ラジオ局爆破計画
【とある製薬会社の研究所】
目障りなあの連中が、この計画を嗅ぎまわっているようだけど——
計画は順調よ。
場所は、とある製薬会社の研究室。
白衣を翻しながら、女性研究員が不敵に笑う。
「主任、例の者たちは間もなく消し飛びます。どうぞご安心を」
「……うむ。ただし言っておくけど、私は一切関与していないわよ。
ラジオ局に届いた荷物がドカーンと爆発ですって? 私はそんな話、聞いてないし、何も知らないからね」
「はい」
部下は嬉しそうに首を垂れた。
【ラジオ局・地下駐車場】
車から降りた配達員が、防災センターの受付へと向かう。
その手には、一つの郵便物の箱があった。
「お届け物です」
「はい、こちらでお預かりします」
「伝票にサインをお願いします」
「ありがとうございます」
「どうも」
受付にいた新人職員が、小首を傾げながら箱を覗き込む。
「先輩、これ……なんでしょう?」
「ん?」
——カチッ、カチッ、カチッ、カチッ……
箱の中から、秒針のような規則的な音が聞こえてきた。
「おい、これって……」
「ま、まさか……」
と、その時——
「……あ、あああああ!」
「す、すみません! 館内に行かれる方は、こちらで記入を……って、先輩っ!」
「今度はなんだ!? ……お、おい!110番だ!警察に通報しろ!」
「は、はいっ!」
歯をむき出しにし、血まみれの手を振り上げながら、そいつらは迫ってきていた。
ゾンビなんて、映画やハロウィンの仮装でしか見たことがなかった。
だが今、目の前にいるのは——本物だ!
防災センターのモニターに映る防犯カメラの映像。
1階のエントランスにも、無数のゾンビたちが押し寄せているのが確認できる。
直感的な恐怖に突き動かされ、2人の職員は警察に通報。
同時に、非常アナウンスを館内に流した。
「こ、こちらは防災センターです!
た、ただいま地下駐車場および1階エントランスにゾ……ゾンビが出現しております!
至急、安全な場所へ避難してください! 繰り返します。
こちらは防災センターです。館内にゾンビが出現しております。至急、安全な場所へ避難してください!」
防災センターの扉も、ラジオ局内の他の部屋と同じく、
スタッフの首から下げたセキュリティカードをカードリーダーにかざさなければ開かない。
つまり、ゾンビが中に入ることは不可能——のはずだった。
だがゾンビたちは、受付窓から腕や足をねじ込み、
無理やり中へと侵入しようとしていた。
「くそっ……来いよ。こいつでまとめて吹っ飛ばしてやる!」
「せ、先輩! それだけはやめてくださいってば!」
——吹き飛びたくはない。だが、吹き飛ばしてやる!
地下駐車場では、逃げようとする人々が次々とゾンビに襲われていた。
防犯カメラに映る1階エントランスは、完全なパニック状態。
逃げ遅れた女性スタッフがゾンビに襲われ、
首から提げていたカードキーの紐が引きちぎられ、床に転がったのが映った。
「あ、ああああああ……!」
ゾンビたちはついに、防災センターの受付窓から、
腕が、頭が。そして足までもが——ゆっくりと窓から這いずるように押し入ってきた。
部屋の奥。
郵便物の箱を抱え、防災センターに閉じ込められた2人。
「……いよいよだな」
「いやだ……死にたくない……」
その瞬間——
地下から、凄まじい爆発音とともに激しい振動が突き上げてきた。
【地下駐車場・ラジオ中継車内】
ラジオパーソナリティのレナを迎えに来た4人は、放送の準備を整えながら中継車に待機していた。
その矢先——ゾンビたちが地下に現れたのだ。
静かに身を潜めていた4人。
報道部のヤマザキ、ミキサーのエリカ、放送作家のルミ、そしてディレクターのノリ。
「もうこんなところまで……」
「やだぁもう、一体全体なんなんですかぁ」
「……しっ。静かに」
地下の防災センターから、凄まじい爆発音とともに激しい振動に揺さぶられた。
天井の瓦礫の下敷きになっているゾンビたち。
「仕方がない。今のうちだ!」
4人は、爆発で吹き飛ばされた防災センターの前を中継車で走り抜け、
バラバラに転がったゾンビたちを横目に、
煙立ちこめる地下駐車場を突っ切り、地上へ脱出した——。




