25時30分の声
ゾンビ発生の夜、深夜ラジオが“家族の声”をつなぐーー
短編連作。
第1話は、ラジオと家族、それぞれの夜から始まります。
真夏の深夜25時30分。ラジオからパーソナリティの軽快な声が流れる。
「ラジオネーム“お受験娘の父”さんから!」
部屋で勉強する少女は笑った。メールを送信して、階下の台所で母が作った夜食のおにぎりを頬ばり、再び机に向かったが、いつの間にか寝落ちしていた。
一方、高速を走るトラックの中。運転席の父も同じ番組を聴いていた。その時、番組に異変が起きた。
「番組の途中ですが臨時速報です。ゾンビが発生しました。リスナーのみなさん、落ち着いてください」
窓の外、遠くの空が不自然に赤い。少女は目を覚ました。
「臨時速報です。ゾンビが」ラジオは続ける。
「大丈夫。メッセージ届いてるよ」パーソナリティが読み上げた。
「“お受験娘”さんから。この前の喧嘩。もう怒ってないよ」
トラックの父が泣いた。
玄関のチャイム音で母が目を覚ました。
「お母さん!玄関開けないで!」
私は階下へ駆け下りながら叫んだ。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
深夜、ラジオから流れるメッセージ。
受験に追われる少女の心の声は、ゾンビ禍に揺れる家族の絆を繋ぐ。
恐怖とあたたかさが交差する短編連作。
不定期更新予定です。よろしければ次話もお付き合いください!