聴いても、体の温度が沸々と上がる感じがする。


巧「ジュンの歌詞、ストレートでも、ありきたりな言葉にならないのが凄いよね。」


純貴「ありがとうございます。」


巧「歌も安定に上手いし。」


純貴「あっす…」



流石にそこまで褒めれたら照れて言葉が発せなくなる。


色々な人に褒められる機会はたくさんあって、褒められるのは勿論嬉しい。


だけど巧さんに褒められた時は、なんか違う気持ちになる。


なんか…、暖かくなって、くすぐったくなるのだ。


この先も巧さんと一緒に、世間には一生届かない、「2人だけの世界」の音楽を作り続けるのかな…



純貴「俺らの曲が、色んな人に知ってほしいな」

俺は、無意識のうちにそう呟いていた


巧「それじゃあ、やってみる?」

その言葉の意味を理解するのは、聞いてから1分ぐらい経った後からだった。

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