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4.誰かにとっての人物像

商人さん、この作中の良心

謁見から3週間後、ベルナールのもとに商会を任せていた商人から連絡が入る。魔法便で届けられたものは花束とラッピングされたボックス、そして商会の報告書だった。ベルナール(現在)は反応しなかったが、前世組がベルナールの体を動かした。報告書で問題がないことを確認し、花束とボックスを開けた。中には練り香が入っており、爽やかで優しい香りのするものだった。

メッセージカードが同封されており、そこには「あなたに安らぎとささやかな幸福が届きますように」そして小さく、こう書かれていた。あなたのおかげで私は夢を掴めました。あなたがもし、困っているならどうか私の手をとってください。あなたを尊敬するものより。



一月がたち精霊花継承の儀を行う日となった。この日はさすがにベルナールは部屋に人を入れることになった。入ってきた従僕と近衛騎士は唖然とした。


一月世話係が入れていないため相応に荒れているとは思ったがシーツや着替えは受け渡していたため、せいぜい本やほこりがたまっている程度だと思っていた。しかしベルナールの部屋は物がひっくり返り、壁紙がえぐれ、まるで竜巻にあったのではないかと思われる状態だった。ベルナールは感情がそぎ落ちた顔で部屋にたたずんでいた。


さすがにこの部屋で支度をすることはできないと判断し、別室を用意し、支度を始めた。

以前よりずいぶん痩せており、本来なら人前に出れない状態だがベルナールの美貌に儚さが加わり、支度をしていた全員が息をのんだ。


精霊花継承の儀は水鏡の前で行われる。はじめに、現在の精霊花が水鏡の前で精霊花を返上することを宣言する。次に精霊王が精霊花の印を持つものを認め水鏡からこの世界の神へ報告し、神に承認され成り立つ。


この儀式は王宮内の神殿で行われる。巨大な円形の水盆が真ん中に設置され、聖水を常にたたえている。儀式のときこの水盆から神々がこちらを見ているのである。


国の内外から貴族王族が訪れ、他国の精霊花もこの儀式には参加している。全ての来賓が神殿に入ったのち、最後に精霊花継承の王族が入場する。


入場待機場所にはすでに父王とマリウス、そして精霊王がいた。

父王とマリウス達の上着は白地に金糸で紫苑の花をモチーフにした刺繍が施され、腕の精霊花が見えるように作られていた。二人とも金髪に緑の瞳をしており、非常に似合っていた。

精霊王は銀髪に薄い紫の瞳をしていた。真っ白な衣に緑のツタがふわふわと巻き付いている。

マリウスはちらりと精霊王を見上げた。精霊花を移す際に精霊王にあっているが、何度見てもなれないと感じる。その視線に気づいたのか精霊王がマリウスを見た。

そしてすぐ、戸惑った顔になる。どうしたのかと思いマリウスが聞こうとしたとき、足音が近づいてくる。

表情のないベルナールだった。黒髪は緩くみつあみにされ、着ている黒の服は銀色の刺繡をささやかに入れられている。月下の美人という表現が当てはまる姿だった。


父王はベルナールに声をかけようとしたが入場の合図が入った。


「精霊花継承王家入場!」


ゆっくりと扉が開き、神殿の中へと入っていくほとんどの人はベルナールが後継と聞いていたため、マリウス、ベルナールの姿を見て驚いた。


宰相が事態の説明を始める。


「この度、精霊花を継承するのはマリウス殿下です。そのため今後は我が国の王継承第一位としてマリウス殿下となります。」


貴族、王族は情報戦を常に行っている。マリウスの会議出席と、ベルナールの近況を知るものはこの状況を反対することはなかった。おそらく、上位貴族をはじめ、ほとんどの者がマリウスを支持している。それどころかひそひそとベルナールをけなし始めていた。その中には婚約者の家もある。上位貴族の婚約者は3年ほど前から連絡が途切れがちになっていたが、ベルナールが王と謁見して1週間後に婚約解消となっていた。


ベルナールはこの間も無表情だった。

部屋の荒れた状況を見て、サージス隊長は念のため近衛騎士を待機させていた。近衛騎士をはじめベルナールと関わったものなら、ベルナールはこんな場所でも自分の方が精霊花にふさわしいと叫ぶだろうと予想する。しかし、本当に不気味なほど、何もない。


このまま儀式は進められていく。


儀式は続くよ~

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