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1.夢を見る

見切り発車でいってみよう!

「俺はあんたを選ばない」


紫苑の瞳がその場にいる者たちを射すくめる。


そして、正面から否定された者も。


「どうして、受け入れられると思うんだ。拒否されないと、憎まれていないと。あんた達にそれだけの価値があるとでも?」






カーテンの隙間から朝日が燦燦と降りそそいでいる部屋は、品のいいインテリアで飾られている。

その部屋の主は広々としたベットでいまだ眠っている。光を反射してキラキラと輝く黒髪と真っ白な肌、しっとりとももいろの唇、まるで精密な美しい人形のようである。


コンコンと従僕が部屋へと訪れ部屋の主に声をかけた。


「ベルナール様、おはようございます。」


物音がしないのを確認し、従僕は部屋へと入る。


「ベルナール様、」


ベルナールはまつ毛を震わせて眼を開けた。


「ベルナール様、おはようございます。朝のお仕度をいたします。」


ベルナールは従僕をちらりと見ると手で追い払う仕草をした。


「朝の支度は自分でする。今後もお前は支度をしなくていい。朝食については扉の前に置け。ノックで朝食を置いたことを知らせろ。」


従僕は少し驚いたように瞬きをすると、一礼して部屋を出ていった。


ベルナールは従僕が去ったあと、一人頭を抱えていた。



「ベルナール・シュランディか。さっき夢の中で説明されたけど本当に転生してるな」


夢の中でベルナールは2人分の人生を体験した。

前世はラノベあふれる世界。戦争とかあったけど階級制度はほとんどなく、平民と呼ばれる人が世界規模の会社をやっていたり、大臣になっていたり、割と自由な人生だった。

前々世はベルナール・シュランディの人生を生きた。つまり異世界転生と人生回帰を経験している。


ベルナールは記憶が鮮明なうちにと、記憶転写魔法で水晶に自身の記憶を転写した。そして登録した本人のみ開けられるボックスにしまった。


その後、人生2人分+現在の記憶のすり合わせと整理のためにメモ用紙に書き出していく。

現在ベルナールがいる世界は、神様と精霊が現実に存在する。


神は世界の環境を支えるための管理者のようなもので、よほどのことがない限りこの世界の者に干渉しない。


生き物の意思に干渉するのは精霊である。精霊は4人の精霊王を筆頭に上位精霊、中位精霊、下位精霊と続く。


精霊王にはそれぞれ一人づつ精霊花と呼ばれる人間のパートナーが選ばれる。


この世界の大国は4つあり、代々その王となるものに精霊花の印は現れる。


ベルナールは王族で精霊花の所持者。しかし枯れ花、出来損ないと言われている


ここまでが現在のベルナールの知識で、この後は前世と前々世の知識になる。


ベルナールは前世の小説の悪役だった。精霊花の印を持つベルナールは精霊の姿が見えなかった。そのため、枯れ花、出来損ないと様々言われ、徐々に性格と素行が悪くなっていく。最後に父王から「ベルナールを次期王候補から外し、次男のマリウス(小説主人公)とする」と言われ闇落ちする。その後、マリウスの妨害や殺害未遂をおこない、処刑される。


処刑ね。この世界で生きていきたいとも思ってないからそうそうに死んでもいいけどさ。

一度の目の人生ではこんな世界壊してやるとか思ったしな。

でも、今の俺は、この体はきっと生きていたいんだろうな。だって、こんなに人に認めれたい、精霊と話をしてみたい、父親に愛されたいって望んでる。

一人の中に3つの人格があるような感覚で現在のベルナールが主、その他おまけといった感じだ。

まあ、あきるまで生きているのもいいか。


さて、とりあえずのすり合わせは終わった。続いて現状の確認、今はまだ次期王候補で、精霊花は若葉のうっすい痣みたいな感じのはず。そして、現在のベルナールには残念なことにすでに弟のマリウスの肩にはつぼみの精霊花の印ができている。精霊花もしくは精霊王の承認によって精霊花の印は移すことができる。


確認のために肩をむき出しにする。そこには濃い大輪の紫苑の花が鈴なりに咲いていた。


前世組は「うわー、今更感。いらねー」しかし、現在のベルナールは「これで父上に認められるかも。精霊とも、もしかして話ができる!?」と嬉しそうだった。


精霊の視認は確認したができなかった。もちろん話もできていない。おそらく人生2回の記憶を思い出したことと関係があるのだろうが、なぜこんなことになったのか理由までは分からなかった。


現状確認を行っていると、部屋の扉をコンコンと叩く音がした。


「ベルナール様、朝食をお持ちしました。」


「廊下に置いておけ、お前は下がっていい。あと陛下にお話ができないかご予定をきいてこい」


台車にのった朝食を部屋に入れる。いつもは王家の食堂で朝食をとっているが、今回は頭の整理が先のためここで朝食をとる。


ベルナール(現在)は父王に精霊花のことを伝えたくてうずうずしている。前世組は父王と話ができるのは当分先だろうなと予想した。


朝食を食べている最中に従僕は返事をとってきた。


「ベルナール様、一月ヵ後に場を設けるとのことです。」


「承知したとお伝えしろ」




爽やかなグリーンの執務室で金髪の男性が書類をさばいていた。


「陛下、失礼いたします。」


「ベルナールは何と」


「はい、承知いたしましたとのことです」


「珍しいな、いつもならもっと早くできないかと捲し立てるだろう」


「恐れながら、本日のご朝食はお部屋で召し上がっておられます。いつもなら王家の食堂でお取りになるので、それと身支度に関してもご自身でされると」


「…精霊花の印が完全に消えたかもしれんな。精霊の見える近衛騎士をマリウスとベルナールそれぞれ2名づつ増やす。マリウスは護衛を強化、ベルナールのもとには監視として配置する」


いけるはず

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