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月明かりの跳躍

「あ、ああああああ……あ、あああああああああ!」


瓦礫の下でゾンビたちがもがいている。

崩壊したラジオブースの中で、マイは推しのレナの手を取った。


「大丈夫ですか? 今のうちに行きましょう」

「え、ええ」


かすかな風が髪をなびかせ、粉塵の中から月の光がきらめく。


「さあ、この窓から行きましょう」

「ええ。って……え!?」


ゾンビたちが再び起き上がってくる。


「急いで! あの屋根伝いに行けば、公園まで下りられます!」


アタシは窓から顔を出し、左右上下を確認した。

下には、助からなかった人たち、ゾンビ、そして瓦礫が散乱している。


「で、でも……」

「ああ、もうっ!」


「あ、ああああ……」


ゾンビがこちらに手を伸ばしてきた。

アタシたちは反射的に左右に避け、ゾンビは窓の外へ落下した。


「今です! あの屋根に飛んでください!」

「え!? ちょ、ちょっと……!」


アタシは先に飛び移り、両腕を広げる。

そして、推しのマフラータオルを頭上に掲げて見せた。


「大丈夫です! 受け止めます!」


レナは一瞬だけ迷い、そしてこくりと頷いた。


「い、行くわよぉ……せ、せーのっ!」


――タン!


空中で時間が止まったような一瞬。

レナの身体を、マイがしっかりと受け止めた。

二人は屋上に転がり込み、息を整える。

レナの温もりが、レナの鼓動が伝わってくる。


「だ、大丈夫!?」

「は、はい……ありがとうございます」


こんな時に不謹慎かもしれない。

でも、アタシは今、色んな意味で幸せだ。


夜空に、静かに月が浮かんでいた。

いけない、急がなきゃ。


「行きましょう」

「ええ」


段々畑のように連なる屋根を伝って下り、公園が見えてくる。

そして――聞きなれたエンジン音。


ブオオォォォン ブオオォォォン!


「さっすが、ヒロシくん!」


アタシたちは、ヒロシくんが運転するアタシの愛車に拾われた。

アタシは助手席からヒロシ君の左手に、そっと手をそえた。


車窓の外には、月がこちらを照らしていた。

――まるで何もなかったように――この夜を照らしていた。

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