夏を制する者は受験を制す
夏を制する者は受験を制す。
私は受験生。
深夜の友はシンの友。
推しのラジオパーソナリティー(レナ)の深夜ラジオを聴きながら受験勉強に勤しんでいた。
1階の台所へ下りて母が作ってくれた夜食の、おにぎりを食べた。
おにぎりも温かかったけれど、なんだか気持ちも温かくなった。
2階の机に戻り、「さてやるか!」
あ、でもんちょっと机とか部屋をかたづけてからにしようかなぁ?
なんて少し整理整頓をしてみる。
不思議と気持ちも少し整った気がした。
再び机に向かった。
机の上に積んである赤い本の問題集たちは手ごわい、手ごわいのだ。
あかん。寝落ちした。
「…危険ですので外へ出ないでください。繰り返します…」
ん?窓の外の遠くの空が不自然に赤いのがわかった。
私は目をこすり、ラジオに耳を傾けた。
「…報道部のヤマザキさんありがとうございました。現在、世界各地でゾンビが発生しています。危険ですので外へ出ないでください。ラジオの前のあなたへのお願いです…」
あれ?えっ何?嘘でしょ?ラジオドラマの?演出的な?
「あ、ああ、あああ……」
(窓の下から気味の悪い呻き声がする。ゾンビがいる?え?)
息をひそめて窓の外の下を覗き込むと、
ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。
(ゾンビ達が玄関のインターフォンにぶつかっている)
1階から母の声が聞こえた。
「はーい、どなたですか?こんな夜遅くに」
「お母さん!出ないで!靴もってこっち来て!」
鍵が解かれる音がした。
玄関の扉のチェーンが大きな音をたてた。
扉が壊されるのは時間の問題だ。
私は、非常用持出袋のリュックをベッドの下から引っ張り出し背負った。
満月の夜。窓のカーテンは揺れた。