7.撤収!
ベルナールどこー
その後の後処理は父王が頑張った。
「皆の者、落ち着いてほしい」
低く落ち着いた声が神殿に響いた。
「神託は下った。我が国はこれより、闇の精霊王をいただき、次期王をベルナールとすることで精霊花継承の儀を終えることとする。本日は様々な出来事があった。落ち着く時間が必要だと思うがどうか賢明な判断をしてほしい。」
父王は貫録を見せつけてこの場を収めた。
その夜、父王はベルナールを呼んだ。
通された部屋は父王の私室でベルナールは初めて入る場所だった。その場には宰相とマリウスもいた。
「ベルナール、すまなかった」
父王はすっと頭を下げた。
「…顔をあげてください。今謝られても意味がありません」
「公式的な謝罪でしたら、後日もうけさせていただきます」
宰相が気まずそうに言った。
「いや、そういう意味ではなく。聞いてほしい本人が今はいないので」
「どういういみです?」
「私はベルナールではありません。正確に言うと魂は同じですが、人格が違うというか。あ、ちなみに私ともう一人別にいるんですが、そっちはあなたたちと話すことはないと言ってますね」
宰相はまさか多重人格とつぶやいて固まってしまった。
「うーん、ちょっと違いますね。前世と前々世の記憶と人格がベルナールの中に存在しているんです。そして、当の本人は一月前の継承権取り上げの話し合いから心の奥底に沈んでいます。ご丁寧に厳重な結界を張って。相当応えたみたいですね」
「次期国王、精霊花の継承権を取り上げたことがよほどショックだったと」
「いや、それもちょっと違いますね。次期国王とか継承権とかは一つの目安で考えてください。一番ショックだったのは陛下の信用と期待を失ったことですね。
というか大臣含め、男爵や子爵、商人と個人的な食事に付き合うのに、ベルナールとは一度も取ってないってひどいですね。仮にも次期国王候補だったのに。そんな風に接するから周りから軽視されるんです。
記憶を見ましたけど、ベルナールってそんなに頭悪くないし、コミュ力も高いですよ。どうしてベルナールの仕事が悪いと評価したのか評価方法含めてお聞きしたいですね」
軽く腕を組んで父王と宰相を見る。
二人の様子は酷くうろたえているようだった。
「ところで、マリウス君、君はどうしたいの?王様なりたい?」
マリウスは首を横に振った。
「僕は、兄さまが望んで継承権を破棄したいと説明されたので、精霊花の印を移そうとしました。兄さまがされたいことを支えるのが僕のしたいことです」
「どうして、ベルナールを支えたいの?」
「兄さまは、小さい頃に狂った精霊から僕を助けてくれました。その時、精霊が見える近衛騎士が近くにいましたが、腰を抜かして助けてくれませんでした。それと近衛騎士が話していた、精霊から避けられている理由は多分、兄さまが精霊の狂気に触れたせいだと思います。見える人ほど狂った精霊に近づきません。触れてしまえば精霊が離れていきますから」
よくできましたとマリウスをよしよしと褒める。
「とりあえず、ベルナール個人へのお話は本人が戻ってきてからお願いしますね。ほかに何か精霊花としての話や次期国王としての話があればいってください。もう一人がそこそこ詳しいので、問題なく対応できると思いますよ。それではおやすみなさい」
何気に前世君が一番腹黒




