S1第二章 1話 「あの話の全容」
11月9日 事務所 カフェテリア
例の日だ
カフェテリアの椅子に座り、自販機で買ったオレンジ味のソーダを飲みながら、第2会議室に行く時間まで待っていた
そこで言い渡されるのは「クビ」か、それとも…
そういえば、このソーダ初めて買って飲んだけど美味しいな
今度からこれ飲もう
前から見かけてたけど、ダンスレッスンの前だったから、「水分補給でソーダってどうなんだろう?」って思って買うの躊躇ってたんだよな
帰る時も、あのソーダが頭からすっぽり抜けていて、「今度こそ…」って思っても、毎回買うのを忘れる
でも今度からは、あのソーダが売っている自販機は一生使えないかもしれない
だからクビを告げられるかもしれない今日、買って飲んだ
とは言っても、あのソーダが売っているのは事務所の自販機限定ではない
けど、なぜか「この事務所で最初に飲みたい」って思って、今日まで買わなかったんだっけ
どうしてそう思ったのか分からないけど、その願いが叶って良かった
あとは約束の時間の10分前に、会議室に行くだけだ
10分前
カフェテリアから離れて、第2会議室の扉の前にいる
心臓の鼓動と自分を落ち着かせるために、深呼吸をする
そして扉を開けた
えっ!
会議室の中に入ると、俺と同じ無所属の先輩が6人が立って、急に来たこっちにビックリして見ていた
この人達は、10年以上も事務所にいる人達だ
こんな風に考えちゃ悪いが、10年以上頑張って芽が出なかったから、事務所は見切りをつけて、まとめてクビを言い渡されるのかな
考えを巡らせていると、6人の中で一番芸歴がある田中叶太が俺に質問した。
叶太「名前、なんていうの?」
そう聞かれた
すると俺と舞台で共演したことがある永澤健人が
健人「舞台で主演をやった事がある子っす」
叶太「そうなんだ」
「それで、名前は?」
そう言われ、慌てて自己紹介をする
巧「中条巧といいます」
そしてお辞儀をした
叶太「“たくみ”ね〜」
“ふぅ~ん”と流すように言った
丁度その時に…、なんと社長が会議室に入ってきた
柳社長「全員揃ったね」
全員「はいっ…」
急な出来事だったので、全員返事しか出来なかった
柳社長「それじゃあ、単刀直入でいうけど」
柳社長「この7人でグループを組む」
「センターは中条、リーダーは永澤、MCは伊玖磨だ」
全員「えっ!!」
えっ…。センターは、、、俺!?
皆の顔を見る
グループを組めると思っていなかった、俺と同じ反応をしていた
柳社長「ハハハ!驚くよね(笑)」
「グループ名は“CHAMPION”だ」
「このグループで、2カ月後の“Mラボ”に出る」
全員「えーーーーー!!!!!」
Mラボとは、土曜日のゴールデンの音楽番組で、30年以上やっている御長寿番組だ
今でも、家族団欒で見る人達もいるだろう
それに出れるなんて…
伊玖磨「色々、情報量が…多い」
伊玖磨さんが小声でそう呟く
前まで笑顔だった社長が、真面目な表情になる
その表情の変化を感じ取って、俺たちも真剣になる
社長「この出演を公表するのは1ヶ月後」
「それまでは、家族にも話さないでほしい」
「これは、“STARMEKER”が全力を賭けているプロジェクトだ」
全員「わかりました」
柳社長「練習は来週から、レッスンの後に一旦戻るフリをして、レッスン室にまた集まって」
「それじゃあ、解散!」
俺らは会議室から出た
…俺がセンター
何かのドッキリじゃないよな…
グループの結成、そのグループのセンター、Mラボに出れる、あの時間で沢山の情報が入って来るとは思わなかった
グループを結成は俺にとって、事務所に入ってからの夢だ
それを叶える事が出来たのは本当に嬉しい
あとは、このグループでデビューするだけだ
…俺は、センターを務めることができるのかな
そもそも、俺はステージに立つ人間として、実力が備わっているとは思えない
それじゃあ、なんで俺をセンターにしたんだろう
もっと適任はいたはず
俺よりもっと、歌が上手くて、ダンスが上手くて、カッコいい人はいるはず
…なんで俺なんだろう
グループ結成で、多少不安は和らいだ
だけど、新たに湧き出たこの感情と疑問に悩まされる
夢が1つ叶った後も
次回から、【基本·毎週日曜日20時】に投稿します
次回は11月16日20時に投稿予定
※次回は投稿予定を過ぎる可能性があります




