色々とおかしい
……!
やばい! 早く起きないと……あれ?
翌朝、自然に目が覚めた。
なのに私は寝坊したように布団を蹴飛ばしていた。
やってしまったような何とも言えない空気だけが残る。
……何で焦ったんだろう。急ぐ用事なんてないはずなのに。
私は深くため息をついて、今度は丁寧に布団を畳んだのだった。
ドアを開けると、その先ではお母さんが料理をしていた。
そういえば初めて部屋から出るのか。あまり意識していなかったけど。
先に気づいたお母さんはこちらに振り返って、「おはよう」と言う。
「……おはよう」
その後、私はリビングのあちこちを見回る。
居間と台所は同じ部屋。台所の反対に二つのドアがあって……片方は私のいたところ。おそらくもう片方はお母さんの部屋だろう。
お母さんの部屋と思われるドアの横には玄関に続く通路が続いていた。玄関のドアは西洋らしく開戸。シックな厚い木の板で出来ている。
随分とコンパクトな家だ。でも間取りが広いからか苦しくは感じない。
……それにしても、装飾とかないのになんでこんなに気品があるんだろう?
そう不思議に思っていたところ、「ご飯ができたよ」というお母さんの声が聞こえてきた。
「はい」
一つ返事で私は居間に戻ると、机には昨日と似たようなスープとパンが置かれていた。
スープは……昨日の残りなのだろうか、具材が全く一緒の気がする……。
私は席に座り、手を合わせようとしたところで違和感に気づく。
あれ? いま何をしようとしていたんだ?
しばらく逡巡するが本当に訳がわからない。
「どうしたの?」
ハッと気づくと、私は頑張って気にしないようにした。
硬いパンをスープにふやかしながら食べつつ、もう一つ突っかかることを考える。
……そういえば、お父さんはいないんだろうか。
「お母さん、お父さんはどこにいるの?」
「さあ、どこにいるんだろうね」
随分とあやふやな……。それとも考えたくないのかな?
……離婚とか。
いや、ないと信じよう。多分……ない。
………
……
…
朝食を食べ終え食器を片付けていたところ、突然玄関のほうから コンコン、とノックの音が響いた。
するとお母さんはこちらへ振り返り、
「ハンナ、少しここで待っててちょうだい」
と言うと玄関の方へ向かっていった。
誰が来たかわかっているのかな。
気になった私は、玄関から見えないぎりぎりのところまで寄りそっと聞き耳を立てる。
……一応居間だし、言われたことは守ってるから、大丈夫……だもんね。
ガチャンと扉が開く。
「おはよう! ハンナちゃんのママ!」
聞こえてきたのは聞き耳を立てずとも聞こえる、大きくてハキハキとした女の子の声。すこぶる元気な声は、聞いているこちらも元気になりそうだ。
「おはよう、クローラちゃん。ハンナに会いにきたのね? 残念だけど今日も体調がすぐれなくて……」
「えぇ? もう三日も会ってないじゃん……」
これは……多分、クローラちゃんは以前から会っているんだ。それで三日も会ってない……ん?
つまり私は三日ほど寝続けてたの? へえ……。
「じゃあさ、あたしがハンナちゃんの隣にいてもいいよね。なんでダメなの?」
「それは……」
そしてしばらくだんまりとなる。
言い訳で逃れられなくなったのかな。どうするんだろう。
すると、お母さんは覚悟を決めたような声で言った。
「……クローラちゃん、現実を見る勇気はあるかしら?」




