ぬいぐるみを抱えたゾンビ
大きな通りの公園。
12月のテレビ塔。
ライトアップされた灯りが、星々のように夜の空気をやさしく照らしていた。
タクミとハナ。
ふたりの思い出の観覧車のかごから眺めた街には、
きらめくイルミネーションが瞬いていた。
冬の空気は冷たく、風が頬をなでる。
観覧車の中で、キミにプレゼントしたうさぎのぬいぐるみ。
「はい! プレゼント!」
「えー!? なんだろう!」
「わあ、かわいいうさぎさん! 欲しかったのこれ! うれしい!」
そのぬいぐるみを抱きしめるキミに、
ボクはぐるりとマフラーを巻いた。
手袋ごしに、つないだ手と手。
あの冬の日を、忘れられない──。
──そして今夜。真夏の深夜。
ゾンビ化テロが発生した。
テレビ塔の灯りは、消えている。
ボクは、奇妙なゾンビを見た。
うさぎのぬいぐるみを抱きかかえていたゾンビ。
あれは、自分のぬいぐるみなのだろうか。
子どもだと思っているのか。
あるいは、持ち主を探しているのか。……キミのだろうか。
そのゾンビを見かけたのは、ふたりの思い出の観覧車の前だった。
そしてそのゾンビは、ボクの目の前まで来ると、
腕の中のぬいぐるみを静かに落としていった。
だからこそ、強く印象に残っている。
あれは、去年の冬の日。
キミと歩いた、あの冬のこと。
手袋ごしに、つないだ手と手。
忘れられない。
あの冬の思い出が、交錯する。
ボクはしゃがみ込み、ぬいぐるみを拾い上げた。
その柔らかさに、キミのぬくもりがまだ残っている気がした。
涙が頬を伝う。
通り過ぎようとするそのゾンビに、
ボクは思わず駆け寄り、抱きしめた。
──この街を歩いている。
うさぎのぬいぐるみを抱いたキミが。
そして、キミを抱きしめたボクが。




