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12/19

ぬいぐるみを抱えたゾンビ

大きな通りの公園。

12月のテレビ塔。

ライトアップされた灯りが、星々のように夜の空気をやさしく照らしていた。


タクミとハナ。

ふたりの思い出の観覧車のかごから眺めた街には、

きらめくイルミネーションが瞬いていた。

冬の空気は冷たく、風が頬をなでる。


観覧車の中で、キミにプレゼントしたうさぎのぬいぐるみ。

「はい! プレゼント!」

「えー!? なんだろう!」

「わあ、かわいいうさぎさん! 欲しかったのこれ! うれしい!」


そのぬいぐるみを抱きしめるキミに、

ボクはぐるりとマフラーを巻いた。


手袋ごしに、つないだ手と手。


あの冬の日を、忘れられない──。


 


──そして今夜。真夏の深夜。

ゾンビ化テロが発生した。


テレビ塔の灯りは、消えている。


ボクは、奇妙なゾンビを見た。


うさぎのぬいぐるみを抱きかかえていたゾンビ。

あれは、自分のぬいぐるみなのだろうか。

子どもだと思っているのか。

あるいは、持ち主を探しているのか。……キミのだろうか。


そのゾンビを見かけたのは、ふたりの思い出の観覧車の前だった。

そしてそのゾンビは、ボクの目の前まで来ると、

腕の中のぬいぐるみを静かに落としていった。


だからこそ、強く印象に残っている。


あれは、去年の冬の日。

キミと歩いた、あの冬のこと。


手袋ごしに、つないだ手と手。

忘れられない。

あの冬の思い出が、交錯する。


ボクはしゃがみ込み、ぬいぐるみを拾い上げた。

その柔らかさに、キミのぬくもりがまだ残っている気がした。


涙が頬を伝う。

通り過ぎようとするそのゾンビに、

ボクは思わず駆け寄り、抱きしめた。


──この街を歩いている。

うさぎのぬいぐるみを抱いたキミが。

そして、キミを抱きしめたボクが。

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