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2.そわそわ待つ

あげて落とす

1か月後かとベルナール(現在)は肩を落とした。前世組はそれをなだめつつ、1か月の有効活用の計画を立てた。


まず、ベルナールは魔法の素養が非常に高い。現在でもほぼすべての中級の魔術が自在に扱える。しかし、上級魔術は精霊の助言が必要となるため、ベルナールは上級魔法が一つも使えなかった。ここで、前世組の知識チートの出番である。前々世のベルナールは上級魔法を禁忌の書から学び会得した。その知識と前世のラノベ知識から安全な上級魔法の会得が可能となった。


上級魔法を操るベルナールは心底楽しそうに、魔法を扱っている。魔法練習用の棟へ朝早くから行き、夜遅くに部屋に戻っている。


ほかにも、ベルナールの名前を伏せ、投資や商会の設立を行っている。商会については、上級魔法で一番早くに会得した、鑑定魔法で信用できる商人を見つけ今後売れる商品を販売させ、特許を取得させた。


3週間でここまで変化したことにベルナール(現在)はとても驚いた。精霊が見えないことで、次期精霊花の役割を満足に行えず、さげすみや嫌味を言われ荒れていた。精霊花の印だけがベルナールの支えだった。その精霊花も前世の記憶を思い出すまでは徐々に薄くなっており、毎日それを見るのが苦痛だった。

しかし、今では自分の決定で人を動かし、魔術を操ることができるようになった。他人から渡されたものではなく、自身で得た支えを持つことができている。ベルナール(現在)は初めて自分を肯定できた。


父王への謁見まで残り1週間となったころ、その日は商人との打ち合わせのため魔法練習を早めに切り上げ、自身の住まいまで戻ろうと王宮の前を通った時だった。


会議室から上級貴族がぞろぞろと帰っているところに出くわした。ベルナールをみた上級貴族は一礼して去っていく者、ひそひそと噂するもの、そして、あいさつしつつ遠回しに馬鹿にしてくるものがいる。その中に弟のマリウスがいるのが見えた。マリウスの周りには書類を抱えた秘書が付き、しきりに書類の確認をとっていた。その後ろには幾人かの貴族がその確認が終わるのを待っている様子である。


今日の会議は下半期の国政の決定を論ずる場でその会議にベルナールは呼ばれていない。去年までは父王に頼み参加していた。


ベルナールは足早にその場を離れる。自身の部屋にもどると、いつの間にか止めていた呼吸を勢いよく吐き出した。心臓をきつく握られたように、胸の奥がひどく痛んだ。きつく歯を食いしばり、体の痛みにをやり過ごそうとするが徐々に耳鳴りがしてくる。


パンッと手のひらを叩くような音がした気がした。


前世組が緩く語りかけてくる。落ち着け、ゆーくり、足の先から少しづつ、少しづつ手放していく感覚で力を抜くんだ。誰もお前からそれを奪わない、大丈夫だ、ゆーくり、ゆーくりな。

そういえば商人が来ているだろう。お前が商売してるのを伏せて、単純に買い物してる風で。本当に何か買ったらどうだ。香りとか、風呂に入れるものがいい。今は休息が大事なんだ。力を入れすぎないようにな。


あー、落とすなよ

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