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噛まなかったゾンビ

遅い晩御飯の途中、

テレビを見ながらソファでうとうとして――

どれくらいの時間が経ったのだろう。


両親が電話で誰かと話す声で、私は目を覚ました。


「ああ……ああああ……」


体が、うまく動かない。

――ワタシは、ゾンビになっていた。


……なに、これ。

ゾンビなのに、まだ意識があるの?


テーブルの上には、食べかけの晩御飯。

両親はパニックになり、警察に電話していた。


両親を噛みたくない――!

ワタシは強く、そう願った。


床に、弟の鞄が落ちている。

けれど、弟の姿はない。


ということは……ワタシは、弟に噛まれたのだろうか。


弟は、どこへ行ったのだろう。


人に噛みつきたい衝動。

けれど、良心がそれを押しとどめる。

両親に牙を立てることだけは、どうしてもできなかった。


ワタシは、家を出た。


――誰に噛みつくかで、

自分がどんな人間だったのか、わかってしまう気がした。


かっこいい男性? 違う。

子どもはかわいそうだし、老人も、なんだか違う。

……やっぱり、誰にも噛みつきたくない。


ふらふらと彷徨っていると、警官たちに出くわした。

その向こうに、頭を撃ち抜かれた弟の亡骸があった。


弟も、両親を噛みたくなかったのだろう。

拒み、逃げて、そして――ここで終わった。


警官たちは、一応、警告をしてくれた。

だが、すぐに銃声が響いた。


頭を撃たれるのはマズい――

本能的に、なんとなくわかった。

ワタシは、逃げた。


月に照らされ、夜明けまでは、まだ時間がある。

けれど、意識が遠のいていくのを感じた。

もうすぐ、ワタシは人を噛まずにはいられなくなる。


存在の痛みと、記憶の涙が頬を伝い、

地面に滲みこんでいく。


波の音が聞こえる断崖の上。

眼下には磯が広がり、白い波が砕けている。

ここから落ちれば、すべてが終わるだろう。


涙の雫が風にさらわれ、

海へと溶けていった。


――私は、身を投げた

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