8.とても好きだったんだ
久々書いたけど。やばいほど記憶が…
ベルナールは父王たちの話し合い後、自室に戻ってきていた。
途中父王がつけた近衛騎士団第2隊長フェルマ・サージスがベルナールの自室がまだひどい状況のため別室を用意したことを伝えてきたが断った。
「さて、とりあえずこの部屋を元に戻そう」
ベルナールは事前にかけていた記憶保存魔法をもとに、部屋の状態を巻き戻した。
直後に部屋全体が濃密な気配に満たされた。
「相変わらず、魔法が上手だな」
闇の精霊がそこに立っていた。
ベルナールは特に驚いた様子を見せず、現れた闇の精霊を見つめた。
「あんたは、俺(前々世)の時も側にいたのか」
「そばにいた。だが守れなかった。災厄はもちろん、他の精霊達から妨害された。」
「なぜ?」
「私は、私たちは狂った精霊だった。一度狂ってしまえば精霊王より枝分かれした系統から追放される。仲間とはみなされない。そして今日の精霊王を見ても分かったと思うが精霊は感情で判断する。元狂った精霊が守ろうとした精霊花候補を”枯れ花”にしてしまうほどだ。」
「あんたの状況はなんとなくはわかった。だがそもそも精霊眼をあんたが隠さなければ少なくともこの王国の人から”枯れ花”なんて呼ばれなかったんじゃないか。災厄から隠すためといっても、もっと何かあったんじゃないか?」
ベルナールは少し眉間にしわを寄せ闇の精霊をみつめた。
「ない。災厄はすべてを見て、どこにでも現れる。当時、神から精霊眼を持つ精霊花を見つけたらその場で隠せとお達しが出ていた。本来なら神から精霊王へ、精霊王から人へ伝えるという手順を踏む。見つけたら、その逆の順に報告をあげていく。こうすることで世界の理が保たれている。」
「その手順を省略してまで切羽詰まっていたってことか?」
「そうだ。」
「もし、隠されていなければ?」
「災厄にのまれていた」
ベルナールははあ、と息を吐いた。
ベルナール(前々世)は世界を壊したかった。自身の短い人生をこの国の人のため、精霊花として、この世界の精霊と人のためにほとんどをささげてきた。
それを侮蔑と屈辱をあたえられ、危険人物とみなされた。
精霊にも国にも家族にもいらないといわれた。冤罪の証拠をかき集め、立証したにもかかわらず最後は処刑された。
もしこの体が自分の意志だけで動かせるなら、今すぐ父王含めて宰相、大臣、処刑場にいた国民すべて、そして精霊を消し炭にしていただろう。
それだけ、憎い。とても憎いんだ。いまだに荒れ狂う感情はとても制御ができるものではなかった。
その時、ベルナール(前々世)ではない意思が干渉してきた。
まあ、とりあえず今はまだやめとけよと。
「ところで、あんたは名前はないのか?」
「今はない」
闇の精霊はベルナールから少し視線をそらした。
「今は?前はあったのか?」
「説明するには私の成り立ちを説明する必要がある。だが今日はもうこれまでにしよう」
闇の精霊はゆっくりとベルナールに近づき、そのきれいな顔が至近距離に寄せられた。
さすがに予想外でベルナール(前世組)は動揺した。
「実感はないだろうがとても疲れてるはずだ。もう寝ろ」
闇の精霊が目にそっと手を添えると、ベルナールは意識がすっと消えていった。
力の抜けたベルナールを闇の精霊が抱え上げ、ベットに運ぶ。
幼さの残る寝顔をベルナールは満足げに見つめた。
「おやすみ」
いけたか?いけたことにしよう




