とあるラジオ女子
とある真夏の夜。
いつも聴いてる深夜ラジオ、その生放送の途中で、突如、臨時ニュースが流れた。
「……報道部のヤマザキさん、ありがとうございました。現在、世界各地でゾンビ化テロが発生しています。危険ですので、外へは出ないでください。繰り返します——ラジオの前のあなたへのお願いです……」
「……え、ちょ、聴いてる? これ非常事態だよ!? 非!常!事!態!」
スマホアプリ越しに聴いていたアタシは、慌ててヒロシくんにLINE通話を飛ばす。
「聴いてるよ。でも、ボクらが行くか行かないかは、また別の話でしょ?」
冷静な声でそう返してくるのは、幼なじみのヒロシくん。
ヘッドホンにこだわる、筋金入りのラジオリスナー。
そして、毎週番組にメールを送ってるヘビーリスナーのアタシ。アタシと同じく——いや、ある意味もっと重症な——ラジオオタクだ。
「推しのパーソナリティが危険にさらされてんのよ!?
あんたの推しの、報道部の山崎さんだって、今まさに現場なんじゃないの!?」
「……まあ、そうだけど。行ったところで助けられる保証もないし」
「アタシは行くよ! 推しを助けに!」
「だからさ〜……ボクの話、ちゃんと聞いてる?」
——これは、ラジオがつないだ二人の、ちょっとズレた、でも熱い夜の話。




